王太子の思うこと※ダニエル視点
ダンスパーティーの騒動から二週間後、ブリタニー学園では王太子主催で立食パーティーが行われていた。
表向きは秋の収穫祭を祝うためと云うが、収穫祭はどちらかと云えば庶民の文化であり、古くからの土着宗教も混じっている。
「開かれた王室」を目指したいからとダニエルは答えたが実際は、ダンスパーティーの火消しだ。
貴族の噂話には尾びれが付きやすい。
シャーロットの今後を考えれば少しでも早く終息した方が良いとシオンに提案すれば、「やろう! 盛大に祝おうよ」といつも通り飄々とした態度を取っていたが、「あ、でも、今の彼女は婚約者不在のような者だから不埒な輩が出ないように警備は厳重にね」と睨み殺す視線を送ってきた。
実に面倒くさい皇太子である。
王太子として見れば二人の結婚はメリットばかりだ。
皇太子妃の祖国のポジションは帝国への抑止力になる。
さらにシャーロットは王家の血も引いているので、シオンとの間に子どもが産まれその子どもが皇位につけば王家はさらに深く異国に潜り込める、妃をもらい受けるのも良いかもしれない。
双方の幼なじみとしての意見から言えば、シオンはシャーロットへの愛が重い。今は大分遠慮しているが、自分の妻となれば愛情を持て余すことなくシャーロットに注ぎ込む。
その愛にシャーロットが耐えられるかが心配だ。
伴侶としては見ることが出来なかったダニエルだが、シャーロットのことは母から大事な姫だと言い聞かされていたし、実際可愛らしい容姿は妹がいればこんな感じなのだろうかと考えたこともあった。
そんなことを口にすればシオンは間違いなく国には攻撃はしないがダニエル個人を潰してくるだろう。
触らぬ神に祟りなし、馬に蹴られたくはない。
「ダニエル殿下、何を考えていたのかしら」
ホールの陰に隠れるダニエルを見つけたベルローズがダニエルに話しかける。
「君のこと、と言いたいが我が家で預かっている、高貴な人のことだ」
「あら、ならば早く帰って頂かないと、私だけのダニエル様になりませんわね」
「……シャーロット令嬢のことは良いのか」
「それはシャーリーが決めること、皇太子殿下は紳士ですから嫌がる彼女を連れ帰ることはしないでしょ、それに何度も云っていますが私の情熱はダニエル様だけですわ」
「ローズ、帰ったら、ダニーと呼んではくれないか」
「良いですわよ、いっぱい呼んであげますわ。ダニー様」
薔薇の咲き誇ったかのような笑みを浮かべるベルローズにダニエルは思わず赤面した。
「敵わないな、私の姫は」
母はシャーロットを姫と云うが、自分の姫はベルローズだと彼女の腰に手を添えると二人で表に戻った。
ダニエルの思うこと、聖人君子ではないから色々考えている