愚者の選択『大学浪人』劇場~入学試験は繰り返す~
「はい、それでは全員筆記用具から手を離すように。これより係員が解答用紙を回収します。」
試験終了のベルと共に試験監督官の声が試験会場にこだました。
そう、ここは異世界大学の入学試験会場だ。その競争率足るや毎年1千倍を越える。
つまり毎年100人の定員枠に対して10万人以上が挑戦するのである。それほど異世界大学は憧れの的なのだ。
もっとも10万人の内、新卒現役は1万人くらいで残りの9万人は浪人組だ。当然俺もそうである。
ふふふっ、しかも驚け俺は今回の挑戦が33回目だっ!
はい、実は俺って『時間巻き戻し能力者』なのよ。なので受かるまで何回でもやり直せるの。
だけどさすがに33回挑戦して全滅ってのはかなりしょげる。
もっともリアル世界では3時間も経過していない。逆にそのせいで試験内容の復習もしていない。
つまり一番最初に挑戦した時と俺の学力はほぼ一緒なんだ。でも出題される問題は覚えているから何回かやれば受かると思ってたんだよね。
だが現実は厳しかった。うんっ、なんで毎回問題内容が変わるんだよっ!おかしいだろうっ!時間巻き戻しってそうゆうもんじゃねぇっ!
ぐすん・・、やっぱりズルしちゃ駄目なんだね。勉強しよう・・。
何かに失敗した子は時間巻き戻し能力に憧れるだろうけど、そうは問屋がおろさない。
SFではそれを『双子のパラドックス』という。いや『タイムパラドックス』だったか?
どっちにしても割れたガラスを元に戻すのは大変なんだよ。だからみんな慎重に生きるのさ。