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名探偵を丸裸! シャーロック・ホームズ大事典  作者: 髙橋朔也 編著
ホームズの論文
33/53

番外編 その他の論文

【仮病】

 ホームズは短編『瀕死の探偵』にて、仮病についての論文を書きたいと言っています。『瀕死の探偵』ではホームズは病であると偽っていて、ワトスンにはクーリー病だと伝えていました。

 クーリー病はスマトラから入ってきたもので、伝染力もあり、体は痙攣(けいれん)し、これに(かか)ったら絶対に助からず、痛みを(ともな)わずにひどく苦しんで死ぬようです。

 その時の仮病の方法については、(ひたい)にワセリンを()り、散瞳(さんどう)させるためにベラドンナを眼に滴下(てきか)し、頬骨(ほおぼね)に紅をつけ、蜜蝋(みつろう)のかさぶたを(くちびる)に付けるというものです。

 ただ、実吉達郎さんによるとベラドンナは毒物なので、間違っても点眼(てんがん)しないことです。ベラドンナはナス科の多年草で、猛毒(もうどく)のアルカロイドであるアトロピンを含みます。

 アルセーヌ・ルパンも瞳孔(どうこう)拡張(かくちょう)させて変装をするためにアトロピンを点眼しています。

 額に塗ったワセリンは、現在なら薬局などで手に入ります。ワセリンは石油から採れる半固体状の(ろう)で、通常は外傷に対する塗り薬として使われています。理科の実験とかでも、葉っぱの蒸散(じょうさん)を防ぐのに使った記憶があります。

 また、ホームズは時々半クラウン金貨のことや、牡蠣(かき)、その他関係ないことなどを口にして、幻覚状態の演技(えんぎ)もしています。

 作者であるドイルは元々は医者だったため、正典にも病についての描写などがたびたび見られます。この仮病の方法についても、ドイルの得意分野です。



【タイプライターと犯罪の関係】

 ホームズは短編『花婿失踪事件』にて、タイプライターと犯罪の関係について論文を書きたいと言っています。『花婿失踪事件』では、事件解決の鍵をタイプライターが握っています。下に引用しましょう。


『「タイプライターは妙なものでしてね。打った文字には、人の書いた肉筆文字とおなじに、それぞれ個性のあるものですよ。器械がまったく新しければ別ですが、さもなければ、どの二つをとってみても、打った文字がまったくおなじというのは一つもありません。ある文字がほかのよりも磨滅(まめつ)がひどいとか、片寄って磨滅しているとかするものです。そこであなたのこのお手紙ですが、どれを見てもeの字がすこしぼやけていますし、rは耳のところがすこし欠けています。特徴は全部で十六ありますが、この二つはとくにわかりやすいのです」

「事務所の通信はみんなこの器械で打つのですから、むろんすこしは損じてもいましょう」

 ウィンディバンクはその鋭い小さな眼で、じろりとホームズを見た。

「そこで、たいへんおもしろい問題があるのですがね、ウィンディバンクさん。いったい私は、タイプライターと犯罪の関係について、小論文をもう一つ書こうと思っているのですが、これはかねてからすこしばかり研究している題目なのです。で、ここに失踪したホズマー・エンゼルさんから来たという手紙が四通だけありますが、みんなタイプで打ったものです。ところが、どの一つを見ても、eがぼけ、rの耳が欠けているばかりでなく、その拡大鏡で見ていただけばわかりますが、さっき申した十六の特徴が、そっくり現れているのですよ」』


 ホームズはウィンディバンクのタイプライターで打たれた手紙とエンゼルのタイプライターで打たれた手紙の十六の特徴が一致していることから、二人は同一人物だと推理しました。

 また、タイプライターは媒介(ばいかい)法によって暗号に使用することも出来ます。タイプライターは記号と数字が同じキーに記されているので、記号で数字や文字を表すことが出来るのです。しかし、媒介しているものがタイプライターだとわかればすぐに解読されてしまいます。

 タイピストについても、『花婿失踪事件』には書かれています。依頼人の袖口(そでぐち)に二本の筋の跡がついていて、そこからホームズはタイプライターを使うときに袖口をテーブルに押しつけるからタイピストだと推理しています。

 明日から『ヴィクトリア朝イギリス』の章に入り、『アヘン窟「金の棒」』を投稿します。

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