1.かつて最強と呼ばれた盗賊
白髪の男が駆ける。
「追えー!!絶対にあの大罪人を逃すな!!」
「この俺が大罪人か。ほとんどがお前らがきせた濡れ衣だろ。そもそも毎回つっかかってくるのはそっちだろうが」
白髪の男の後方に鬼の形相をした数多の賢者や聖剣士、魔導士が差し迫っている。
時折その背に放たれる魔法はどれも一撃必殺の威力が秘められており、放たれる度に大地が震え、空気が割れる。
しかしどの魔法も男を捉えること叶わず、男の口の端に笑みを浮かべさせるだけであった。
「アレはこの国の、いや世界の宝だ!!例え相手が『職の限界を超えた者』だとしても王家の秘宝を盗まれたとあっては我々神聖騎士団の名が泣くぞ!!己の命に代えてもアイツを捕まろぉぉお!!!」
その言葉に世界の頂点に位置すると言っても過言でない者たちが獣のような咆哮を上げた。
そして一斉に渾身の魔法を放つ為の魔力を練り始める。
「チッ、流石にアレは無理だ。本当だったらもっと静かな場所でやりたかったんだけどな」
そこで白髪の男はその足を止め、振り返り右手を眼前に突き出した。
その手には煌々と燃えるような輝きを放つ宝石が握り締められていた。
「こちらを向いたなこの大罪人がッ!その【聖炎の瞳】は我らが王が次なる身体へと生まれ変わるためのモノだ。お前のような奴が手を触れていいような代物ではない。そもそも宝玉の解放の真言は王家にのみ言い伝えられている。お前のような者がそれを持っていたところで宝の持ち腐れだ!!」
「全く人のことを大罪人だのなんだのと。その大罪人にまんまとしてやられたのはどこの騎士団の奴なんだ?罪人以下の騎士団なんて騎士を名乗る資格するなんてないとは思わないか?なあ、騎士の名を語るお遊戯団の皆さんよ?」
白髪の男が鋭く伸びた犬歯が見える程にニイッと口元を歪ませながら笑い声をあげた。
「貴様ぁぁッ!!お前ら放てぇぇぇぇッツ!!」
その掛け声と共に空に稲妻が走り、地に獄炎が広がり、大気は逆巻き無数の刃を形成した。
眼前に神話が如き光景が広がる中、白髪の男は言葉を零す。
「王家のみに伝わる真言か。それはもしかしてこんな言葉か?」
そこで先ほどとは比べ物にならない位に口の端を吊り上げ、異形と呼ぶに躊躇なき程に両目を見開き、唇を震わせた。
「アブドゥ・カトゥブラ・ミ・リ・バース(世界の扉よ開け。我は転生を望みし者なり)」
その瞬間、宝玉から深紅の炎が溢れだし男の身体を包み込んだ。
「バカな!?何故貴様の様な者が真言を知っている!?」
「なんで知ってるかだって。そんなの決まってんだろ。俺は盗賊だぞ。盗んだんだよ。王家に伝わる真言ってやつをな」
その言葉に神聖騎士団が驚愕に顔を歪める。
しかしすぐさまその顔は、本来であれば己が王のみが使用することが許された宝玉を汚されたことに対する嫌悪と憎悪へと塗り替えられる。
そしてその中でも全身を白色の鎧に包むリーダー格の男がその身体を怒りに戦慄かせ咆哮する。
「この大罪人がァッ!!!神の裁きのもとこの世から消え失せろぉ!!【雷神の裁き】!!」
炎の中に消えゆく男に数多の魔法が辿りつくよりも速く、そして桁外れの威力で一条の巨大な雷が解き放たれた。
「いわれなくても消えてやるよ。ただ、一つ気に食わねぇな。一体いつまで俺のことを大罪人なんて名前で呼ぶ気だ?」
そこで消えゆく男は己の脳天に降り注ごうとする神の雷に手を伸ばし、神聖騎士団に向かって吠える。
「いいかよく聞けぇ!俺の名はギルハート・G・ギルガメッシュ!!世界最強の大盗賊ギルハート・G・ギルガメッシュだ!!!覚えておけ三下共が!!!」
そこで男の身体は雷と共に紅蓮に包まれこの世から消えた。
「これでようやく戦いの日々が終わる。さあ、次の命の始まりだ。Are You Ready? 来世の俺」
――――この時ギルハートは知らなかった。次の人生が今世以上に謎と冒険に満ちたものになるなどと。そしてこの世界の真理に自分が辿りつくことになろうとは
よろしければブックマークして頂けるとモチベーションアップに繋がるので助かります。
町娘無双は10話前後から始まる予定です。