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名探偵を丸裸! シャーロック・ホームズ大事典  作者: 髙橋朔也 編著
ヴィクトリア朝イギリス
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職業

【大臣の給料】

 総理大臣は無給で、外務大臣の給料が引き合いに出されます。以下、大臣の給料です。

外務大臣─────年5000ポンド

陸軍省大臣────年5000ポンド

内務省大臣────年5000ポンド

大蔵大臣─────年5000ポンド

インド省大臣───年5000ポンド

植民地大臣────年5000ポンド

商務省大臣────年2000ポンド

自治省大臣────年2000ポンド

農業省大臣────年2000ポンド

建設省大臣────年2000ポンド

 これらを日本円に直してみましょう。5000ポンドは約2億6500万円、2000ポンドが約1億600万円になります。年にすごい貰っていますね。



【家庭教師】

 イギリスでは十九世紀に、女性家庭教師が富裕(ふゆう)層の間で流行しましたが、学校教育が普及するにつれて、衰退(すいたい)していきました。

 まともな階級(富裕層など)の女性が働かないのが常で、一家の財産が底をついたりして働くことを余儀(よぎ)なくされたその女性達は、当時は体面を保てた家庭教師をしました。女性の職業で労働者や召使いは学歴が不要でしたが、立場も低いのです。

 上流階級などの子供達は高等教育を受け、庶民などは教育すら受ける者が少ないです。それが原因で、上流階級の女性は家庭教師くらいしか出来なくなります。というのも、当時のイギリスは高等教育を受けた女性が手に出来る職業はほとんどなく、玉の輿(こし)に乗るのが理想でした。

 上流階級の女性が結婚せずに独立して生活する唯一の方法が家庭教師でした。

 モリアーティ教授は男性ですが、数学の家庭教師をしていました。教わるのが恐怖ですね(笑)。

 この女性家庭教師ですが、先生ではありますが家族ではなく、使用人ですが召使いではないという立場であり、孤独でした。子供の前では模範的に振る舞い、上品さも求められます。しかし給料はわずかです。当時から女性は生きづらい世の中だったということです。



【タイピスト】

 一見して庶民の職業のような気がしますが、当時の女性の花形的な職業だったようです。

 短編『花婿失踪事件』で、タイピストの依頼人が『一枚ニペンスで、一日に十五枚から二十枚は打てる日もございますから』と言っていますが、仮に一日20枚打てるとして、一日に40ペンス稼げます。240ペンス=1ポンドなので、40ペンスは6分の1ポンドであり、六日で1ポンドとなります。

 ホームズは『年収60ポンドなら独身女性はかなり良い暮らしが出来る』と言っていて、タイピストの依頼人が年に60ポンドを稼ぐには360日間毎日20枚をタイプライターで打たなくてはいけません。このことから日暮雅通さんは、タイピストが花形だとしても、稼ぐのに苦労することはどの職業も変わらないのかもしれないと言っています。

 60ポンドは約318万円で、1ポンドは約5万3000円です。40ペンスは約8920円になります。つまり、一日に約8920円、六日で約5万3000円、年収約318万円ということです。



【配管工】

 前頁で述べた通り、当時はガス灯が普及(ふきゅう)し始めました。鉛管(えんかん)工事人やガス管取り付け業者などは、当時の稼ぎ頭になったようです。短編『犯人は二人』では、『景気のいい鉛管工』とあります。

 短編『ボヘミアの醜聞』では、配管工用の発煙筒が使われています。

 上述したように、庶民と言えどもそれなりの職種の人物達が正典に登場していました。



乞食(こじき)

 短編『唇の捩れた男』では、乞食ヒュー・ブーンが物乞いをして、十日に25ポンド以上、年に700ポンド以上は稼いでいます。よほど悪い日ではないなら、一日に2ポンドは稼げていたようです。25ポンドは約132万5000円、700ポンドは約3710万円、2ポンドは約10万6000円です。

 つまり、一日約10万6000円、十日には約132万5000円、年収が約3710万になります。かなり稼いでいますね。ただ、アヘン窟『金の棒』の経営者に口止め料としてかなり払っているようですので、これより少しは下回るでしょう。

 また、短編『オレンジの種五つ』で、語られざる事件の一つとして『アマチュア乞食団の事件』があります。ブーンとの関係が指摘されています。ただ、ブーンがアマチュア乞食団に所属していたという記述はありません。

 このアマチュア乞食団は、家具屋の地下倉庫で贅沢(ぜいたく)会合(かいごう)を開いていました。

 ピーター・カニンガムの『Hand(ハンド)-Book(ブック) of(オブ) London(ロンドン)』には『乞食協会(Mendicity Society)』、チャールズ・ディケンズの『Charles(チャールズ) Dickens(ディケンズ) London(ロンドン) Guide(ガイド)』には『物乞い抑制(よくせい)協会(Society for the Suppression of Mendicity)』という団体が、ロンドンの『Red(レッド) Lion(ライオン) Square(スクエア)』にあった、と書かれています。

 両協会は、乞食らに食べ物などをあげていたようです。また、両協会は20世紀初め頃まで存在していました。

 ちなみに、ブーンが乞食を始めるまでは記者をしていて、週に2ポンドしか稼いでいませんでした。

 明日は『地理学』を投稿します。

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