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11話 半身

「細石?」


 辺りを見渡してみたが細石の姿は見えない。後ろは木で覆われているせいで少し先ですら視認することは不可能だ。

 ――さてはあいつ、俺が顔を上げていなかったから隠れて脅かそうとしてんだな。

 そう考えていると足音が聞こえた。


「細石、お前あれだけ俺のこと笑っておいて追い討ちのイタズラとかやめろよ」

「へ?一緒にいるんじゃないの?」


 振り返った先にいたのは細いではなく春乃だった。


「細石のやつ、俺を驚かそうとして隠れちまったんだ」

「えぇ〜、でもそろそろ移動した方がいいよね?」

「そうなんだよ。おい、細石!もう十分休めたから行くぞ!」


 そう声をかけるも返答はない。

 すると後ろの木の上の方から、ガサガサと音が聞こえた。なぜそんなところに登ったのか理解することはできなかったが、彼の服が葉の隙間から覗いていたので降りてくるよう声をかける。


「お前なんでそんなとこに登ってんだよ。ほら、さっさと降りてこい。そろそろ出発するぞ」

「細石く〜ん、早く降りて来ないと残りのジュース飲んじゃうよ〜」


 蓋が空いたペットボトルをユラユラゆすると、残ったジュースがちゃぷちゃぷと軽い音をたたせる。

 ――お前じゃないんだからそれが理由で降りて来ないだろ……。

 子供に来させる時の決まり文句のようなことを言う彼女に、俺は呆れる。しかし、俺は彼女の持っているペットボトルを見て違和感に気づく。


「――お前、キャップはどうした?」

「……?知らないよ、最初から開いてたもん。でもなんで蓋してないんだろね。横になっちゃってたから中身がベンチにかかっちゃってるよ……」


 細石の姿を探した時には気が付かなかった。普通その場を離れるなら蓋を閉めてから離れるだろう。まして中身が半分ほど残っているならそれをほっぽり投げるわけがない。

 その疑問に答えを添えるかの如く、ガサッと音を立てて彼が落ちて来た。


「きゃぁぁぁぁぁぁあ!!」


 しかし、落ちて来た彼の下半身はなく、光の失った目でこちらを見ていた。


「なになになに、何が起こってるの!?」

「春乃、走れ!ここから離れるぞ!」


 ――もう軍事施設まで半分もないってのに、クソッ……!

 すぐにここを離れなければいけない、と判断した俺は、彼女の腕を掴み走り始める。

 背後から何かが落ちて来た音がしたが振り返る余裕はない。

 公園から出ようとした瞬間、その角から道を塞ぐように出て来たのは、あの夜、学校を襲った化け物だった。

 咄嗟に公園の中に戻ろうとすると、目の前に映ったのは違う化け物に食べられる瞬間の彼女だった。

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