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名探偵を丸裸! シャーロック・ホームズ大事典  作者: 髙橋朔也 編著
ホームズの概要
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ホームズのユーモア

 ホームズは冷徹(れいてつ)な人物、などというイメージがあります。しかし、ユーモラスな行動もたびたびします。


 短編『赤髪組合』では、依頼人ウィルスンに対してユーモラスな発言をします。


 ウィルスンが赤髪組合の事件解決の依頼をホームズにすると、『こいつは少々毛いろの変った話じゃないか、え?』と言っています。


 その場にいたワトスンとウィルスンは、どちらとも笑っていません(ウィルスンに関しては事件が気になって笑わなかった可能性もあります)。


 短編『青いガーネット』では、ガチョウを調理しに行ったピータースンが『鵞鳥(がちょう)が、ホームズさん、鵞鳥が……』と言いながらベーカー街221Bに戻ってきます。


 これにホームズは『え、鵞鳥がどうした? 生きかえって台所の窓から飛んでったとでもいうのかい?』と応じます。


 これももちろん誰も笑いません(これも、ピータースンはガチョウが気になって笑わなかった可能性もあります)。


 この冗談(じょうだん)について、シャーロキアンで正典の翻訳家として知られる日暮(ひぐらし)雅通(まさみち)さんはあまりうまくない冗談だと言っています(ただし、ホームズが冗談を言うのは珍しい、とも言っていました)。


 短編『花婿失踪事件』でも、ホームズはユーモラスな行動をしています。依頼人のウィンディバンクはホームズに、犯人を捕まえろと言います。それにホームズは応じます。引用しましょう。



『「(前略)あの男が捕まるなら、どうぞ捕まえてください。そして捕まったら、私に知らせてください」

「承知しました」ホームズはつかつかと戸口へ行って、ドアに錠をかけた。「それではお知らせしますが、私はもう捕まえましたよ」』



 この物語ではウィンディバンクが犯人なんです。これも一種のユーモアと言えましょう。この行動は、私はうまいなと思いました。面白い演出だと私は考えます。


 ちなみに、このホームズの行動に、ウィンディバンクは『えッ、なに? どこに?』と言って、最初はとぼけました。このユーモアには当然誰も笑いません(笑ってはいけない状況です)。


 短編『空き家の冒険』で、ワトスンの前に姿を現す時に、ホームズは老人に変装します。そしてワトスンが振り返っている間に変装を解き、ワトスンを気絶させるほど驚かせました。


 短編『海軍条約文書事件』では、重要な文書を取り返してほしいという依頼人を朝食に招き、(ふた)付きのお皿に重要な文書を入れて出し、依頼人を驚かせ(喜ばせ)ました。


 このユーモラスな行動には朝食を作ったハドスン夫人が一枚噛んでいます。


 短編集『シャーロック・ホームズの冒険』で、訳者の延原謙さんは下のようなことを言っています。



 さて、ホームズ物語の第一短編集であるこの『冒険』のなかでは『赤髪連盟』『唇の(ねじ)れた男』『まだらの紐』などがことにすぐれているといわれている。その説に異存はないが、前二者のユーモアには限りなき愛着をおぼえる。不気味なので有名な『まだらの紐』のなかにすら私はユーモアを感じる。そのほか随所(ずいしょ)に見られる作者のユーモアが、ホームズ物語の愛読せられる大きな要因をなしているのであろう。



 延原さんもホームズのユーモアや、ドイルのユーモアを感じていたということです。


 これらのことから、ホームズはユーモラスなことを好んでいるのでしょう。誰も笑わなくても、ホームズが継続的にユーモラスな行動をしているのがその証拠です。


 他に、とんちの利いたホームズの言葉が短編『高名の依頼者』で出てきます。


 依頼に来てから手袋を外さず握手もしない依頼人に対して煙草をすすめ、自分はパイプをやる、と言っています。


 これは依頼人に手袋を外してはどうかと暗に(うなが)す言葉らしいのですが、依頼人には伝わってはおらず、ホームズは無意味に終わりました。


 このことについて、在野(ざいや)のホームズ研究家である水野(みずの)雅士(まさし)さんは依頼人の方が鈍感(どんかん)だったと言っています。

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― 新着の感想 ―
[一言] イギリス人は「ユーモア」を重視しますから、ホームズも「紳士の嗜み」として、ジョークを口にしていたのではないでしょうか? ブリティッシュ・ジョークは、イギリス文学や演劇文化を通じて培われてきた…
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