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貴婦人の優雅なおしゃべり

しばらく短い話が続きます(各キャラにスポットを当てたいので)

まずはヴァイオレットから

パーティーも中盤に差し掛かってくるとお喋りが中心となる。

 ベルローズやマーガレット、エリザベスと高貴なメンバーの他にシャーロットと同じテーブルに着いているのは、来賓のヴァイオレットと女子生徒が一人。

 まずはヴァイオレットの話から始める。

 喋る機会は度々あったがどうしても畏まったやりとりだけなので、シャーロット達は、親しみやすいパーティーに招いたのだ。

「私のような者にもこのような場を頂きありがたく思います」

「ヴァイオレット男爵令嬢、そんなに畏まらないで私たちずっと貴女とお話ししたかったの」

 侍女であっても貴族である彼女の礼儀作法は完璧だ。

 晩餐会ではシオンとの会話がメインだったので、彼女の年齢も分からずにいた。

 シオンのように編入ではなくあくまで主人の付き添いとして、ヴァイオレットもジャンゴも大学の講義を受けている。

「そうでしたか。それに素敵なドレスまで用意して頂いて感謝しております」

「デイジーが云っていましたわ、ヴァイオレット様とは服の趣味が合うとあれこれアドバイスを出してくれるから知識の引き出したが出来たとも」

 ヴァイオレットは生徒ではないので、ドレス姿ではあるがフォーマルに近いカジュアルな服装だ。

 茶会に参加できる程度のドレスは、ツーピースに分かれており、裾の膨らみの薄いスカートと襟の詰まったブラウス、これだけでは質素すぎるので上着に工夫を重ねた。

 ここでジャケットを羽織れば家庭教師のような装いだが、鎖骨の辺りでクロスした上着は東洋の花を刺繍している。

 トレンドのオリエンタルを取り入れた瀟洒なファッションに女子生徒達は釘付けだ。

 アッシュブロンドを片方だけ垂らし、ニースバルトの特産である真珠のイアリングを覗かせている。

「帝国の高等学習院の制服を参考にしただけ。ほとんどデイジー子爵が私の希望をくみ取ってくださって、動きやすくそれでいてお洒落な服、いつまでも着ていたいですね」

 普段はこの国の侍女達に合わせて、バッスルスタイルではあるが、地味な色合いの着ているヴァイオレットはお洒落が大好きなようだ。

「シオン閣下にお願いしてみては、あの方なら許してくださるかと」

「主は初恋の相手以外興味がないのです、何を着てもいいじゃないと言うだけです」

 兄もお洒落には疎くてと周りにいる男性陣にため息をつく、ヴァイオレットだがふっと微笑み直した。

「私の婚約者なら褒めてくれるでしょうね、手紙にこのドレスのことを書きたいと思います」

「まぁ、デザイン画で良ければデイジーに頼んで渡しましょうか」

「是非に、あとは兄に花嫁が見つかれば良いのですがこれがなかなか……」

 兄妹の結婚の順番は年の近ければ妹が先に嫁いでも問題はないが、ヴァイオレットは兄の嫁が見る狩るまでは安心して嫁げないと呟いた。

「あ、あの、あたしがいきなり話すのはどうかと思ったのですがリー男爵令嬢は高等学習院に留学経験が」

「ヴァイオレットで良いですよ、貴女は、」

「父が宮廷で文官を務めています、カメリア・ライターです」

 棒色の髪を三つ編みにし耳の辺りで束ねた女子学生が挨拶する。

「カメリア様の家も男爵家でしたわね、カメリア様とお祖母さまとうちの祖母が知己なのです」

 失礼がないようにベルローズがフォロするとヴァイオレットは先ほどの質問に答える。

「そうなのですね。先ほどの質問ですが、在籍しておりました」

 高等学習院は帝国にある最高学府だ。

 ダニエルはこの機関を真似て大学を作ろうとしているが、百年以上続く機関を浸透させるには同じくらい年月がいる。

「ん、どうしたシャーリーそんなにヴァイオレットを見つめて、」

 ヴァイオレットに視線を向けているシャーロットにエリザベスがクスクスと笑う

「あ、あの私そんなつもりはなくて、その……」

「揶揄って済まない、君の視線は私に向けてほしかっただけ」

「ベティー様、あ、あの、ヴァイオレット様の親戚にレオノーラという名前の婦人はいますか」

「いませんね、その方がどうかしましたか」

「シャーリーに代わって私が話そう、プラチナブロンドの髪をした黒猫のような侍女が四年前に皇太子殿下が我が国に訪れた際、同行していた。そうだろう」

「はい、黒猫のようなというのは違いますが麟として素敵な方だったのでまたお目にかかりたいなと」

「もしかしてお仕着のドレスもその方から」

 シャーロットがクリーム色が好きだと知っているベルローズはなるべくその色のドレスを用意する。

 それだけではどうしてもレパートリーがないので他の色も使うが、お仕着のドレスをデザインする際、珍しくシャーロットが紺色が良いと口にしたので不思議に思ったが、あえて聞かずにいた。

「はい、ヴァイオレット様のように凜としていて髪の色も近く、どこか雰囲気が似ていたので、その方に憧れて少しでも近づけるように紺色を選びました」

 青色はニースバルトの色だが紺色、特に深い色は皇族が使う色である。

 けれどいちいちこの色はどの国の色と遠慮していたらドレスなど仕立てられない。

 公式の行事さえルールを守れば良いのが貴族の特権だ。

「おやおやシャーリーにそんなすてきなお姉様いたとは、私だけかと思っていたのに」

「エ、ベティー様も憧れていますよ、ローザ様も、メグもカメリア様も」

 エリザベスのハキハキとした態度が素敵。

 ベルローズの気品に満ちた態度が好き。

 マーガレットの着こなしやジョージに対する愛情に憧れる。

 カメリアの知性の応用力と令嬢達の良いところを褒めるシャーロットに令嬢達は頬を染める。

「私も皆様みたいになりたいなと、私……憧れてばかりですね」

「それは違うよ、皆ね、なりたい自分を持っている。私だってそうだ、」

「そうですわ、私だってシャーリーの可愛らしい容姿だったらと思うことがあります、でも、可愛らしくなるのは無理だからせめて服だけでもと思ってるの」

 マーガレットの言葉にシャーロットはあっと口にした。

「いいのよ、憧れるのは良いこと、でもシャーリーの良いところは沢山あるのを忘れないで」

「はい」

「紺色のドレスの理由は分かったけど、クリーム色は」

「それは……笑わないで聞いてくれます」

「あら、私たちがいつ、シャーリーの話を笑ったかしら」

 シャーロットの癖である首を傾げるポーズを取りながら、ベルローズたちが微笑む。

「四歳の時、お茶会の練習でスコーンが出たのですが好きなだけ付けていいというのを、そのまま受け取って、お皿一杯にクリームのせたら母に叱られてしまって」

「まぁ、でもお菓子の誘惑には負けてしまいますものね」

 小さい頃なら尚更だと微笑ましく話を聞いてくれる友人にシャーロットは話を続ける。

「その時に母が、母は滅多に叱らないのですが美味しいものは少しずつ、クリームはたっぷり付けなくても、そこにあるだけで良いのよとお話ししてくれてそれからクリーム色が好きになりました」

「可愛らしいエピソードですわ」

「そう言って頂けると嬉しいです、」

 そう言いながらシャーロットはスコーンに少しだけクリームを付ける仕草をした。


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