1.じんせい
新連載、1つの物語としてお楽しみください!
俺の生まれてからこれまでの人生は、碌なものじゃないと思う
生まれて物心着く頃には、血だけ繋がっている父親と、血すらも繋がっていない家族と言えない人間から暴力を振るわれ、そんな親の元で育った俺もまた、まともじゃ無い。
分かってるけど、やめられない
一種の病気だと思ったよ
「ねぇ〜薫ぅー、聞いてるのー?」
布団の上で寝っ転がりながら、女は俺に話しかける。
どうでもいい
なんでもいい
でもそれじゃあ、ダメだろう?
生きるための最善の策を、俺は講じてるだけだ。
「ん?聞いてるよ。でも今日は夜も遅いから、早く寝て、また明日、俺の好きな君の声を聞かせてくれる?」
「うん、分かった、おやすみ。薫」
「ん、おやすみ」
女の家
女の金
女の軽い愛
衣食住は、生きるために必要だろ?
俺は
仕事もしてない
家もない
金もない
俺にあるのは、人間関係のいざこざをのらりくらり交わしながら、女の心を掴む方法だけ
どうしようもない最低でクズな人間だなって、自分でも思う。分かってるさ
明日だって、俺は別の女のところへ行く。
他人にどう思われようが、どうでもいい
恨むなら、勝手に恨めばいい
そのクズな男を軽く愛してしまったのは、他でもない君だから
その思考回路ですらも、俺は少なくとも、まともな人間じゃないと分からされる。
だから誰も、こんな男を深く愛してはいけない
◇
「っ…!やめてっ…!」
ある日、フラフラまた別の女を探していた時、ふと声が聞こえた。
面倒なことには関わらないほうがいいという、俺の至って真面目な思考と、どんな状況か分からないので見たいという至ってシンプルな好奇心。
結局、まだ幼心を持ち合わせていた俺は、好奇心には勝てなかった。
チラリと声のする路地裏を覗いてみると、男は今すぐにでも女を殴りかかりそうな勢いだった。
流石にそれを見過ごすのは、男として黙っていたらダメな気がする
「おーい、そんなとこで何してるのー」
俺の声に驚いた2人は、仲良く顔をこっちに向けた。
かと思えば、女を殴りかかりそうだった男は、焦った形相で言った。
「っなんだお前っ!!お前には関係ねぇことだろうが!」
まあ、関係はねぇよなぁ。うん…
けどなぁ、だって…
ちょっと覗いたら、超美人な女を今にも殴りかかりそうな男がいたんだぜ?
そりゃ止めたくもなるってもんよ
綺麗な顔が台無しになるでしょうが
「いやいや、あるよ。だってその子、俺の彼女だし」
…。またか?
また、女の子と男は驚いた顔で俺の方を見た。
仲良いのか悪いのかどっちだよ
1回でいいだろそのあっけらかんな表情
失笑するしかなかった
ただ、我に帰るのは女の子の方が先だったらしい。
俺に口パクで名前を伝えて来た。
「[ つ む ぎ ]」
へぇ?
意外と度胸あるじゃん?
「ねっ?つむぎちゃん」
「はっ…!?本当だったのかよ!」
まあ、そういう反応になるわな
俺だって同じ立場だったら疑ってるし、なんなら彼氏がこんなとこに来るのも、なんか怪しいことやってるんじゃないかって疑うけど
でもコイツは、その疑いを持つこともなさそうだな
そんくらいテンパってるみたいだし
「当たり前じゃん。ねっ、つむぎちゃん、早く家帰ろうよ。俺お腹空いちゃった」
「っ!うん、今日の夜ご飯はカレーなんだぁ」
「えっ!美味しそー!楽しみ!」
男が、俺とつむぎという女が仲良さげに会話しているのを呆けて見ているうちに、さっさと路地裏から出て、人目のあるところに場所を移した。
男は終始呆けてた…。まあいっか
しばらく無言だったが、人が溜まる場所に行くと、つむぎという女は俺と向かい合った。
「あのっ…、助けてくださってありがとうございました。とても助かりました。本当に、なんとお礼をすれば良いのか…」
ふーん、
お礼してくれるのか
…良いこと思いついちゃった♪
「じゃあ、つむぎちゃん。俺と付き合って?」
最後まで読んで頂きありがとうございます!
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