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12話 いつか君へ

 ――また、ここか……。

 彼女をまた、死なせてしまった。今、目の前に映っているのはあの時の分かれ道。

 彼女が何か声をかけてきてはいるが、耳に入って来ない。

 それよりも頭の中に浮かんでくるものは、目の前で噛みちぎられてしまう瞬間の彼女のことだ。戻って来たと言うことはその後俺も死んだのだろう。

 すると、額に冷たい何かが触る。


「熱はなさそうだね。でも、顔色も悪いし送ってこうか?」


 返答がない俺を心配して、彼女が額に手を置き、声をかける。


「お、俺は大丈夫……いや、大丈夫じゃないな」


 痩せ我慢で乗り切ろうとするも、本音が溢れてしまう。

 

「本当にどうしちゃったの?……もしかして、このネックレス買ったの後悔してる?お金払おうか?」

「バカ!そんなんじゃねぇよ」


 これからのことを話そうとするも言葉が見つからない。

 ――そもそも時間に余裕はあったはずだ。なんでもうあそこにあの化け物どもがいるんだよ。どうすればいい、何をするのが正解なんだ……。


「カイちゃん……」


 突然、春乃が俺を抱きしめる。


「――え、は、春乃?」

「大丈夫だよ、カイちゃん。私はいつもカイちゃんの味方だから、何でも言って?それとも私には話せない?」


 彼女のためを思って黙っているとはいえ、ズキッと心が痛む。

 

「違う、話せないんじゃないんだ。ただ……どうすればいいかわかんなくて……」


 ――そう、わからないんだ。春乃の安全を第一に考えたいが、またそれが間違っていたら……。

 

「一緒にゆっくり考えようよ。2人ならなんかいい考えが思い浮かぶかもよ?」

「駄目だ、それじゃあ駄目なんだよ。すぐに行動しなきゃまたお前が――」


 そこまで声に出し、今彼女にこのことを教えても心配させるだけだ、と考えた俺は咄嗟に出かかった言葉を飲み込む。


「私が、なに?」

「いや、何でもない……忘れてくれ……」

「…………、カイちゃん……」


 これ以上聞いても何も教えてくれないと感じた彼女は黙り込んでしまう。しかし、その沈黙は長くなく、程なくして声を発する。


「カイちゃん、これだけは信じて。私は何が起きてもずーーっと、カイちゃんの側にいるから」


 そう言うと彼女は俺の頭をゆっくりと撫で始める。

 急なことで戸惑ってしまったが、先程まで不安で不安で仕方がなかった感情が徐々に和らいでいく。

 この安心感が心に染み渡る。ただいつまでもこうしていたいとさえ感じる。


 

 ――そうか、俺は春乃のことが好きなんだ。普段はバカで、天然で、でも俺のことをよく考えてくれている。そんな彼女を死なせたくない、生きていて欲しいと思うから俺も必死になってるんだ。

 ならば、取るべき行動は1つ。


「ありがとう、春乃。もう大丈夫だよ」


 そう言って彼女を離す。

 ――そうだ、不安になってる暇なんてない。何回でもやり直せるのなら、たとえどんなに苦しくても、絶対に彼女が無事に生きていけるような道を作らなきゃいけないんだ。


「ホントに?本当に大丈夫?……もしかして優しい私に惚れちゃった?」


 ニヤリ、と彼女が問いかける。


「あぁ、そう見たいだな」


 思わぬ返答が返って来たからか、彼女は口を開けたままフリーズしてしまう。


「え、えぇぇぇぇええ!」


 飛び上がり、絶叫する。

 まさか俺からそんな言葉が返ってくるとは思わなかったのかもしれない。

 

「冗談だよ」


 カイちゃんのバカー!っと叫びながら拳が飛んでくる。

 ――平和な日が戻って来たら、その時こそ、彼女に想いを伝えよう。

 俺は頬に残っている痛みを感じながらそう決心した。


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