表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

6/20

第6話 義妹にコスプレを頼まれたので、仕方なく付き合ってあげた①

 家に帰ると、莉乃が居間でスマホをいじっていた。


「お帰り、お兄。どうだった?」


「どうって……まあ、普通に話しただけだよ」


「いやいや芸能人のカノジョが出来たんだから、もっと調子乗っていいんだよ?」


「いや付き合うって決まったわけじゃないから。全然、遥香のこと知らないし」


「うわぁ、お兄ってそういうとこあるよね。さっさと付き合っちゃえばいいのに」


 莉乃の表情が微妙に曇ったような気がしたが、すぐにいつもの笑顔に戻る。


「遥香ちゃん、すごく積極的だったでしょ?」


「まあ、そうだな」


「わかってると思うけど、本気だよアレ。揶揄われているわけじゃないから、ちゃんと向き合ってあげないとダメだよ」


「お、おお……」


「ま、お兄が気が引ける気持ちもわかるけどね。遥香ちゃんに釣り合う男になるまで、私がちゃんとプロデュースしてあげる」


 そう言って、莉乃は立ち上がる。


「じゃ、スキンケアしよっか」


「スキンケア?」


「うん。肌が綺麗だと印象全然違うからね。ちょっとこっちきて」


 莉乃が俺を洗面所に引っ張っていく。

 鏡の前に立たせられた。


「はい、これ使って」


「……洗顔フォーム?」


「そう。それと化粧水と乳液。あと、眉毛もまだ完璧じゃないから少し整えるね」


「お、おう」


「まず洗顔から。泡立てて、優しく洗うの」


「優しくって、こうか……?」


「全然違うよ! ほら、こうやって泡を立てて」


 莉乃が手際よく洗顔フォームを泡立てる。その泡を俺の顔に載せ、指でくるくると回すように洗っていく。


「自分でやれるって……」


「だめ。力加減が大事なの」


 莉乃の手が俺の頬を優しく撫でる。なんだかくすぐったくて、少し心拍が上がっているのがわかる。


「はい、洗い流してー」


 顔を洗い流すと、確かにいつもより肌がすべすべした感じがする。


「次は化粧水ね」


 莉乃が化粧水を手に取り、俺の顔に軽くパッティングしていく。


「なんか恥ずかしいな……」


「恥ずかしくないよ。男もちゃんと肌を気にする時代なんだから」


「さいですか」


「さいです」


 最後に乳液を塗ってもらい、眉毛も少し整えてもらう。


「はい、完成! 鏡見て」


 鏡を覗くと、確かに肌にツヤが出て、眉毛もより形が整っている。


「結構違うもんだな」


「でしょ? これを毎日続ければ、もっと肌が綺麗になるよ」


 莉乃が満足そうに頷く。


「ね、ねえお兄?」


 莉乃がもじもじし始めた。


「ん?」


「綺麗になったところで一つ、お願いがあるんだけど……」


「お願い?」


「お兄に……コスプレ、手伝ってもらいたいんだっ」


「はあ?」


 俺は間の抜けた声を出した。


「兄妹キャラのコスプレがしたくてさ。でも一人じゃできないから……」


「そんなの他のコスプレ仲間とかに頼めよ」


「無理無理! 私が連絡取れる子、そんな多くないし。男の人脈はからっきしなんだから」


「いや、でも俺がコスプレって……」


「お願い! 一回だけでいいから!」


 莉乃が両手を合わせて拝むように頼んでくる。


「一応聞くけど、どんなキャラ?」


「これ! 『魔法学園アストレア』って作品なんだけど、その主人公と妹! お兄の雰囲気にぴったりだと思うの!」


 莉乃がスマホを取り出して、キャラクターの画像を見せてくる。


「似てるか? そもそもアニメキャラに似てるも何もないだろ」


「んー、じゃこっちのがわかりやすいかな」


 次に見せてきたのはこのキャラにコスプレした男の写真。

 確かに、若干、俺と似ているような気もする。


「でも、コスプレなんてしたことないし……」


「大丈夫! 私が全部準備するから!」


「てか、莉乃はいつも一人で写真取ってネットにあげてるだろ。なんで急に」


「だって……」


 莉乃が少し恥ずかしそうに視線を逸らす。


「お兄と一緒にコスプレするの、ちょっと憧れてたから」


 その言葉を聞いて、俺の心が少し揺れた。


「……今回だけだからな」


「本当!? やった!」


 莉乃が嬉しそうに跳び上がった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ