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10.温かい料理


「つむぎ…?」



 机に突っ伏してるつむぎは、疲れているように見えた。


 

「んっ…、あ…、おかえりなさい、薫さん」



 目を擦りながら眠気を覚まそうと伸びをしてる。



 …疲れてただろうに…。今日めっちゃ寒いのに、何してんだよ……



「ごめん、せっかく待っててくれたのに…」


「いいえ…!そんなに気負わないでください。作って待ってる時間も楽しかったので!ねっ?」


「けど俺が、台無しにしただろ…」


「へっ?何がですか?飾りを荒らしたわけでも、何かを盗んでいったわけでもないのに、台無しなわけないですよ!」



 いや、…台無しの基準どうなってんだよ…



「いや違うだろ…、もっとこう…、料理冷めたし、こんな時間まで待って、風邪引いたら…どうすんだよ…」



 〜〜っ、クソッ、柄にもないことを…



 つむぎは……どんな顔を……



(…っ!、)



「なんで、そんな顔…」



 分からない…何で、つむぎは笑えるんだ…?



 一生懸命作った料理が冷めたんだぞ?

 夜遅くまで待たせたんだぞ?



 なのになんでそんな嬉しそうなんだよ

 


「あ、変な顔でしたか…?その、心配してくれたり、料理のことも気遣ってくれるのが嬉しくて…。っそれよりも、晩御飯は食べましたか?」


「……、いや、食べてない……」


「よしっ、じゃあ食べましょっ!温めて直しますから、少しだけ待っててくださいね!」

 


 …変わらないなぁ……



 20時に戻れって言われてたのに、2時間も待たせて、料理も冷たくなってさ



 他のやつらは殆どが、俺のダメなところを見たら切り捨てるよつなやつらばっかりなのに、こいつは…つむぎは、また笑って包み込むんだな



 …変なヤツ



 あいつがキッチンから戻って来たら、卵がキラキラしてる美味しそうなオムライスが登場してきた。



「…いただきます」


「どうぞ!」



 スプーンでオムライスを掬ったら、嫌いな野菜は入ってない、パセリとニンニクとタマネギがミックスされてるバターライスと、ふわっふわな卵にかかるデミグラスソース。



 口に入れるとたちまち見た目通りの美味しさが広がった。



「美味っ…めっちゃ美味い」


「えへへ、安心しました!良かったらチキン南蛮も食べてみてくださいね」



 そう言われて、チキン南蛮を一口食べたら、これも凄かった。



 外はカリッとして、中はジュワッと油が凄い。加えて、手作りであろうタルタルソースがかかっている部分は軽く食べられる味付けが施されていた。



「えっ…!?薫さん…!大丈夫ですかっ…?」


「ん?」



 何が?と思って前にいるつむぎの方を向いたら、自分の視界が歪んでいることに気が付いた。



 ……もしかして、泣いてる…?俺……



「えっ…、あ…、なんでだ…?」



 本当に何でなんだ…。こいつの料理で…?



「___っ!……ごめんなさい…、お行儀悪いですけど、立ちますね」



 つむぎは言った通り立って、俺のほうに近づいてくる。



 何をするのかと、少しだけ身構えてたら、その警戒心は無駄だと言われてるみたいな優しい笑顔で、俺を包み込んだ。




  ___っ…!!!?



「抱きしめられると、少しだけ落ち着きませんか?薫さんの今までに何があったのか、全ては分かりませんし、私から聞くこともありませんから。警戒しないで」



 ああ…いつも何で、俺の考えてることが分かるんだ…



 こんな不思議な気持ちだったのか



 俺は女に対して持ち前の頭全部使って、考えてること、思ってることを予想してきた。



 なんだろう、不思議だな…。自分の感情を見抜かれるのは



「何か怖いことや、不安に思うことがあるなら、私が守りますよ。だから薫さんは、生きることを楽しんでくれたら良いんです」



 …どういうことだ?



 生きることを楽しむって、何だよ……?



「帰ってくる場所があるのも、そこでご飯を食べるのも、眠るのも、それが当たり前になったら、きっと楽しいですよ」



 ああ、きっと、そうなんだろうな



 お金は何をせずとも入ってくる、衣食住は完備されてて、眠る場所は温かい。



 こんなに至れり尽くせりなのに、俺は何も話さないのか?………ダメだろ…、せめて、俺の話はしないと



「聞いてくれるか…」


「…!もちろんです、薫さん」



 これまでのことを話すのなんて、初めてなんだけどな…



 不可抗力だったけど、泣いちゃったから、しゃーねーな…

 こいつも知りたそうにしてる



 ある程度勝手に涙が出た理由は検討がついたしな



 


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