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名探偵を丸裸! シャーロック・ホームズ大事典  作者: 髙橋朔也 編著
正典の謎
24/53

「白銀号事件」の謎

【白銀号】

 まずは失踪(しっそう)した白銀号(馬)の説明からやりましょう!


 名馬・白銀号の先祖は実在する名馬・Isonomy(アイソノミー)とされています。


 ですが、誤植によりSomomy(ソモミー)という実在しない馬になっているものもあり、ソモミーとなっている原文が以下の通りです。


“Silver Blaze,” said he, “is from the Somomy stock and holds as brilliant a record as his famous ancestor.(後略)”


 上の原文を訳すなら、下のようになります。


「白銀号は」彼は言った。「ソモミーの血統(けっとう)であり、彼の有名な祖先と同じくらいの素晴らしい記録を持っている。(後略)」


 ホームズの言葉なのですが、ちゃんと『ソモミー』となっています。ただ実際はアイソノミーの血統になります。


 また、白銀号は(ひたい)から鼻先にかけて流れ星のような白い(はん)があり、『白銀号』という名前の由来となっています。


 この(唯一(ゆいいつ)目立つ特徴である)白い斑が消されたため、白銀号はなかなか見つかりませんでした。


 白銀号は栗毛(くりげ)、つまり栗のような色の毛です。


 ちなみに十返舎(じゅっぺんしゃ)一九(いっく)の『東海(とうかい)道中(どうちゅう)膝栗毛(ひざくりげ)』の『膝栗毛』は自分の膝を馬として使う徒歩旅行を意味しています。




【時速53マイル半の計算方法】

 ホームズが『白銀号事件』で鉄道列車に乗っている際に、時計を取り出して列車が時速53マイル半だと推理しています。


 ホームズいわく『この線の電柱は60ヤードごとに立っているので、簡単に計算出来る』そうですが、半マイルまでの精度で正確に計算するのは簡単なことではないようです。


 この計算方法については様々な説がありますが、窓の外の物体と時計を同時に見ることは出来ず、必ず誤差(ごさ)が生じます。


 この計算方法について、平賀三郎さんは誤差があまり生じない素晴らしい説を(とな)えています。


 ホームズの乗っていたグレート・ウエスタン鉄道は当時は高速で走っていたらしく、長さ36フィートのレールを使用していました。


 10秒間にレールの()ぎ目の音が10回聞こえたら360フィート走っているので、時速に換算すると24.5マイルになります。10秒間に聞こえたレールの継ぎ目の音が1回多ければ、時速にして2.5マイルを足すようです。


 音は耳で聞き、時計は目で見るので簡単な計算で時速が割り出せます。この計算だと、10秒間に21.4回音が鳴って時速53.5マイルということになります。


 このことについて紀伊国屋渡舟さんは、22回目の音が鳴る直前で10秒が経過し、想像力を働かせて時速53.5マイルという数字を割り出したのだとしています。




【カレーはアヘンの味をごまかせるのか】

 短編『白銀号事件』では、アヘンがカレーに入っていたことにより眠らされている間に犯行が行われました。カレーはアヘンの味をごまかせるようです。


 そのカレー料理で、本当にアヘンの味をごまかすことが出来るのか。


 それを確かめるためには、当時のカレーの味を再現する必要があります。味の再現こそ、本頁の本題と言っても過言(かごん)ではありません。


 すると、『ホームズおもしろ事典』に当時(ヴィクトリア朝時代)イギリスでのカレー料理の簡単な作り方が載っていたので、それを再現しながら作ってみました。


 当時のカレー料理(の味)を再現して作るには、『ホームズおもしろ事典』によるとカレー粉から作らなければなりません。


 当時はカレー粉も売っていたらしいのですが、当時の味の再現のためにカレー粉から作りました。


 カレー粉の作り方は、『①ターメリック15グラムとガランガル15グラムを()いたものを()ぜる。②カイエンヌ・ペッパーと米の粉50グラムを加える』そうです。


 ターメリックはウコン、カイエンヌ・ペッパーは唐辛子(とうがらし)粉末(ふんまつ)のことです。


 私は辛いのが駄目(だめ)なので、唐辛子は少ししか入れませんでした。


 ガランガルはショウガと形も味も似ていると書かれていたので、私はショウガで代用しました。完成したカレー粉が下のようなものです。


挿絵(By みてみん)


 そしてついに、カレー料理作りに取り掛かりました。


 まず、チキンをぶつ切りにし、塩ひとつまみと水を使ってチキンが(やわ)らかくなるまで()込みます。


 チキンは『白銀号事件』だとマトンですが、私は苦手のため同じく羊肉(ようにく)であるラムを使いました。


 ラムのぶつ切りが軟らかくなったら、そのラムをタマネギとニンニクをバターで(いた)めたものとカレー粉と一緒に交ぜます。


 そこにラムの煮汁を入れて、全体に火が通るまでフタをして煮ます。これで完成です。


 お好みでレモンかオレンジ、とあるので、レモン汁を加えました。下にあるのが、私が再現して作ったカレー料理になります。


挿絵(By みてみん)


 このカレーの味は、想像していたより美味しかったです。


 しかし、後味が強く、アヘンが混ぜてあっても気付かないわけです。アヘンを口にしたことはありませんが、変な味のものを混ぜてもバレないと思いますよ。


 私は『白銀号事件』を読んだ時、アヘンの味をカレーでごまかせるのかと疑問に思いましたが、食べてみたらわかります。後味が非常に強烈(きょうれつ)でした(笑)。特にウコンです。


 まあ、この文章を読んでいる人でも、そこまでのことはやらないでしょう。ただ、もし食べたいなら作ってみると良いです。身に()みて、アヘンの味がごまかせることがわかります。


 ちなみに、ツイッターなどで調べてみると、『白銀号事件』のようにカレーに粉チーズを振りかけて『アヘン!』みたいツイートがかなりありました。流行(はや)っているのでしょうか?

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