5.無能職の町娘になる!?ー前編ー
与えられた職によって俺らは己の適性を見極められる。戦士の職を与えられたものは身体能力が跳ね上がり冒険や護衛などの仕事に就くものが多くなる。
魔術師の職は魔法適性が高く魔法を操る能力が飛躍的に上がるため、常人では修得不可能な魔法を覚えることができる。そのため魔術師は国からも重宝され様々な分野で活躍の場を与えられる。
ちなみに前世の俺の職である盗賊は一般的に外道職と呼ばれる。外道職は神から祝福を与えられなかった者に授けられがちな職だ。ようは様々な事情で神官から祝福を与えられなかったものが、発現しやすい職となる。
ただ俺の場合はしっかりと神官から祝福を受けたにも関わらず外道職を授けられた。
これはどういうことかというと俺は先天的に神に仇名す者だということだ。
まあ、ひらたくいえば犯罪者予備軍だ。正規の手続きをとったにも関わらず外道職を与えられることなど歴史を紐解いてもほんの数人しかいない。そしてそいつらは例外なく国家を揺るがすような大事件を起こしている。
つまり俺は悪さなど何もしていないのにそんな奴らと同格だと勝手に烙印を押され、親には祝福を受けた数日後に魔の森に捨てられた。
まったくもって心外だ。
前世で俺がやったことと言えば、神聖騎士団をボコボコにしたり、俺にたてついた盗賊共を皆殺しにしたり、王家の秘宝を盗んだこと位なものだ。
そんな善良な俺を職が外道職というだけで犯罪者扱いするのだから、やはり職がその者に与える影響はとてつもなく大きいと言えるだろう。
他にも職は大工などの技術職と呼ばれるものや村人などの無能職と呼ばれるものなんかもあり職の種類は多種多様、千差万別だ。
俺が前世に想いを馳せていると目の前でユミルが嬉しそうに俺の顔を見つめて口を開く。
「ふふ、ギルちゃん明日がたのしみだね。私たちどんな職がもらえるのかな♪ この町の領主としてみんなの役に立てるような職だといいんだけどなぁ」
「町のためになる職か。相変わらずユミルはこの町が大好きだな。まあ無能職とかでない限りこの町の次の領主はユミルになるよ」
「えへへ~そうかな」
そういってだらしなく口元を緩める。ユミルは小さい頃からこの町の領主になることを夢見てきた。
ユミルはどんくさいところもあるがそれでも間違いなくこの町の領主になるために日々努力してきたことに嘘偽りは一切ない。
「ただ今まで以上に色んなことを勉強しなきゃいけないだろうけどな。寝る暇なんてもうないかもしれないぞ」
「もぉ~ギルちゃんのいじわる。そういうギルちゃんはどんな職がいいとかあるの? やっぱり騎士の家系だし戦士系統か魔術師系統の職がよかったりするの?」
「いや、特にこだわりはないな。外道職以外ならなんでもいい。強いていうなら適当な技術職とかもらってまったりとした生活を送りたい」
「もうギルちゃんは昔から私には勉強しなさいと言う癖に自分はそういう楽したいとかまったりしたいとかばっかり言うんだから」
俺の言葉にリスのように頬をふくらませてむくれるユミルに俺はしれっと一言言葉を返す。
「俺はユミルより勉強できてるだろ?」
「うっ、そうだけど」
まあこれは決してユミルの学力が低いってわけじゃない。むしろユミルは平均よりもできるくらいだ。
ではどういうことかというと俺には前世からの引継いだ知識がある。だから子供の頃から歳不相応な学問を先んじて学んできたのでその分大きなアドバンテージがあるってわけだ。
それに龍脈の暴走で過去の知識が失われたせいで昔と比べると今の学問は非常に簡単だしな。
「まあ、とにかくお互い明日が良い日になるといいな」
俺がそう笑いかけると、ぐぬぬと唸っていたユミルは急にキラキラと瞳を輝かせ
「うん!」
と力強く頷いた。
そして俺達は忘れたくても忘れられない俺とユミルの人生の全てを変えた神告の日を迎えたのだ。
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