3.にちじょう
まあとにかく、会話が弾む頃には、すっかりカレーは平らげてた。
…普通に美味かった……
「薫さん!もしよかったら、好きな食べ物教えてください!次は薫さんの好きな食べ物作りたいです!」
「えっ、俺の?いいよいいよ。つむぎちゃんの好きな食べ物でいいんだよ」
「私はいつでも私の好きな料理を作ることが出来ますけど、薫さんの好きな料理は、薫さんが家に来た時しか出来ないので…ダメ、ですか…?」
…何?その考え方。
俺知らないんだけど
「…ううん、そんなことないよ。そうやって言ってくれて嬉しいな。うーん、じゃあ、つむぎちゃんの作ったオムライス、食べたいな」
「…っ!!!分かりました!」
「ありがと、嬉しいよ」
なんで、作る側のつむぎちゃんがそんなに満面の笑みなんだよ。
そうやって笑顔浮かべられたら、笑って誤魔化すしかなくなる。
直視出来ないこと。
早く話題逸らすか
「ねぇ、つむぎちゃん。連絡先、交換しようよ。オムライス、作ってくれる約束だからね」
「はい!」
そうやって、連絡先交換して、「帰るね」って言ったら、「送ります」って言ってくれたんだけど
それすんの逆じゃねっ?って
漢らしいよつむぎちゃん…
うーん、まあ、いっか
でも俺、家ないけどね
適当にこの子の最寄り辺りでバイバイしとけば
「つむぎちゃん、ここまででいいよ。送ってくれてありがと」
「はい!また一緒にご飯食べましょうね!」
1回つむぎちゃんは手を振って家に戻る仕草をする。
けど後ろ振り返って、もう1回手振ってきた。
確かに、先生向いて無さそうかも
危ないよ、そんなに誰にでも心開くのは
「あぁー!かおるさーん!」
ある程度離れたところで、つむぎちゃん、もう一回こっち振り向いたんだよね
何回振り向くんだよって思った。
でもそしたら、また満面の笑みで
「私も、薫さんのこと、好きですー!」だってさ。
ほら、やっぱり
ちょろいんだって
多分そう言うとこだよ、教師に向いてないって言われるのはさ…
◇
うーん、あれから、もう1週間かー
……めっちゃ…
めっちゃ、尽くしてくれるんだよな…
今1番高い頻度で会ってるのつむぎちゃんかも
いやまあ、ご飯美味しいし可愛いから
「ねっ、薫。早くシよ…?」
「ん、待て出来ないのは悪い子だね。そんな雅には、おしおきしないとな」
「っ!__〜〜〜ッ」
女の喜ぶことを知り尽くしてる俺はもちろん、童貞なわけがない。
身体も、心も、全部使って、女を虜にするから。
童貞がどうのこうのなんて、言ってられないわけよ
一仕事終えると、雅は感嘆のため息を漏らした。
「はぁ〜。どうして薫ってそんなに上手なの?」
「内緒だよ」
口に人差し指を当ててニヤって笑うと、雅が頬を赤らめることは、もう知ってる。
俺みたいな人間は、少しの仕草や言葉から、相手の求めてることを探らないとやっていけないからな
「ね、薫。この後どこか行こうよ。私が全部払うからさ」
「ん?いいけど。どこ行くの?」
「ん〜、薫となら正直どこでもいいんだけど、久しぶりにご飯食べに行きたいかな」
ああ、このタイミングでか
「いいよ。俺も、久しぶりに雅の美味しそうに食べる姿見れるから、楽しみだな」
あ〜あ
今日つむぎちゃんの家でご飯ご馳走になる予定だったのに
まあ、いっか
ご飯代出してくれるって言ってたし
…あぁ、もう。…誘惑しようと抱きついてくんの、やめてくんねぇかな……
人に接触されるの好きじゃないんだけど、でもじゃあ何でこんなことしてんのってなるわな
まあ、けど、まともな生き方したことない俺に、まともに生きろってのは無理がある。
雅は俺の顔の良さとテクニックを求めてる。それ以外に何もいらないことは把握済み
全部全部、生きるため