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護衛騎士との面会

エリオット君のお兄さん登場。

エリオット君もまた登場させたい、後その時にはビジュアルも書きたい……

次回は狼の群の中にいるよを説明する話になります。

話は少し遡り、秋の収穫祭の三日前。

 シャーロットは、エリザベスの紹介で一人の護衛騎士を紹介された。

「ドーン侯爵家の長男、グレイグ・ドーンです。長年エリザベス王女殿下の護衛騎士を務めております」

 栗毛の髪はどことなくマーガレットを思い浮かべる。

 ドーン家はキャスリントン家と深い繋がりがあるのだから血筋だろう

ジョージと同じ菖蒲色のドルマン姿のグレイグは一礼する。

 岩の意味を持つグレイグの名前の通り、ゴツゴツとした胸板が制服の上からでも分かる、それに首も顎も太い。

 シオンの従者であるジャンゴと似たような体つきだが、後にシャーロットの友人となった人物に言わせれば、グレイグは古代人の戦闘士、ジャンゴは野性味を帯びた狩人だと云う。

 髪を刈り上げるのが騎士団の習わしだが、エリザベスの元にいた彼はやや髪が長い。

 近衛騎士の中から王族の誰かの専属になると護衛と呼ばれ、肩章の代わりにマントの着用が認められる。

 王太子妃教育でそれなりに騎士の階級や、身分とは別の上下関係を教えられていたが確認と現場の話も耳にしておくべきだとマーガレットの部屋で、彼女と一緒にジョージが色々と教えてくれた。

 そして、ジョージも将来、ダニエルの護衛になりたいと話していた。

「ロイフィリップ伯爵家の長女、シャーロット・ロイフィリップです。この度、王太子妃殿下の私室付女官に任命されました」

 女官としてグレイグに会っているシャーロットはいつもの紺色のお仕着に、髪は邪魔にならないよう一纏めにしてすっきりとした印象を相手に与えている。

 形式的な挨拶が済ますと、今後の確認事項も含めて二人でお茶を嗜んだ。

 勿論、二人っきりではなくリリーとジョージが後ろに控えている。

「では、私のことはグレイグ卿と違和感があるのでしたらドーンでも構いませんが、なるべくなら、名前で呼んでください」

 今年で二十二歳になるグレイグと誕生日前で十七歳のシャーロットでは年齢差があるが、女官と騎士は同等の地位であること、仕事中は淑女を守る騎士であるため儀礼称号である伯爵では呼ばないようにとグレイグに云われた。

「はい」

「シャーロット女史……今だけ貴女の護衛ではなく、ドーン家のグレイグとして話すことを許していただきたい、弟が申し訳ないことをした」

「あ、頭を上げてください、ドーン伯爵。こちらこそ、妹が弟君に対して迷惑を掛けたことを直接お詫びしたく」

 いきなり頭を下げてきたグレイグにたじろいたシャーロットに、ジョージが咳払いをした。

「グレイグ卿、シャーロット女史は慎ましやかな令嬢です。いきなり謝られても驚くだけです」

「それにドーン家には私からも手紙を送ってエリオット様の、」

「弟に敬称は不要です、あれは既に我が家から籍を抜いております」

「えっ、」

「本人が望んだことでもあります、自分は騎士としてあるまじき行為取ったので勘当してほしいと」

「義妹のパートナーだけでそんな、」

「パートナーだけ引き受けただけなら我々もまだあいつを許せました……あいつはダンスの相手の後、花を散らす権利を得たと話していました。親に無断で結婚の約束まで取り付けてね、」

 花を散らすというのは貞操を捧げることを意味することはシャーロットも知っている。

 純潔を重んじる貴族令嬢が婚姻前に男性と躯を重ねることはタブーである。

 発覚すれば、手を出した男性も乙女でなくなった令嬢にもかなりのリスクが伴う。

 男であれば不届き者という烙印を押され暫くは社交異界に出入りできないが、女性は相手と結婚しない限り、修道院に行くか勘当されるかのどちらかだ。

 貴族として生きてきた令嬢が何のツテもなく街に放り出されれば行き着く先は娼館しかない。

 強かなクレアは結婚を条件に先に躯を差し出そうとしたが、貴族の結婚は親の許可なしでは不可能だ。

 男爵家や子爵家なら、伯爵家というブランドで彼女を嫁に迎えてくれるかもしれないが、次男とは云え、エリオットは侯爵家の子息であり、ドーン家は古から王家に忠誠を誓っている家柄だ。

 婚前交渉を持ちかける令嬢を嫁に迎えるとは到底思えない。

 彼女は一体どうするつもりだったのか

「……エリオットが言っていました、自分は守るべき相手を間違えたと、そそのかされ、それを鵜呑みにした。だから自分は騎士に相応しくないと」

 なんと返していいのか分からずにいるシャーロットにグレイグは眉を下げながら会話を続ける。

「あいつはこの国を出て、ニースバルトに行きます。籍を抜いたので騎士としてではなく、一兵卒としてね。そこで自分を鍛え直すと云っていました」

 侯爵家の次男として十八年間生きてきて、学園に入ってからはいずれは騎士団に入団として鍛え、学んできてきたエリオットが、騎士ではなくただの歩兵として身を置くのは相当の覚悟が必要だ。

 今まで対等であった者の部下として命令に従わねばならず、仲間は平民ばかり、最初はその平民にすら頭を下げなければいけないだろう。

「それでもいつか騎士としてエリザベス殿下を支えるよう、学園だけは卒業させました、」

 エリオットは学年上位の成績と剣の腕前もトップクラスだった。

 事情を理解した学園側が、簡単な口述試験と騎士団員との対戦を見て卒業を認めたとグレイグが話した。

「エリオット様ならきっと立派な騎士になれます」

「ありがとうござます」

 それしか云えないシャーロットにようやく胸のつかえが取れたのかグレイグは笑顔を見せた。

「それにしても同じブロアの令嬢でもこんなに違うとは、」

「え、ブロア家と云えばかつて宰相として王に仕えいた名家の、」

 侯爵家であったが貴族としての体面が保てず、爵位を返上しようとしたところ現国王の情けで、男爵家として残ったが後継者がおらず断絶したはずだ。

「シャーロット伯爵令嬢、もしや何もご存じないのですか」

「どうかシャーロットと呼んでください、クレアはブロアの家と関係あるのですか」

「……隠していてもいずれは分かることですからお話ししましょう、正確には貴女の義母上がブロア侯爵家の娘で王太子妃候補でもありました」

「初めて知りました……」

 現国王が王太子殿下だった頃の候補はカトリーヌとメイベルとしか記録されていない。

 セルマも候補だったようだが早々と辞退したので記録には残されていない。

「ある程度の年齢の貴族なら知っていることですが皆、口を閉ざしますからね、」

 残されていないということはグロリアに何か問題があったはずだ。

 シャーロットがそれを聞こうとすれば、遮るようにグレイグは話を続けた。

「彼女が候補から外れたせいで実家はかなり困窮し、爵位を返上するところまで、いきましたが、国王の恩情でどうにか男爵家と文官の仕事だけは残りました」

 それでもかつての栄華からほど遠い生活に疲労した長男は病死し、残ったのは娘だけ。

 その長女がマリーで、グロリアの姪になるがグロリアの口からマリーの名前が出てきたことは一度もない。

 この国では女性に財産権はあっても継承権はない。

 シャーロットのように親戚筋から婿を取る場合が殆どだが、最早落ちぶれたブロア家を盛り返そうなどと云う親族はおらず、マリーも卒業後は修道院に入り、静かに暮らしていくつもりだった。

「そんな彼女にアプローチしたのが私です、どうしても彼女と一緒になりたくて必死に親を説得し、彼女との結婚にこぎ着けました」

 エリザベスやマーガレットの兄たちの学友で卒業後はエリザベスの護衛騎士補佐に選ばれているグレイグと没落令嬢のマリーの婚姻は当時はかなり話題になっていた。

「彼女に対する誹謗中傷は凄まじかった。今思い出すだけでも、もっと良い方法がなかった考えることもあります」

 女性王族の護衛騎士が独身でなければならない決まりはないが、当時のエリザベスの立ち位置は不安定で、シオンに見初められない、ダニエルと結婚しないと、もしもの場合に備えてグレイグには決まった婚約者がいなかった。

 そんな中でマリーとの結婚は周囲からの顰蹙が大きかった。

 それでも月日が経つにつれ、グレイグの愛妻家ぶりとマリーの人柄に周囲は二人を祝福するようになった。

「ですが今は母と二人、社交界にも顔を出していますし、子ども達と仲良く暮らしています」

「マリー伯爵夫人はグレイグ伯爵に愛されているのですね」

「ええ、シャーロット令嬢。実は私たちの結婚を後押ししてくれたのは貴女の母君なのですよ」

「母が?」

 何も聞かされていないシャーロットが首を傾げるとあの方らしいとグレイグは口元に指を置いた。

「愛する二人を祝福しないなんて神への冒涜、あの人とマリーは全然違うのだからちゃんと彼女をよく見なさいってね」

「そうなのですね、」

「その御陰で彼女と添い遂げられました、」

 今では双子を含め、三人の子どもの父親となったグレイグはかつての恩人に恩返しできると張り切っていた。

 しかし、目の前にいるシャーロットは髪の色こそベアトリスに似ているが中身は全く違う。

芯はありそうだが優しくおっとりとしているシャーロットに、狼の群の中にいることを伝えなければとグレイグは咳払いした。

 彼女は皇太子殿下の掌中の珠だ。

 万が一彼女を傷つけるようなことがあれば、グレイグの首どころか国が滅びる覚悟でいなければならない。

 シオンの正体に気づいていないシャーロットは、グレイグ達の結婚生活が素敵だと微笑みながらお茶を飲んでいた。

ドーン家、当初はちょい役のつもりでつけた苗字でしたが調べたらなるほどな意味でほっとしてます。

(家名はなるべく分かりやすい名前にしてる)

ブロア家のその後、結果的に家はなくなりましたがマリーの両親はマリーの結婚後に、田舎で隠居暮らししてます。

話の中でもう少し掘り下げる予定ですがひとまず読者様を安心させたく書いておきます。

グレイグさんの先輩騎士は二年くらいで第二王子の近衛隊長に任命されました。

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