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名探偵を丸裸! シャーロック・ホームズ大事典  作者: 髙橋朔也 編著
ホームズの概要
3/53

ホームズの正しい服装

 シャーロック・ホームズの服装は鹿(しか)()(ぼう)とインバネスコートとして知られ、今日(こんにち)に至るまで探偵の代表的な服装になっています。


 しかし、ホームズの服装は作中でくわしく言及はされておらず、挿絵(さしえ)で定着した誤ったものです。


 そのことも、ある程度は知られたことなのですが、では実際にホームズはどんな服装をしていたのか。それが問題になります。


 まずは実際の服装の説明の前に、誤った服装の説明からしましょう。




【鹿撃ち帽 (ディア・ストーカー)】

 そもそも鹿撃ち帽とは、イギリスで狩猟(しゅりょう)の時にかぶる男性用の帽子のことです。当時は狩猟時以外はかぶらないので、その点に注意が必要となります。




【インバネスコート】

 インバネスコートとは、(そで)が無く(すそ)が二重の外套(がいとう)です。外套とはオーバーをややこしく表した言葉のことで、私も初めて外套という文字を見た時は読めませんでしたし意味もわかりませんでした(笑)。




【正しい服装】

 ホームズシリーズの短編『白銀(しろがね)(ごう)事件』の作中で、以下のようなことが書かれています。


『シャーロック・ホームズは、耳当て付き旅行帽を(かぶ)り、気迫(きはく)に満ちた(するど)い顔で、パディントン駅で調達した新しい新聞の束を夢中で読みふけっていた。』


 ホームズは『白銀号事件』で、郊外(こうがい)に向かうべく列車に乗る際に耳当て付き旅行帽をかぶっていました。


 耳当て付き旅行帽とは、帽子の両脇に耳が()れているような帽子のことです。


 また、ホームズは挿絵などでパイプをくわえていますが、そのパイプは曲がってくねくねしています。このパイプは『キャラバッシュパイプ』と言って、ホームズの時代には存在しません。


 ホームズが実際にくわえていたパイプは『ビリヤードパイプ』という名前で、柄が真っ直ぐと伸びた長いパイプです。


 地方へ向かう際に『旅行用のマント』に身を包んでいた記述があり、ロンドンの街中ではフロックコートを羽織ることが多いようです。


 ではフロックコートとは何だ、ということになります。『名探偵シャーロック・ホームズ事典』にはホームズの服装が絵で表されています。それを撮影して載せたいですが、著作権があるので無理です。


 では『名探偵シャーロック・ホームズ事典』を読んでください──ということにはなりません。せっかく読みに来てくれた読者様のために、私が絵を描きました。下の絵のような格好を、ホームズは街中でしていました。


挿絵(By みてみん)


 どうでしょうか? 何となくイメージが湧きましたか? ホームズは麻薬に手を出したりしていますが、立派なイギリス(英国)紳士なので、場所によって服装を変えています。


 上の絵は街中での服装なので、気をつけてください。手を後ろに回して持っているのはステッキです。英国紳士はステッキを出歩く際に持ちました。


 旅行などに出るときは前述の通り、耳当て付き旅行帽です。


 ベーカー街221Bの部屋でくつろいでいる時は灰色と紫色、青色の三色ガウンを愛用していました。


挿絵(By みてみん)


 そして、上の絵がホームズが愛用するビリヤードパイプです。陶器(とうき)製のものや、木製のものもあります。ホームズは場面に応じて使い分けました。


 考えにふけったり精神を集中させる時はブライヤーのパイプや黒い陶器製のパイプ、議論する時は(さくら)(ざい)のパイプを使います。




【誤った服装のホームズを最初に描いた人物】

 これは余談ですが、ホームズの誤った服装を()()させたのは画家のシドニー・パジェットとして知られています。


 定着させたのはパジェットで間違いありません。しかし、()()にホームズに鹿撃ち帽をかぶらせたのはパジェットでもドイルでもないそうです。


 短編『四つの署名』が雑誌『リピンコッツ・マガジン』で掲載されたことは有名で、その後にいくつかの雑誌にも『四つの署名』が掲載されました。


 イギリスの雑誌『The() Bristol(ブリストル) Observer(オブザーバー)』もその一つで、この雑誌の挿絵では口髭(くちひげ)をたくわえたホームズが鹿撃ち帽をかぶっています。


 ちなみに、ホームズが口髭をたくわえている描写は正典では無いですが、ルパンシリーズのホームズは口髭をたくわえている描写があります。


 もし口髭をたくわえて鹿撃ち帽を被っているのがホームズなら、ワトスンはインバネスコートを着ています。どちらがホームズだとしても、初めてホームズが誤った服装になったのはこの雑誌ということです。


 ジョン・H・ワトスン協会のサイトで調べてみたところ、該当することが書かれており、そこには『Sidney Paget was not the first one to draw Sherlock Holmes with a deerstalker.』とあります。


 日本語訳をすると『シドニー・パジェットはディア・ストーカーのシャーロック・ホームズを最初に描いた人ではない。』とあります。これには驚きですね。


 面白そうだったのでWikipediaの(あら)探しをするために『シドニー・パジェット』を調べてみると、『なおパジェットはホームズに鹿撃ち帽とインヴァネス・コートを与えた最初の人物だと考えられている。』という一文がありました。『()()()()()』と書いてしまっていますね。


 Wikipediaはこのようなことがよくあります。誰でも編集出来るので、間違いが多々あり、参考文献には適しません。


 本作ではWikipediaを参考文献にしていないので安心してください(間違いがない自信はありませんが)。どこぞのWikipediaよりは間違いが少ないと思います。


 最後が何となくWikipediaをバカにしたようになってしまってすみません。決して私はWikipediaをバカにしているわけではありません!

【追記(2022年8月9日)】

 ジャガイモ探偵様いわく、どうも鹿撃ち帽は狩猟時ではなくても普段着のように被るようです。


 イギリスの庶民院議員キア・ハーディは国会で鹿撃ち帽を被っていて、アイコンだったこともあったとのこと。


 現在調査中です。どこかの本などにそのような記述がないか調べています。皆様からも情報を求む!

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