13.アレイスター学園入学試験ー中編ー
「雰囲気悪いな」
闘技場について数十分、俺は思わず言葉を漏らした。
闘技場はA~Fの会場に分かれており、現在進行形でそれぞれの会場で受験生同士が模擬試合をしている。
俺はAの会場の待合室で自分の名前が呼ばれるのを待っているのだが待合室の空気がすこぶる悪い。
理由の一つは次の試験で名門アレイスターへ入学できるかどうかが決まるというプレッシャーである。
アレイスターへ入学出来たら将来はとてつもなく明るいものとなるだろう。いわば次の試験に合格できるかどうかは人生の大きなターニングポイントとなるわけだ。それは緊張もするしピリピリした空気も周りに伝わる。
まぁ、それはいい。まだわかる。だがこの空気を形成しているもう一つの理由、それが問題だ。
俺は視線に気づかれないように気を付けながらその元凶をチラリと見やった。
すると肩口まで伸ばした金色の髪をもつ長身の男が親の仇でも見る様な目で俺をガン見していた。
そう、先ほど俺が投げ飛ばした男アルベルトもまた俺と同じA会場での試験組だったのだ。
さっきはどうせもう今後会うこともないだろうと思って適当にあしらったがこうも早く再会することになるとは思いもしなかった。
冷静に考えてみたらもしこの男が合格したら同じ学校になる可能性すらあるんだよな。
平穏を目指して転生したのに同じ学校の奴とわだかまりを残したら平穏から遠のくことになっちまう。ちょっと迂闊だったな。
実際問題アルベルトが待合室に入って俺を見つけた時からずっと一言も言葉を発することなく俺のことを凝視し続けてくるし。
一言も会話をしていないから得られる情報は少ないがただ一つ分かってるのは確実にアイツが怒ってるってことだ。目がお前は魔眼持ちかっていうくらい真っ赤に血走ってやがるし。
まったくもってめんどくさい。こっちから何かアクションを起こしても良いが控室で揉め事なんて起こしたらそれこそ一発で不合格になってもおかしくない。
「しょうがない。大人しく早く俺の名前が呼ばれることを願うしかないか」
銀色の前髪を指でいじりながら溜息を吐く。
『それでは受験番号A-10 ギルハート・フォルネウスさん闘技場に来てください』
そんな時ようやく拡声器越しに俺の名前が控室に響いた。
その呼び出しに安堵の気を吐き、ようやくこの重苦しい空間から抜けられるのかとほっと胸を撫でおろす。
「はぁ、ようやくか。これでこんな居心地の悪いとこともおさらばだぜ」
前世ではこんなに人が密集してる空間に長時間滞在することなんてほとんどなかったし、自分に敵意を向けてくる相手に手を出さずに無視するっていうのも慣れないことだからほんと落ち着かなかったんだよな。
俺はアルベルトと目を合わさないように気を付けながら控室から出るためにドアのノブに手を掛けた時、俺の対戦相手の名前が会場に響いた。
『受験番号A-1 アルベルト・アルバニア君闘技場に来てください』
思わずアルベルトの方を見ると俺と目があった瞬間にニタァっと陰湿な笑みを浮かべた。
「ふふ、こんなにも早く願いが叶うとは私の祈りが実ったか。先ほど受けた恥辱アルバニア家の名に懸けてその身体に刻んでやる」
やっぱり世の中そう簡単に思い通りにはいかないよな。
俺は重い溜息を付いた後、湿った視線を背後に感じながら控室の扉をあけ闘技場に向かった。
ほんとに人生ってやつは難しい。




