表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/10

5.修羅場…ではなくなった



「つむぎ、ちゃん…、?」


「かおるさん、お仕事だったんじゃ?」

 


 まさか



 初めて陥るこの状況に、少しの焦りを覚えた。



 なんでこんなとこに来てるんだ?


 

 まさか、純粋なフリして本当は結構な遊び人だったりするのか?



「あー、…思ったより早く片付いてさ」


「あー?何言ってたんだ、薫。お前は、ニートクズイケメンだろうが」



 ハハってカウンターから笑いながら出てきて言う、バーの店員の1人である友人に、殺意を覚えた。



 目かっぴらいてそいつの方、…律の方を向いたら、やっと察したらしい。

 血の気が引いてた。



「あー、…ごめん、つむぎちゃん、ちょっと待っててね」



 まだ混乱中であろうつむぎちゃんを置いて、俺は律の方にズカズカと歩みを進めた。



「ッお前…何してくれてんだよ…。まだあの子は俺のこと何も知らねぇよ馬鹿か本当にお前」



 結構ガチで焦ってるんだよこっちは



「ちょっ、ごめんて。僕も知らなかったんだよ。にしても、つむぎちゃんかあ。可愛い名前だね。顔も、めっちゃ美人じゃない?声かけてもいい?」



 ほらっ



 ほらなっ?



 舐められるんだよ



 俺たちみたいな男にさあ



 なんで今まで獣みたいなやつらから生還出来てんだよ…



「まだダメに決まってんだろうが」


()()、ね。でも薫、バレちゃったじゃん」


「それはお前のせいだろうが」


「まあまあ、落ち着いてよ、薫。まだ疑問符浮かんでるからセーフじゃない?見てみてよ」



 目を合わせないようにつむぎちゃんの方を振り向いたら、確かにまだ頭の上にハテナ浮かんでそうな感じはした。



 いやでもこの状況じゃどんでん返しも何もないだろ

 結局無理じゃねぇか



 いや…もういいか



 顔可愛いし料理も上手いしで、しばらく居座ろうと思ってたけど、如何せん俺は顔がいいもんで



 ここに少しいれば、声をかけてくる女はいくらでもいる。



 1週間しか持たなかったけど、まあいいか



 カウンターの裏から出て、つむぎちゃんと向かい合った。



「あーっ…と。さて、何から話してほしい?」


「えっ?」


「俺が無職なこと?ヒモなこと?パチンコすること?競馬すること?なんなら、賭け事全般大好きなこと?ヤニカスなこと?浮気すること?家がないこと?」



 ……あっ、全部言ったわ

 


 さて、怒り狂った目の前の女から何発か殴られる準備でもしとくか



 …って、思ってたんだけど、それなんの表情だ?



 なんか肩震わせてね?



 あっ、泣いた…?




「っふふ、っあはは!」


「っ!?!?」




 えっ、ん?あっ……えっ………?




 いやいや、何?この子



 普通泣くか怒るかじゃないの?

 笑うの?



 なんかツボに入ったらしく、しばらくお腹押さえて顔下に向けて笑ってた。



 ひとしきり笑い終えたら、俺の目を真っ直ぐ見てきた。



 なんで俺の目見れんだよ



 前と変わらずに、その眩しい目で…



 女が俺を嫌いになりそうなこと全部言ったつもりなんだけど…?



「そんなことで、私が好きじゃなくなると思ってたんですか?」



 いや、そんなことじゃなくね…?



 今まで会ってきた女に、何回か俺がどんな人間か話したけど、どんなやつでも最後に1発ビンタお見舞いされてきたくらいには酷い人間だと思うけど?



「私、あの日元彼から助けてもらった日から、ずっと好きなんです。一目惚れです」



 えーっ…


 こんなに真っ直ぐな告白、今までにあったか?

 全部を知ったうえで?



 ていうかダメだろ…



 こんなやつに執着したら



 なんだよ、こいつ…



 いや、どうせこいつも、心が満たされてねぇんだ

 満たされてないから、俺みたいなやつを求める



「…いいですよ」



 はっ?


「はっ?」



 あっ、リアルに出た…



「仕事もしなくて構いません、私がお金をあげます。家も、空き部屋があるので使ってください。浮気も、私を気にせずしてください。賭け事も、お金は支給するので大丈夫です」



 そうやって言ってつむぎちゃんは、なんでもないことみたいに笑った。



 なんだよ…それ



 …………最高か????



「本当に良いのか?先に言っとくけど、俺はお前が思ってるみたいな人間じゃねーぞ」



 まあ、分かってるとは思うけど



 先めっちゃ俺が普段してること言ったし



「いいえ、あなたは私のヒーローです!」



 なんで?めっちゃ変なところで意地張るじゃん



「はぁ、分かったよ。その()()って感情がいつまで持つか、見ものだよ」


「えへへ、望むところですよ!」

 


 好きな人の浮気現場見て、ヘラヘラ笑って生きてる奴の()()が、長く続くわけないのにな



 何ちょっと様子見ようとしてんだろ、俺



 今から最低なこと色々してやるつもりでいるのに

 ていうかもう既にしてるのに

 金に目が眩んだ…



 んで、つむぎはまた太陽みたいな笑顔で笑うんだ



 なんでもないことみたいに




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ