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モルとの出会い

モルとの出会いは突拍子もないものだった。

行き倒れのモルにたまたま僕が遭遇した。


・・・だけではすまなかった。


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「なんなんだよこのいかついのは・・・

ゴブリンみたいな見た目してるけど力が似ても似つかないよぉ~」

よくわからない気を失ったケガ人を引き連れて逃走中である。

周りには自分たちの身代わりに砕け散った木々がまき散らされていた。


薬草採取の依頼を受け、町の近くの森を探索していた時に

意識を失ったケガ人を見つけたのだ。

普通の冒険者や旅人ならここまでのケガを負う前に

まず死んでいる。そんなレベルのケガを負っている。

事の経緯を聞き、問題がある話ならギルドに報告を入れるべきだと思ったのだ。


だが、彼を担ぎ上げ、その場を離れようとしたときに運悪くそれと遭遇してしまったのだ。

ゴブリンに属するようにも見えるのだが、その見た目は普通のゴブリンとは似つかない屈強さがある。

上位種か何かだろうか?しかしこんなものが町の近くで見つかるなんてとんでもないことだぞ。

「・・・・・ぅ・・ぁ・と・ぁい・・・・・」

「おい、気が付いたか?」

ケガを負ったその男が声にならないうめきを上げている。

「・・・何が起こっているんだ?」

「それはこっちが聞きたいよ」

この男はきっとこのゴブリンっぽいのに襲われたのではないのか?

そう考えるのがしっくりくる。


僕は男と話しながらもそのゴブリンっぽい奴の死角を縫うように

木々の隙間を縫うように移動していた。

それは目以外にでも視覚がついてるか

大方のこっちの位置を把握しているかのように追ってくる。


「対象物の位置を感覚でおおよそのレベルで読み取っているな。このままではジリ貧だぞ。」

「言われなくてもわかってるよぉ。」

男は少し間をおいて・・・

「少しくらいなら使えるか・・・ すまないがあいつと少し距離を離してくれないか?」

「どうするつもりだい?」

「ちょっとした"とっておき"を使う。まあ一発勝負になるが駄目だった場合はあきらめて心中してくれ。」

「ちょっと勘弁してよぉ~」

その時は仕方がない、後ろ髪を引かれる思いにはなるとは思うが自分一人で

全力で逃げさしてもらうよ。誰だって死にたくはないもん。




「このくらいで充分だ、降ろしてくれ。」

男は降ろすとヨボヨボと歩き出し地面に膝と右手をついた。

「構造はこんなもんか。これなら大丈夫だろう。」

少しして派手な音と木片をまき散らしながらそれがやってきた。

「飛んで火にいる夏の虫とはこのことだな。」

男がそう言うとゴブリンの足元に大穴が開いた。

「まずは自由落下と行こうじゃないか。」

ゴブリンはそのまま大穴へと落ちて行った。だが・・・

「おいぃぃぃっっっ、壁に張り付いてるよぉ~~っ」

穴をのぞいてみたら穴の壁面にしがみ付いていた。

元々がいい勢いでこっちに向かってきていたのだ。勢いそのままに張り付いたのだろう。

「さて・・・」

男は自分の胸の前で両手を合わせ・・・

「・・・"精製"『連撃 要石』」

そう唱えると宙にかなりの大きさの岩がいくつも現れ、屈強なゴブリンめがけて降り注いだ。

しばらくその岩は現れ続けゴブリンもろとも穴の中へと消えていった。底の見えない穴の中へと・・・

はっきり言ってあり得ない光景である。普通の専属魔法使いはおろか国のお抱え魔法使いですら

これだけ大量の岩を出し続けられるか怪しいものだ。

そもそもがこの開かれた大穴の時点で異常なのだ。土魔法の使い手もこれを見れば

真っ青になるほどの光景だ。だがそれだけには収まらず、

「はい、ドンっと」

穴はふさがれ、まるで名の事も起きなかったかのような地面に戻ってしまった。

「まあこんなもんだな。これだけやれば流石に圧死だろう。さて、恩着せがましいようだが休息する場所を提き・・・」


そう発すると男は倒れてしまった。


「なんなんだよ、今日は・・・なんて日だ・・・」

僕はギルドへの納品を後回しにして男を自分の家へと運んだ。


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今になって思えばなかなかパンチのある話である。

男、すなわちモルを拾ったらカイブツに襲われ

拾った男もカイブツな魔法使い・・・

もっとも、本人曰く「魔法よりスキルが得意」だ、そうだが。


そしてその時は後始末も大変だった。

必死子いて町まで行くとモルは

「なるべく誰にも見られたくない」

と、言い出しまずは町へとこっそりと忍び込んで家にモルを寝かせた。

ケガがひどかったので医者に見せたかったのだが本人が拒否、

更に僕の応急処置も「こいつには効果がないから場所だけ提供してくれたらいい」と言われた。

仕方なくモルは家に捨てておいて町に正門から入り直しギルドに報告、

そこでなぜか受付嬢のメアニさんに何故か危ないことはなかったのかと疑われもした。

そして家に帰ると知らないうちに地下が増築されていたりとなんじゃこりゃ状態。


そして落ち着いてから話されたそれが正直嫌だったなぁ・・・





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「・・・つまりは力を使い過ぎてガタガタになっちまったのさ」

「とんでもないんだな、その"目"は」

彼のただれたオッドアイ、左目の"観測者の青"と右目の"執行者の赤"

それぞれがかなりの負荷を体にかけるそうだ。

左目はまだそこまでだったらしいのだが、右目がかける負荷が酷く両目の同時使用で

その負荷が桁違いに上がるとのこと。

だがそれでも尚その力を使わなければいけなかったのだ。

「元々俺は自分自身に"欠け"がある状態なんだ。それ故に力を使うにも非効率な使い方しかできないし

訳あって直ぐにはその欠けを何とかすることもできないんだがそんな中なかなか酷いもんを

見つけちまった。それが"因子"を持たされた存在。即ち、こないだのゴブリンのような存在だ。」

端折って話すとあんな特殊な個体が意図的に作られ野に放たれているらしいのだ。

こんな特に争い事もない平穏な町に放たれちゃあ対抗する戦力もなく直ぐに地獄絵図と化してしまう。

「それでだ、すまないが力を貸してくれないか?」

「・・・どうしてそうなるんだよ。大体、僕は何もできなかったじゃないか。」

「そこでだ・・・」

一旦言葉を区切り、こう切り出した。

「俺の力を一時的に貸す。」


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僕は借りることになったのだ。その力を。

本当はやりたくはなかったのだが、放っておけばこの町も危ないのだ。

それにそれ相応の謝礼も出してもらえるとのことだ。

仕方なくではあるが、僕は彼の代行になった。

期限は彼が"ある程度"回復するまで・・・

それ相応の時間がかかるのだろうな。




僕は力はいくつかあるうちの中で負荷が少なく必要なものしか借りなかった。


一つは"ソウルドライヴ"

この力は自らの魂から発させる力で魔法や気といった周りが使ってる力とは違うものだそうだ。

故に力を使った痕跡をたどることが困難で尚且つこれ自体が魔法等と比べると消耗が少ないとのこと。


そしてもう一つが観測者の青だ。

この目は適合者なら負荷も少なく済むらしいが僕にはあまり良くは無かったようだ。

この目にはいくつかの能力が備わってるそうなのだが負荷の事を考えて"観測"しか使っていない。

その観測というのは特定の"何か"を観測することができ、因子の有無も調べることが可能なのだ。


あとは必要に応じて僕自身が彼の中から必要な力を引き出すようにしている。

大体のことはこの二つで事足りはするけどね。





そんなこんなで僕のなんてことない日常は非常にスリリングなものに変貌したのであった。

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