18.異変
…誰だ…あれ…
別の、男?
は?
つむぎが?
つむぎは相手の男にもたれかかってる様子だ。
そういえば、俺には最近あまり触れなくなった…。というか、抱きしめられる回数が減った。
1ヶ月前までは確かに1日1回以上はハグをしていたのに、今では3日に1回か、1週間に1回の時さえあった。
少し物足りなさを感じたりしたこともあったけど、それでもつむぎの負担になりたくなくて言わなかった……。
今まで散々迷惑をかけてきたから…。けど…
…なんだこれ…。俺だけこんなことして、バカみたいじゃねえか……
先まで軽かった足取りは、足に錘を鎖で繋いでるみたいにダルくなった。
マンションに帰ったら、そこは家じゃないみたいで、つむぎと出会うまで感じてた、他人の家にいる時の息苦しさが俺の心臓を襲う。
帰り道で見たからすぐに帰ってくるかと思いきや、帰ってきたのはぴったり20時。
随分と楽しい思いをしていたみたいだな
「ただいまかえりました!」
「………」
「あれ?薫さん、どうかしましたか…?」
心配そうに顔を覗いてくるこいつに腹が立つ日が来るなんてな…。
「お前今日、男の人といたよな」
「っ!?あ、あれは…」
「俺に言えないのか」
「違っ、そうじゃなくて…えっと……」
…あ〜…、クッソ…。結局こいつも、こうなんじゃねえか……
でもつむぎのことに関しては、俺も悪いから…。下手なこと言いたくない
「もういい。お前の言い訳聞かないといけないくらいなら、俺がお前の家から出る」
「…!?、本当に違います!説明は出来ないけど、でも、本当に、薫さんが思ってるようなことはありません!!」
あー、もう。
つむぎにこれ以上口調の悪い俺でいたくないのに…
幼少で止まった俺の精神に、歯止めが効かない…
「っるせぇな。黙れよもう。浮気してたんだろうが。俺に好きなんてほざいておいて、お前は他の男と密着して、俺がお前にだんだん惹かれていく姿は、お前からするとさぞ滑稽だったことだろうな」
「えっ…?私のことを、好き…?薫さんが…?」
違う…もう俺は……
「ふざけんな…、もう1ミリも、お前のことなんか好きじゃない。この世界で1番嫌いな人間の部類だ、お前は」
俺の親を思い出させるような手口をしてきやがって…。でも救ってくれたのもつむぎで…。
あ"〜…グルグルする…
心臓をグルグル掻き乱されてるみたいな、そんな気持ち悪さがずっと俺を襲ってる
「…私は、本当に何もしてません。どうしたら、信じてくれますか…」
どう…信じろって言うんだよ…
普通は付き合ってもないのに抱きつかねえよ…
「何やっても信じねえよ。情報隠すことなんかいくらでも出来るだろうが…。どうだ?恋愛ごっこは楽しかったか?もう満足だろ。俺はもうお前の元には帰らねーよ…………。じゃあな…」
「まっ…!!」
ダイニングから立ち上がって、玄関に向かって数歩歩いたとき、つむぎの咳き込む声が聞こえた。
なんだ…?まだ俺に優しくしてもらえると思ってんのか……?
「ゲホッ…ッ、ゲホッ、ガハッ…、アァッ」
あーもう、本当になんなんだクソが…
鉛のように重い体を、ゆっくりつむぎの方に向ける。
____ドロッ____
はっ…?
な、…んで…………
____ドサッ____
「っ__!?おいっ、つむぎ!つむぎ!」
綺麗だった薄茶の床は赤黒いドロっとした液体がかかり、先まで目を開けていたつむぎは、苦しそうに目を瞑り、冷や汗をかいて過呼吸らしきものを繰り返してる。
「目をあけろ!つむぎ!!」
あ“〜…!
まだ俺の中にこんなに未練ばっか残ってたのかよ!
とりあえず、今はそんなこと考えてる暇じゃねぇ…
「すぐに救急車呼ぶから!もう少し耐えろ!」
背中をさすりながらつむぎに声をかけてたら、途中、つむぎが薄っすら目を開けた。
その時呟いたつむぎの言葉は、俺の心臓を抉った…。
「…ご……めっ…ね…」
冷や汗が伝ってる顔で、優しく、哀しく、申し訳なさげな表情をして…
その一言を皮切りに、つむぎの意識は完全に無くなった。同時に、救急車も到着した…。
◇◇◇




