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名探偵を丸裸! シャーロック・ホームズ大事典  作者: 髙橋朔也 編著
ヴィクトリア朝イギリス
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移動手段

【馬車】

 自動車は開発段階であり、街の交通のほとんどは馬車でした。

 現在のタクシーの役割を果たしているのが(つじ)馬車、バスの役割を果たしているのが乗合馬車です。

 成功者のステータスシンボルのように見なされたランドー型馬車は高い値段でした。当時この馬車の値段は220ポンドであり、現在の日本円に換算すると約1166万円です。車幅の広い二頭立ての馬車などは貴族などが使います。

 上記したような馬車などを走らせたのが御者(ぎょしゃ)です。ネタバレになりますが、長編『緋色の研究』の犯人は御者でした。

 当時、馬車による人身事故が絶えませんでした。それがモリアーティ教授の犯罪に使われた可能性があります。『正典の謎』の章の『ジェームズ・モリアーティ教授』の頁でくわしく触れています。

 イギリスが産業革命したお陰で、これら馬車や鉄道に乗れるようになりました。それ以前、地方に行くためには郵便馬車か個人の馬車に乗るしかありませんでした。



【自動車】

 ガソリン自動車の原型は1880年代にドイツで生まれ、十九世紀から二十世紀初頭にかけて急速に技術開発が進められました。1908年にアメリカのフォード社がT型フォードを発表し、自動車の大量生産と大衆化が進んで馬車に取って代わりました。

 1914年に発生した事件である短編『最後の挨拶』では、ホームズとワトスンが自動車に乗っている唯一の物語です。当時の自動車は運転が難しく、故障しやすいです。それを乗りこなしていたワトスンは、自動車を直すような知識を持ち合わせていたことになります。



【自転車】

 十九世紀後半のイギリスでは、前輪が大きくて後輪が小さい自転車が主流でした。しかしバランスが悪かったため改良が進められ、1870年代に前輪と後輪が同じ大きさの自転車が開発されました。

 1888年にダンロップ社が空気入りタイヤが開発され、同じ頃にチェーンによる駆動(くどう)も実用化されました。ホームズの時代には、今日(こんにち)よく目にする自転車の原型が完成していました。

 これによって、サイクリングが流行したようです。



【鉄道】

 鉄道発祥の地がイギリスであり、1825年に鉄道が世界で初めて開通しました。鉄道が出来てからは地方へ高速移動が可能となりました。ホームズも事件現場へ向かう際は鉄道を利用しました。

 1830年には、産業革命の中核となっていた工業都市マンチェスターと原料・製品の輸出入に適した良港リヴァプールの間に公共の鉄道が敷かれ、これが成功を収めます。これを切っ掛けに、イギリスでは鉄道建設が盛んになりました。

 当初は馬による牽引(けんいん)も行われていたようですが、1833年に蒸気機関車へ一本化されます。と言っても、蒸気機関車に牽引されていたのですが。

 1859年には、イギリスの鉄道の総延長が1万マイルを超えました。『1マイル=1.60934キロメートル』なので、1万マイルは1万6093.4キロメートルです。

 また、面白いことがあります。ロンドンに駅は当然ありますが、日本の『東京駅』のような首都ロンドンの名前を(かん)した『ロンドン駅』という駅は存在しないようです。このことについて松下(まつした)了平(りょうへい)さんは、イギリスの鉄道は全て私鉄として民間会社の手で始まったため一番最初にロンドンに乗り入れたターミナル駅を『ロンドン駅』と呼ぶのは(はばか)られたようで、これを『ユーストン駅』と名乗って以来、鉄道各社はそれぞれ自社のターミナル駅を『ロンドン駅』と名乗るのはおこがましいと考えたかもしれないですが、今となっては知るよしもないと言っています。

 短編『白銀号事件』では、ホームズが鉄道列車に乗っている際に、時計を取り出して列車が時速53マイル半だと推理しています。どのような方法で割り出したのかは明記されておらず、様々な研究者によっていろいろな説が(とな)えられています。くわしくは『正典の謎』の章の『「白銀号事件」の謎』で触れています。

 本頁で扱うのは、本当に時速53マイル半を出せるのかということです。53マイル半をキロメートルに直すと、86.09969キロメートルになります。

 これから当時の鉄道の最高時速について話しますが、その数字は『白銀号事件』が発生してから十年程度は経過しているようで、ホームズ達が乗っていた鉄道とは少し違うかもしれません。

 カレドニアン鉄道のフォーファーとパースの鉄道の線路は32マイル半あり、ここを三十一分で結んでいました。平均時速は59.09マイルです。キロメートルに換算すると、59.09マイルは95.0959006キロメートルになります。平均的に約95キロメートルが出せるわけではないので、実際の最高時速は100キロメートルを優に超えているようです。

 グレイト・ノーザン鉄道のグランタンとヨークの間は82マイルほどあり、キロメートルに直すと約133キロメートルになります。この区間を一時間三十一分で走破したようで、平均時速は54.52マイルで、54.52マイルはキロメートルに換算して87.7412168キロメートルです。

 グレイト・イースタン鉄道の最速列車は54.4マイルで、キロメートルに直すと87.548096キロメートルになります。

 ノース・イースタン鉄道の最速列車の54.18マイル、キロメートルに直すと87.1940412キロメートルです。

 ミッドランド鉄道とロンドン・アンド・ノース・ウエスタン鉄道の最速列車は53.5マイルで、『白銀号事件』の鉄道と同じ時速です。

 ホームズとワトスンが『白銀号事件』で乗ったグレイト・ウエスタン鉄道の最速列車の平均時速が52.72マイルで、キロメートルに換算すると84.8444048キロメートルになります。ただ、この最速列車は107マイルを走行していました。キロメートルに換算して172.19938キロメートルになります。そして、ホームズとワトスンが乗った列車は改軌(かいき)前のブロード・ゲージの時代なので、平均時速52.72マイルより速かったようです。

 つまり、列車が時速53マイル半ほど出てもおかしくないということになります。

 明日は『実在する凶悪犯人』を投稿します。

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