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名探偵を丸裸! シャーロック・ホームズ大事典  作者: 髙橋朔也 編著
ホームズ関連エッセイ
50/53

シャーロキアン

【定義】

 シャーロキアンの定義とはなんでしょうか。Weblio辞書による定義だと、ドイルによるホームズを主人公とする一連の推理小説の熱狂的な()()()()()()、とのことでした。

 まあ、あながち間違ってはいないでしょう。シャーロキアンの集う団体として歴史上最初に結成された、アメリカのベーカー・ストリート・イレギュラーズに入会するには何らかのホームズ研究をするなどの功績がなければいけません。

 もっとも権威のあるベーカー・ストリート・イレギュラーズへ入会するためにホームズ研究をしなければいけませんし、シャーロキアンはホームズの研究をしている者だという定義も否定することは出来ません。

 しかし、私的にはWikipediaによるシャーロキアンの定義の方がしっくりきます。Wikipediaによる定義だと、ドイルが書いたホームズシリーズの主人公シャーロック・ホームズの熱狂的な()()()のようです。

 日本シャーロック・ホームズ・クラブの入会条件は、以前は論文を書くか研究書を一冊読むものでしたが、現在は会費さえ払えば入会条件はありません。正典の全作品を読破していなくても入会は出来ます。シャーロキアンという言葉をもっと簡単に使っても良いのかもしれませんね。



【名称】

 ホームズファンの名称は、本作では『シャーロキアン』を採用していますが、他にもシャーロッキアン、ホームジアン、シャーロッキアーナ、シャーロッコロジー、ドイリアン、ドイロッキアン、ワトソニアンなどの名称もあります。

 シャーロキアンとシャーロッキアンのどちらが正しいのか。本作ではシャーロキアンの表記で統一していますが、日本シャーロック・ホームズ・クラブの会員などの本格的にホームズが好きな人達は『シャーロッキアン』を使っている印象を受けます。

 日暮雅通さんはサイトにて、『シャーロッキアン』という表記は『シャーロック』から派生した用語であって『シャーロク』とは言わないので、サイトでは『シャーロッキアン』で統一していると言っています。

 ホームズ研究書・解説書のタイトルも基本的に『シャーロッキアン』の表記が使われています。例を挙げると、『シャーロッキアンの放浪三昧』『シャーロッキアンへの道』『シャーロッキアンの優雅な週末』『シャーロッキアンは眠らない』『シャーロッキアン翻訳家最初の挨拶』『われらロンドン・シャーロッキアン』などです。

 最近では私も『シャーロッキアン』と使うようになりましたが、本作では『シャーロキアン』とさせていただいています。



【シャーロキアン団体】

 架空の人物であるにも関わらずたくさんの本が書かれたりするホームズにはファンクラブが存在します。もっとも権威のあるシャーロキアン団体はアメリカのベーカー・ストリート・イレギュラーズであり、日本には日本シャーロック・ホームズ・クラブがあります。

 ベーカー・ストリート・イレギュラーズに初めて入会した日本人は、日本のシャーロキアンの草分け的な存在と言われる長沼(ながぬま)弘毅(こうき)さんです。

 上記のようなシャーロキアン団体に入会するのは|ハードルが高いと思われがちですが、日本シャーロック・ホームズ・クラブに入会条件は特にありません。日本シャーロック・ホームズ・クラブのサイトにも、入会に際して正典六十編を読む必要はないと書かれています(しかし他の会員との会話についていけなくなる、とも書かれていますが)。

 シャーロキアン団体に入会するのが敷居が高いと思われる理由について、水野雅士さんによると長沼弘毅さんの『シャーロック・ホームズの知恵』が原因のようです。

 この『シャーロック・ホームズの知恵』は日本で初めて書かれた本格的なホームズ研究書であり、このシリーズは九冊まで続きます。

 北原尚彦さんによると、長沼さんのホームズ研究書は九冊の後半にいくにつれてマニアック度が増していくようで、『シャーロック・ホームズの知恵』が一番バランスを取れているとのことです。しかし長沼さんのホームズ研究書は九冊全てが絶版であり、『シャーロック・ホームズの知恵』は九冊中もっとも入手難易度が高いです。

 話しを戻して、『シャーロック・ホームズの知恵』には欧米のシャーロキアンがお互い同士の会話で正典の引用をすると書かれています。これを読んだ人がシャーロキアン団体の入会に抵抗(ていこう)を覚えるのは納得ですね。

 ちなみに田中喜芳さんは『ホームズ全集』『少しの時間』『少しのお金』を『シャーロッキアンの三種の神器(じんぎ)』とし、少しの時間でホームズ全集を読んだり少しのお金でホームズ研究書を買ったりすることを表しているようです。



J(日本)S(シャーロック・)H(ホームズ・)C(クラブ)

 日本シャーロック・ホームズ・クラブは『ベイカー街通信(BS通信)』と『ホームズの世界』を、近畿(きんき)一円を中心とするホームズファンの集まりである日本シャーロック・ホームズ・クラブ関西支部は『WEST(ウエスト) END(エンド) JOURNAL(ジャーナル)(WEJ)』などを発行しています。

 毎月発行される『ベーカー街通信』には、ホームズ関連の書籍やDVDなどの発売情報、映画やテレビの放送予定、各種イベントの情報、クラブ公式イベントの参加者募集といった情報が載っています。

 年に一回発行される『ホームズの世界』は、自由投稿部門にホームズ研究、パロディやイラストなどの創作、イギリス旅行記などが掲載され、資料部門ではその年のクラブの活動報告、全国大会やセミナーのレポートなどが掲載されています。

 日本シャーロック・ホームズ・クラブに入会すると、その年の『ホームズの世界』が購入出来ることは言うまでもなく、一部在庫切れの号はありますがバックナンバーも購入可能です。

 上記以外に、毎年発行ではありませんが特別配布物(通称・おまけ本)があります。会員の共同研究をまとめたものが多く、『《シャーロック・ホームズ物語》(新潮文庫)固有名詞索引』『《シャーロック・ホームズ物語》(新潮文庫)人名索引』 『ホームズ、ドイル文献目録』『〈ホームズ物語〉名前の事典』などのホームズ研究を進めるのに非常に便利でありしかも市販の研究書には載っていないデータが収録されている資料が数多くあります。

 その特別配布物の中で、『シャーロック・ホームズ言葉のデータ集』と『実用シャーロッキアナ便覧』はシャーロキアンとしては持っていたいものになります。

 前者、『シャーロック・ホームズ言葉のデータ集』は新潮文庫のシャーロック・ホームズ全集から『地位・職業』『企業・商売』『動物・植物』『小道具』『英国の地名』などという言葉を取り出して、どの頁に載っているのかをまとめたものです。ドイルの原文表記も併記(へいき)されていて、索引の超進化版のように考えていただければわかりやすいです。

 後者、『実用シャーロッキアナ便覧』は発行された1999年時点までに日本で出版された全てのホームズ研究書の書誌情報と解題、感想をまとめたものです。絶版のために入手しにくいホームズ研究書も多数掲載されていますが、どのような研究テーマが載っているのかわかります。

 私も『シャーロック・ホームズ言葉のデータ集』があるとホームズ研究が楽に進められるな、とは思うものの商業出版物ではないため入手困難です。日本シャーロック・ホームズ・クラブの会員になればそのようなものが手に入るのでしょうが、私自身も入会は敷居が高いと感じています。

 小林司・東山あかねご夫妻が日本シャーロック・ホームズ・クラブを創立した経緯について、日本シャーロック・ホームズ・クラブ創立10周年記念誌『10年目の挨拶』によると、東山さんが友人を通してベアリング・グールドを訳すことになり、これが後の『シャーロック・ホームズ ガス燈に浮かぶその生涯』となります。その本の後書きにて小林さんと東山さんがホームズ研究に興味を持った方を(つの)ったところ毎日一通から二通のペースで手紙が届き、一ヶ月も経つ頃には約五十人からの便りをいただいたようです。

 そして1977年10月1日、ホームズ研究に興味を持ったおよそ五十人が集まって日本シャーロック・ホームズ・クラブが正式に発足。第二回の集いではすでに機関誌『ホームズの世界』創刊号が出来上がっていました。

 当初は第二回の集いを行うのは第一回の集いの一年後を予定していたようですが、第一回の集いの参加者が来年まで待てないと言い、結局は第一回の集いの半年後に第二回の集いが行われたということがあったようです。そのために日本シャーロック・ホームズ・クラブの集まりは春と夏の毎年二回あるとのことで、会員さんはやっぱりホームズが大好きなんだと改めて思いました。



【ホームズ研究】

 シャーロキアンは理屈(りくつ)をこねて、正典の矛盾点を解釈しようとしています。また、正典に明記されていることすら疑って掛かり、真相を探ります。どのような理屈をこねた解釈なのかは、本作を読んでいる人ならばわかると思います。

 深読みをし過ぎるとよく言われるシャーロキアンですが、解釈に困っている矛盾している点も多々あります。その一つに、短編『三人ガリデブ』で挙げられていたハイデルベルク人があります。このハイデルベルク人は1907年にドイツのハイデルベルク近くで発見されているのですが、『三人ガリデブ』事件の発生は1902年となっています。

 1902年にはその存在が未確認だったハイデルベルク人が登場してしまっていて、これにはシャーロキアンも困りますね(笑)。

 日本で戦後商業出版されたホームズ研究書・解説書は海外翻訳本を含めて百冊を超えるとのことです。私の計算したところ、ドイルについてを主として書かれた本を除いてもホームズ研究書・解説書は百冊を余裕で超えていました。しかし残念なことに、そのほとんどは絶版となっています。

 シャーロキアンの主な研究テーマは水野さんの『シャーロッキアンへの道』に書かれていて、その研究テーマがどの研究書の何頁に書かれているのかがわかるので便利です。

 6月18日、猫らてみるく様より本作にレビューをいただきました! ありがとうございます!


 次回は『長沼弘毅』を投稿します。

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