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第3話 『接触』(Part-B)

 雅は歩きながらPCSでやりとりをしていた。思い描いた事はすぐにPCSによって文字として変換されて、そして伝えたい相手に送信されていく。PCSでのやりとりの相手は、高校の同級生たちだった。

「今、家を出たよ~」

「分かった~」

PCSで、みんなが今何をしているのかはすぐに伝わってきている。

 あまり友達が多いわけでは無かったけれど、高校卒業を目前にして真也たちをはじめとする友達たちとカラオケにでも行こうと誘われていたから。


 しかしこの日………約束の時間に、彼が友達たちと会うことはなかった。



「本当にやるのね。」

半ば呆れた声で、秋美が言った。

「仕方ないでしょう………命令なんだから………。」

分かった口調で、春菜は答える。

一台の黒いワゴン車が道に止まっていた。窓ガラスはフルスモーク。一般車両と同じナンバープレートが取り付けられているが、この車は海軍の工作用の車だった。その車の中で、双子の姉妹が話していた。

「こんな物は要らないけど………」

「当たり前でしょ!」

春菜と秋美は、軍から支給されている拳銃ベレッタを腰のホルダーから取り出すと、前のナビシートに座っている男の工作員に手渡す。

「よろしいんですか?」

銃を渡そうとする二人に、彼は聞いた。

「相手は民間人の高校生だから………あなたたちも、穏便に済ませてちょうだい。」

春菜がそう言うと、

「分かりました。」

と彼は答える。

「暴れるような事は無いだろうけれど、一応は気をつけて穏便にしてちょうだい。」

秋美がそう付け加えると、

「………分かりました………。」

と彼は答えた。


「ターゲットはまもなくそちらの前を通ります。」

他の位置で監視している工作員から無線で連絡が入る。

「あと10メートルほどです。」

雅が角を曲がり、リアのスモークガラス越しにその姿が見えた。

「ジャマー入れて」

「了解」

秋美の指示に春菜は答える。春菜は自分のPCSを操作して、雅のPCSのシステムをアクセス不能にさせる妨害をした。


「あ………あれ?」


 春菜と秋美たちが乗った車のそばで、雅が立ち止まった。突然、PCSの回線がすべて切れて、電源も切れてしまったからだ。こんな事はいままでに一度も起きたことはなかった。雅がポケットからPCS本体を取り出そうとしたとき、

「ごめんなさいね………」

と彼の背後が春菜がつぶやき、彼の後頭部から首筋にかけてを右手でチョップした。




「どう、彼の様子は?」

「まだ気絶してるみたいね。」

液晶モニタの前で、監視している部屋をみている姉妹がいた。

「もう2時間がたつわ。」

秋美が左手の腕時計をみながら言った。女性兵士用だから、すこしは華奢にはなっているけれど、それでも女性が使用するには無骨なデザインの軍からの支給品である。二人は拉致するために雅を気絶させたしたあと、直ちに車に雅を乗せ彼に鎮静剤を投与していた。

「おかしいわね………そんなに強力なはずは無いけれど。」

横須賀の基地に着いたのが30分ほど前のことだった。

「とにかく、彼が起きるのを待ちましょう。」

「ええ。」


 時刻は、すでに正午を過ぎていた………



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