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名探偵を丸裸! シャーロック・ホームズ大事典  作者: 髙橋朔也 編著
ホームズの概要
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ベーカー街221B

 ホームズは長編『緋色の研究』で、ワトスンと同居を始めます。ワトスンは長編『四つの署名』でメアリー・モースタン嬢と結婚して同居は終わりましたが、ホームズはそれからもベーカー街221Bにて生活を続けます。


 現在に至るまでホームズファンなどから、ベーカー街221B()てに手紙が送られます。今ではこういう手紙は、シャーロック・ホームズ博物館に配達されます。


 このシャーロック・ホームズ博物館はベーカー街239に建てられていますが、市に認められて『221b SHERLOCK(シャーロック) HOLMES(ホームズ) CONSULTNG(コンサルティング) DETECTIVE(ディティクティブ) 1881-1904』という青色のプレートが飾られています。


 このプレートはホームズがいたことを記念していて、1881-1904、とあります。ホームズ博物館の玄関先は人気の撮影スポットになっているようです。


 当時はホームズの住む『ベーカー街221B』という住所は存在していませんでしたが、1921年にヨークプレイス、1930年にアッパー・ベーカー街がベーカー街と合併(がっぺい)されて『旧アッパー・ベーカー街41』が『ベーカー街221』となりました。


 合併でベーカー街221になった場所には、アビ・ナショナルという会社の本部ビルである『アビ・ハウス』が建っていました。


 この銀行には当時からホームズ宛ての手紙が届けられており、その手紙の返事をするためにアビ・ハウスは『ホームズの秘書』を(やと)いました。


 ホームズ博物館はそういう手紙は博物館に届けてほしいと争いましたが、2005年にアビ・ハウスは立ち退き、2006年にアビ・ハウスは不動産開発会社アビリティ・グループに売却。


 跡地は現在は賃貸(ちんたい)高級マンションとなっていて、これでホームズ博物館にホームズファンからの手紙が届くようになります。


 ちなみに、このホームズ博物館が建つベーカー街239は『旧アッパー・ベーカー街32』であり、ベーカー街221より三軒ほど隣りだそうです。




【ホームズが住むベーカー街221Bの本当の所在地】

 延原(のぶはら)(けん)訳『シャーロック・ホームズの帰還』(新潮文庫)の本があります。この本には(というか、翻訳本ならほとんど)訳者本人の解説があります。


 延原さんの『シャーロック・ホームズの帰還』の解説には、本頁にはちょうどいいことが書かれていました。引用します。


『1930年ごろにドクトル・ブリグズというシャーロッキアンが、ホームズとワトスンが共同生活していたのは、現在の111番の家であろうと発表した。この理由の一つとしてこの博士は、その家の正面にカムデン・ハウス(「空家の冒険」参照)というのが実在することを挙げている。』


 と、上のようなことが書かれています。『「空家の冒険」参照』とあるので、早速『空き家の冒険』で該当部分の描写を引用してみましょう。


 短編『空き家の冒険』で、ホームズはワトスンに『ここはカムデン・ハウスだよ。そら、僕たちの家のま向かいにあったろう?』と言っています。『僕たちの家』は『ベーカー街221B』のことです。


 タイトルにもなっている『空き家』とは、この『カムデン・ハウス』のことです。


 ということは、ホームズ達が住んでいたのは現在の『ベーカー街111』ということになります(諸説あり)。


 延原さんは、ドイルが実際にベーカー街を視察してから書いたかは明らかではないと言っていますし、ドイルの間違いだと考えるのが妥当です。


 他にも、ホームズの住む下宿の場所については説がありますが、どの説も決め手に欠ける状態です。




【ベーカー街221Bの特徴】

 ベーカー街221Bは下宿(げしゅく)で、大家はハドスン夫人です。


 その名前は長編『四つ署名』で初めて出てきますが、登場は長編『緋色の研究』からです。その時は『下宿の女主人』としての描写しかありませんが、次作『四つ署名』で『ハドスン夫人』と呼ばれるようになります。


 これは、ドイルが長編『緋色の研究』を書いた時はシリーズ化は考えておらず、思いのほか話題になってから『四つの署名』を書いたためです。『四つの署名』でシリーズ化となり、設定がより強固となりました。


 ハドスン夫人は短編『まだらの紐』、短編『第二の汚点』、短編『青いガーネット』では名前付きで登場します。しかし、短編『オレンジの種五つ』では『下宿のおかみ』としか記されていません。


 また、短編『ボヘミアの醜聞(しゅうぶん)』では一度だけ『ターナー夫人』という人物が料理を運んでいますが、これがなぜなのかというのはわかっていません。


 リチャード・ランセリン・グリーンは『シャーロック・ホームズ全集 第3巻 シャーロック・ホームズの冒険』にて、ドイルは短編『空き家の冒険』の原稿でターナー夫人と書いた部分をハドスン夫人に書き直しているために同様の書き間違いだと述べています。


 ホームズの本場であるイギリスのBBCによって製作されたドラマ『シャーロック』では、ターナー夫人は221Bの隣人という設定になっています。


 ハドスン夫人は短編『空き家の冒険』でホームズの手伝いで罠を仕掛けたり、短編『瀕死(ひんし)の探偵』ではホームズが瀕死だとワトスンに急いで伝えに来ています。


 話しを戻して、ベーカー街221Bの『B』は二階を表しています。ベーカー街221の一階には大家・ハドスン夫人が住んでおり、階段で二階の部屋に上がってくる描写がたびたびあります。『緋色の研究』では犯人がベーカー街221Bまで『あがってきた。』と書かれています。


 なお、この階段は短編『ボヘミアの醜聞』で、ホームズが見るのと観察するのとの違いをワトスンに説明する際に、何百回と見た階段を何段か知っているかとホームズが尋ね、知らないと答えたワトスンに、ホームズは十七段だと言って、見るのと観察との違いを()きました。つまり、十七段あるわけです。


 ベーカー街221Bの内観については、『緋色の研究』第一部の第二章『推理学』冒頭で『そこは居心地(いごこち)のよい寝室二つと、気持よく家具も備えてあり、大きな窓が二つあって、明るく風通しのよい大きな居間(いま)一室とからなっていた。』となっています。


 ホームズは短編『マスグレーヴ家の儀式』で、ベーカー街221Bの部屋の壁に、拳銃を撃ってヴィクトリア女王の略号である『V.R.』の文字を刻みました。これはベーカー街221Bの大きな特徴となっています。


 ベーカー街221Bの内観及び外観は前述したシャーロック・ホームズ博物館に行ったり、写真を見たりするのが良いでしょう。


 ホームズ博物館は正典のベーカー街221Bの部屋を再現していて、壁には『V.R.』の文字がありました。


 ホームズ博物館の写真は、広告欄下のランキングタグのところにリンクが貼ってあります。日本シャーロック・ホームズ・クラブ関西支部のスイスとイギリスの旅行写真があり、そこにホームズ博物館の写真もあるので見てください。


 それと、ロンドンにあるパブ(居酒屋(いざかや))である『ザ・シャーロック・ホームズ』の二階にもホームズの居間が再現されているようで、1951年の英国博覧会(はくらんかい)で展示されたものが二階に移設された、とのことです。


 ちなみに、前述したアビ・ハウスの建物内に英国博覧会の時に実物大のホームズの居間が再現され、それが『ザ・シャーロック・ホームズ』の二階に移設されているんです。




【ホームズの隠れ家】

 日本シャーロック・ホームズ・クラブ仏滅会にて、西浦寛さんの『ホームズのアジトに関する考察』というものが発表されました。


 短編『黒ピーター』に、ホームズはロンドン市内の各所に少なくとも五カ所の小さな隠れ家を持っていた、とあります。


 このことから隠れ家は、住まいのあるベーカー街よりも、事件が多発した東のシティ地域の方にあり、またロンドンから遠く離れた事件現場近くにもあることがわかります。


 他にもホームズにとって隠れ家は変装・避難所であり、事件捜査にはコストがかかったので協力者がいたことなどがわかります。


 西浦さんは、ホームズの隠れ家の場所を正典の記述から推理しています。



●スレッド・ニードル街のウィルスンの質屋

●ニュー・ゲート街近くの変装向けの(セント)バーソロミュー病院

●変装・犬の扱いに慣れたランベス橋の近くのシャーマン老人の家

●中心に位置するトテナム・コート街近くのウォレス夫人の下宿

●トテナム・コート駅に近いユダヤ人の質屋

●ペル・メル街のマイクロフトの家

●ワトスンの家

●ラングデール・パイクの(セント)ジェームズ・ストリート・クラブ

(セント)・ジョーンズウッドの家

●コヴェント・ガーディン劇場の控所

●ハイド・パーク近くのパークレーン



 上記のような場所などが隠れ家として挙げられています。

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