キャスリントン家の秩序※マーガレット視点
前回の話に入れようと思ったのですが、まとまりが悪いので単独で
ライター家とスコット家の話
マーガレットは、キャスリントン家の娘としてあらゆる教育を受けてきた。
淑女としての礼儀作法は勿論、王家の影となる家がどこなのかも教えられた。
さらに叔母のような存在は王家のために情報収集を欠かさない。
キャスリントン家が表舞台に立つ役者なら、スコット家やライター家は黒子的な存在だ。主役だけでは劇が成立しないように、彼らの存在は王家にとって不可欠な存在だ。
ライター家は表向きはしがない文官だが、実際は不正をする役人や王家の徒となる貴族をあぶり出す。
ブノワ家が没落したのも力を持ちすぎ、ペルムーン王国と密約を交わしていたからだ。
従姉の護衛騎士の妻がブノワ出身になるのはどうかと一族が騒いでいたが、最終的には、御家復興などと考える人間はいないのでどうでも良いと結論が出た。
スコット家も田舎領主に過ぎないが、国の外れというのは国防の要だ。
キャスリントン家の門閥貴族であるので何代か前に婚姻を結んで絆を強化している。
国を外部から守っているのは勿論、内部の敵も密かに始末をしている。
その二つの家が婚姻関係になるのは喜ばしいことだ。
三年間、二人を見てきたが政略結婚とは思えないほど相思相愛でこの二人ならどんな闇にも立ち向かえるだろう。
スコット家の領地の一つに小島がある。
そこの修道院は戒律が厳しく、陸地と繋がっていないので逃げ出すことも難しいがなぜか入れられた娘は早くて二年、遅くても五年のうちに逃亡し、消息を絶つ。
ブリタニーには、刑務所、感化院が修道院に入れるのは表向きは彼女たちの罪を問わない王家の慈悲深さをアピールするためと、入れたところで彼女たちが真っ当な道に戻れそうもないからである。
修道院であるが管理はスコット家が行っている。
修道院と名乗るためのお布施は教皇に支払っているので、天罰は下らない。
さらにスコット家の領地の本土にはまっとうな教会がある。
元々、姉を陥れた妹や王太子を唆した平民の娘のために用意した修道院なので、ここに入れられる令嬢は滅多にいない。
そのため、普段は管理人しかいない。
卒業前の大事な時期に、次期当主が領地に戻ったということは近々罪を悔い改めようと修道院のドアを叩く令嬢がいるということだろう。
司祭は恐らく、退役した騎士団幹部の一人、修道院長は王妃付きの女官の誰かだろう。
それに不自然だと思われないように孤児院から未来の影候補の女子達が集められる。
そんなことを考えていると、「怖い顔をしないで」とジョージが優しく髪を撫でてくれた。「お帰りなさい、ジョージ、美味しいものは見つかった」
扇子で表情を直すのを隠しながらマーガレットは囁く。
「見つかったがどうやら、ジャンゴ殿の方のほうが見つけるのがうまいらしい」
ロイフィリップ家の膿み出しのために動いていたジョージに聞いてみれば、どうやらジャンゴの方が良い贄に見えたようだ。
あの方には悪いが、ジョージになにかあれば、皇太子であっても許さない。
それだけはマーガレットが譲れない、たった一つの願いだ。
修道院だけど修道院ではない場所
次回とその次はジャンゴがメインになる予定です。