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薔薇園※ジャンゴ視点 BL要素強め

ジャンゴの出生などは次にまとめるのでBL要素苦手な方はこの回読まなくても大丈夫です。


ジャンゴにとってシオンは命の恩人だ。

 ヴァイオレットも同じように彼に救われてはいるがあの性格の主なので、敬う態度よりつい小言が出てしまう。

 そんな主の命でジャンゴがやってきたのは、ゴレスターン――薔薇園と呼ばれる男達の社交場だ。

 ヴァイオレットがカメリアに苦言を呈したようにジャンゴの体つきは男や男同士の恋愛を楽しむ貴婦人には好まれるが、一般的な令嬢には恐れられる。

 王宮でシオンと一緒にカーニバル姿で歩いていればその手の男性から声がかかり、サロンへ招待された。

ペルムーン王国の王宮はシオンの従者として一度拝見したことがある。

 その場所はそこを思わせるような雰囲気だった。

 麝香の香りが部屋中に広がり、思わず噎せかえりそうになる。

 布地の巻いただけの美少年やベールで口元を隠し妖艶に踊る小姓、ターバンを巻いてにこやかに笑う男の膝にはスルタンの寵姫と同じような服装をする美青年とどこを見ても男ばかりでむさ苦しい。

 ジャンゴも収穫祭の時と同じような格好をしているので人のことをとやかく言えない

ジャンゴは女性が好きだ。

 好色家ではなくキラキラとした彼女たちを見ていると胸がときめく。

 自分の容姿では恋愛など楽しめないと架空の恋愛を楽しんでいたが、カメリアと出逢ってからは今まで読んでいたどの小説よりも刺激的で次の展開が待ち遠しくなる。

 彼女の趣味についてヴァイオレットが心配そうに訊ねてきたが問題はない。

 それだって彼女の一部だ。

「貴方、運が良いのね今日は天使がいるわ! それも砦を許す日よ」

 天蓋の中で男達を侍らせているのは、シャーロットの父、ミカエルだった。

 後宮の女主人を思わせる重厚な装飾品を纏っているが、絹のローブとかろうじてズボンを纏っているだけの姿は、天使というよりは堕天使だ。

 娘がいるとは思えないほど中性的な彼は夢うつつに煙草を手にすると、男達はその煙草を奪い合っている。

「砦……」

「あら見かけによらず初心なのね、私たちのような人間は前も後ろも使うのが粋ってもんでしょ、後ろを使っても良いってことよ」

「はぁ、」

 ジャンゴをサロンに連れてきた男はくねくねとした態度を取るが、彼はジャンゴと同じで前しか使わないので、今のところジャンゴの貞操は守れそうだ。

「貴方のアッシュブロンドはきっと気に入られるわ、いいわね、次の相手はワタシと彼に囁いてね」

 ジャンゴはこの髪が嫌いだった。

 この髪のせいで父にないがしろにされ、母を亡くし、妹も生まれてから数年間不遇の生活を強いられた。

 けれど役に立つならと、ミカエルの前に立つと彼は上目遣いにジャンゴを見た。

「見かけない顔だね、名前は」

「名はまだありません」

 こういった社交場では偽名を使うのがルールだ。

 適当に名前を付けても良かったが彼との話をなるべく長く持ちたいジャンゴは、新参者らしく振る舞う。

「その銀色の髪は良い、シルバーウルフと名乗ると良いだろう」

「ありがとうございます」

 恭しくお辞儀をすれば益々気に入られたのか、彼は三日月のようにアメジストの瞳を細めて笑うがジャンゴは、その冷たさに身震いした。

「シルバーウルフ、君は前だけだと見たが女は抱けるか」

 前か後ろかを決めるのは金と黒の足輪だ。

 ジャンゴの金色の足輪を見ると、ミカエルはふいに訊ねてきた。

「抱けます」

 寧ろ男との相手の方が無理なのだからその言葉に嘘はない。

 健全なお付き合いは出来ないが爛れた関係ならそれなりに経験している。

「もし娘が紫色の瞳の男を産んだら次はシルバーの男がほしい、どうだろか」

「先約がいるのですか」

「ああ、生まれる順番はどうでも良いが最初の男は、グレープガーネットでなければならない」

 ジョージがミカエルに狙われているのは本人からも聞いている。

 彼の赤みかかった瞳は天使がかつて愛して止まない男を思い出させる。

 ジャンゴの髪もそうだ。

 彼はシャーロットを通して悪魔を再び目覚めさせようとしている。

 おぞましい――

 これ以上会話を続けていれば、彼に敬意も好意を寄せていないのがバレてしまうとジャンゴは主から用意された言葉を口にする。

「太守様が命じるなら、どんな要望も叶えますよ」

 太守という言葉を聞くとミカエルは大きく目を開いて、ベッドの端に寄せていたワイングラスをジャンゴに投げつける。

「帰れ、貴様のような奴はいらない」

 ひどく腹を立てたミカエルの様子に気づいたのか案内者が走ってやってきた。

「何やってるのよ、ああ、折角のチャンスだったのに」

 彼にも用済みだと追い出されたジャンゴは急いで主の元へ走る。

 予想通りペルムーンの太守を嫌っているのと、おぞましい計画を実行するつもりだと。

太守が嫌いなのにアラビアンな装いは平気なミカエル。

たぶん太守というか国が嫌いなだけで文化は嫌いではない、自分本位の見本のような人。

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