最近のお仕事
僕の名前はハルテオ、通称ハルだ。
冒険者になるのが夢で日々努力して何とか冒険者になることはできた。
・・・が、冒険者にはランクがあり
Fから始まりEDCBAと上へ上がり英雄級ともなるとSやSSとなるそうなのだが
自分はかろうじてCランクまで昇格できた、程度の一般冒険者である。
日々簡単な・・・、とは言え、自分程度には結構大変な討伐や採取依頼をこなし
何とか自分の家を持てるまでには稼げたよ。
すごく大変だったけどね。
ごくごく普通な一般冒険者としての生活が続くものだと思っていた。
そう、あの時から一変してしまった・・・
「おはよーございまーす」
「おはようございます、ハルさん。朝帰りですか?」
いかがわしい勘違いをされそうな返しをしてきたのは受付嬢のメアニさんだ。
そう、ここは僕の町にある冒険者ギルドだ。
「そんなこと言わないで下さいよ。まわりに勘違いされちゃうじゃないですか」
「あら、なにか後ろめたいことでも?」
「からかわないでくださいよ~」
今自分が受けている依頼は普通なら日帰りで終わるものだ。
ただ、今回は量が量だったので少し時間が必要だった。
まあ、それだけではないのだが。
「大丈夫ですよ。あなたのことは皆さんド真面目な人だとわかっていますから」
メアニさんはそう言うとフフフっと笑った。
「まったく、そうやってからかわないで下さいよ。これ、依頼の品です。」
そう言っていくつか持っている鞄から"依頼の品"を出した。
この鞄、なかなか便利な魔道具で魔法にて収納量に手が加えてありかなりの量を詰め込むことができる。
故に自分が出した品の量はかなりの物になった。
メアニさんは近くに置いてあった紙の山から書類を一枚抜き取り、それを見比べ検品を始めた。
「はい、依頼通りの種類の"薬草"がそろってますね。確かに受け取りました。」
そう言うと慣れた手つきで記入、押印していく。
「では、依頼はこれにて完了、余りの薬草はどうされますか?」
採集依頼は指定された以上の量を持ち帰る場合いくつかの選択肢がある。
依頼主が有るだけ買い取ると提示している場合は買い取ってもらえるし
そうでなくてもギルドに買い取ってもらうことも可能だ。
ただ今回はそのつもりはない。
「ああ、すいませんいつもの癖で。今回は全部持ち帰りますね。」
「・・・、なにかお困りごとでもありましたか?」
「常備薬の作り方を教えてもらおうと思ったんですよ。
たまには変わったことでもしてみようかと思ってた所に、ちょうど教えてくれる人もいたので」
・・・・・・
メアニさんの視線が痛い。
「・・・まあいいです。ただし、困りごとがあるのなら絶対に相談してくださいね!
ギルドが相談に乗れる案件でなくとも私が相談に乗りますので!」
(・・・、やっぱ鋭いよな~、メアニさん)
そんなことを思いながら家へと帰る。
・・・つもりだったが
(もうひと仕事だな)
町はずれ
普通に魔物なども見かける場所である。
しかし、ここら辺では"見かけることのない"オークが一匹。
(・・・システムリンク)
おそらく"因子"を持った個体なのだろう。
事が起きる前に処分しなければならない。
変質されたものが普通の冒険者と遭遇なんて事態は悲劇でしかない。
(・・・観測者の青)
この左目・・・、"観測者の青"はどうも相性が悪いらしい。
目と頭に軽く痛みを覚える。手短に対象の状態をこの目で読み取り使用をやめる。
もう発現する寸前じゃないか。今のうちにさっさと討伐だ。
(ソウルドライヴ)
つながりで"アシスト"を受け自らの魂から力を発させる。
力を全身に行き渡らせて強化、全力で地面をけりつけオークに接近する。
「・・・ゥゥウグウガガアァァァ」
「・・・一撃で仕留めてやるよ」
オークの肉体が肥大化したかと思うと目にもとまらぬ速さで拳を放ってきた。
もちろんその一撃をよけ、こっちもお返しにと拳を一撃向ける。
「・・・インパクトッ!」
相手に触れるのと同時にドンッと拳から力を放つ。
相手のオークは木っ端微塵である。
「よーし、こんなもんだな。証拠も残ってない。さて、帰るか~」
人に知られてはいけない裏の顔、そんな所かな。
訳有の始末屋。"アイツ"のせいでこんな事しなくてはならなくなってしまった。
今回は魔物だったが必要となれば人すらも処分対象である。
僕は普通の冒険者として生きれたら充分だったのに・・・
だが、事が事、故に見て見ぬ振りもできないのだ。