11.過去
俺の幼少の1番初めの記憶は、蔑みと軽蔑の義母の目だったよ。
生みの母親は、俺が生まれて間もない頃に亡くなったらしい
そっから、父親は浮気相手と再婚した。
多分たまにある話なんじゃないか?
もう1人の母親は、生みの母親のことを酷く嫌ってたから、当然その子供のことも蔑む
父親も俺に興味なんて無かったから、俺がどれだけ父親の浮気相手から暴力を受けても知らんふり。
それが当たり前だった。
で、家に帰るのが嫌だったから、高校で寮があるところを選んで進路選択した。
当然金を払うような奴らじゃなかったから、特待生を狙った。
特待生の人間は、授業料とか諸々が無償だったから
無事合格した。
特待生にもなった。
でも、俺の行った特待生制度のある高校は、その特待生がスピーチをしないとダメだったんだ。
それでスピーチをしたら、もちろん誰が特待生か分かるだろ?
そこから、また振り出しに戻った。
無関心な父親と、暴力を振るう母親から逃げた先で待ってたのは、ただひたすらに虐めれる生活だった。
まあ、あるあるな虐め方だと思ったよ。
窓とかトイレの上から水をかけられたり、ノートとか教科書取られたり、机に落書きされたり、パシリもあったな。それと、靴箱に画鋲大量に詰められたこともあったっけな。
全部しょうもなかったけど、それは徐々に、俺の精神を蝕んだ。
最終的に、俺は学校を中退して、全部どうでも良くなって、女のいるところを転々として、家に帰らずぶらぶら過ごしてた。
そんで、今
もう何年こんな生活を続けてるか分からないくらいには、続けてる
「…これが、今のクズな俺を生み出した過去だ。どうだ?幻滅したか?別れるか?もちろんいいぜ。弱いとこ見せたしな。お前が俺に惚れる理由はもう…」
「もう…、そんなこと言わないでください。自分でクズだと思うなら、変わればいいだけです。もちろん簡単じゃありません。難しいですよ。だから、私は今までと同じような生活で問題ないと、初めに言ったでしょ?」
俺を抱きしめながら子供に言い聞かせるみたいに…
俺は何歳だと思われてんだ?
……まあ、でも…
…悪くない
っあ〜〜___…
もう認めるしかないよなぁ…絆されてるよ、俺は…
ちょっとくらい甘えても、問題ねぇだろ…
「っ___!?!?」
「…なんだよ。ダメかよ…」
「ふふっ、いいえ、全く」
後ろに手を回して抱きしめ返しただけだろうが…
「あの、今日、誕生日プレゼントを用意してて、良かったら受け取ってくれませんか?」
「えっ…、ああ…」
なんでこいつが…?
親からも俺の誕生日なんて祝われたこと無かったのに、なんでプレゼントまで…?
俺、こいつに何も…
「どーぞ、開けてみてください!」
思考に耽ってる間にこいつは戻って来て、俺にプレゼントが包まれてる袋を手渡してきた。
…なんでこんなに、こいつの側はあったかいんだよ
「これ…」
「えへへっ、気に入りましたか?私なりに薫さんのことを観察して選んでみたんですけど…」
いや観察て…
こいつほんと、何も考えてないようでめっちゃ考えてるんだよなぁ…
よく俺が冷え性だって分かったな…
手袋って…
「私、薫さんのピアスをばちばちにつけて、鎧を被っている姿が好きです」
ん?なんの話だ?
「でも」
???
何も分からんぞ
「ありのままの貴方の方が、もっと好きです」
「…っ!!」
俺の頬に手を当てて目を合わせて柔らかく微笑む。
「でもきっと、ありのままを見せるのは怖いことだから、不安な時や怖い時は、私が側にいますね」
女神みたいだな…
………ああ…ダメだな…
こいつは、俺の側にいたらダメだ
もっと、俺以上に幸せにしてくれるやつがたくさんいるだろ
こいつは、俺から離れるべきだ…
でも、今だけは…こいつになら、ちょっとくらい…
「…おう…、大切にする…」
「はいっ!」
これ以上こいつに沼っちゃダメだ…
◇