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10話 暗闇

 時刻は午後9時を回った。

 ところどころにある街灯が道を照らしてはいるが、あたりはもう真っ暗だ。

 俺と春乃は8時を回る頃には、かなりペースが遅くなっていた。細石は俺たちのペースに合わせてくれている。

 ただでさえ体力がない俺たちが、学校付近から休みなしで2時間以上走り続けているのだからしょうがない、そう自分に言い聞かせる。

 このまま行けば後1時間半ほどで目的地には着くはずだ。  

 学校にあの化け物が来た時間を考えると大分余裕はある。


「なぁ、ちょうどそこに公園があるから少し休まないか?」


 俺と春乃の疲労を考えてか、細石は一度休憩しようと提案する。


「……時間的には余裕はある。でも、できる限り早めに避難しておきたい」

「なんの時間に対して余裕があるんだ?まさか、また化け物が出るとか言わないよな」


 化け物の話を信じてもらえていない。たしかに、自分がもし逆の立場だったらおちょくっていたと思う。

 なんて返事をしたらいいのかわからず、沈黙が続く。

 さっきまで近くにいた春乃は一度側を離れていた。戻って来た彼女の両手には飲み物が3本ある。


「2人とも疲れたでしょ、これ飲んで一回休もうよ」


 よく考えればフリマによる前に飲んだっきりだ。そんな中走り続けたのだから喉も渇いている。俺は早く避難したい気持ちを抱えつつ、少しだけここで休むことに決めた。

 もらった飲み物を一気に飲み干し、横にあったゴミ箱に捨てる。


「……フゥ、生き返るわ〜」


 細石も喉が渇いていたのか、半分ほど一気に飲んでいる。

 

「なんだ、お前も疲れてたんじゃねぇかよ」

「いつも手を抜いてるお前と違って、俺はサッカー部でも走ってるんだからな。1人だったらあのまま走って行ってたよ」

「…………」


 周りにバレないよう手を抜いていたつもりが、バレていた。もしかするとほとんどの人が気づいていたのかもしれない。


「お前、まさか自分が手を抜いてるの、バレてないと思ってたのか?」

「…………」


 図星だったことの恥ずかしさと気まずさから黙っていると、細石はゲラゲラと笑い始める。


「あははははは!お前手を抜くの下手すぎるだろ。……クックック……先生にはバレてなかったけど、みんな気づいてたぞ……駄目だ耐えられない……あっはっはっはっ!」


 ――みんな気づいてたのかよ。カッコつけてると思われてたら最悪だ!

 恥ずかしさで顔を手で覆う。静かな暗闇が、ゲラゲラと笑う細石の声で染まっていく。

 そんな時間がしばらく続き、春乃はお手洗いに行ってくる、と公衆トイレの方へ行ってしまった。まだ細石は笑っている。

 細石はごめんごめん、と謝りはしているがその謝罪も笑いを堪えているからか声色がおかしい。

 ――いっそのこと殺してくれ……恥ずかしさで耳まで熱くなって来やがった。

 顔が真っ赤になっているのを見られないために体を屈め、組んだ腕の中に顔を突っこむ。笑い声が頭に響くためついでに両耳も塞ぐ。

 しばらくして耳を塞いでいた腕を退けると、笑いが止んだのか、あたりが静かになっており、自分の顔の熱も冷めて来たので顔を上げた。




 ……そこにはさっきまで隣にいた細石の姿はなかった。

 

 

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