這い寄るネ混沌
ギャグは無い。ニャル様もおいでになられません。
ただただこのタイトルを使うと言う電波を受信した結果で、こうなりました。
君は何かの物音に気付き、月明かりの無い暗い山道の脇に佇んでいる、ボロボロに見えるお堂へ、手に持っている光を飛ばす。
しかしそこに物音をたてそうな物は何も無い。だが何も無かったとするには証拠が足りないと判断した君は、そのお堂へ周囲を警戒しながら近付いた。
この場所は近頃、誰も見たことも無いような謎の危険な生き物が住み着いていると噂になっている、とても危険な場所である。
噂では、半分は生き物に食われ、残りの生き残った半分は正気を失い、今までとは全く人が変わった様に何かに怯え、狂い、しまいには命すら落とした者も居ると聞く。
しかし君はこの噂は嘘だと断定し、度胸試しがてらにここへ来てそれを示し、体験談を酒の場で吹聴して酒場の英雄として名を馳せようと目論んでいた。
慎重に近付いた君は、まずそのお堂らしき建物の全景を眺める事にした。
光に切り出されたお堂の壁はやはりボロボロで、ろくな手入れもされていないボロ屋である事が見てとれる。
次に君はそのお堂の周囲を周り、他に異常が無いかと歩き出した。
だがしかし、その歩みは直ぐに止まり、君は警戒してお堂では無い方向を見た所で固まってしまう。
目の前には暗く玉虫色に輝き、ドロドロとうごめき浮遊する、不定形の何かが居たのだ!
ここで君はアイデアロールに成功し、不定の狂気にかられて激しい恐怖症に襲われた。
その恐怖で君は手に持った物と、腰に留めていた皮袋ひとつを落とし、この場から狂ったように走り去った。
~~~~~~~
「にゃ~」
逃げてっちゃった。
私は二本の尻尾をフリフリしながら、首に巻いた【てけ袋】にさっき逃げ去ったお兄さんの落とし物を収納し【深淵術】で出したショゴスっぽいのの片割れを送還した。
ワガハイは猫(又)である。名前はまだ無い。
……これを言ってみたかっただけ。
ごほん。えー……私は剣と魔法の異世界で、なぜか猫又としてこの近辺でよく分からない力を持って生まれました。いわゆる異世界(動物)転生。
自前の術で地面に水を張って、私の姿を確認したら、思いっきりベタベタな三毛猫ちゃん。
この日本のお堂にも見える謎の小屋を拠点にして、なんとなく野良作業と近くの森で狩猟をして日々暮らしている野良猫です。
あ、猫だからってモノローグで「ニャ」なんて付けませんよ?あんなの恥ずかしいだけですから。
そしてどんな力かって?
「にゃ~」(ステータスオープン)って言うと、本人にしか見えないウィンドウが出てくる画面で確かめられるんですよ、ほら。
名前:無し
種族:猫又(仙族)
階位:31
能力
力:S+ 体力:D 速さ:A
魔力:A+ 器用:D 運:C
HP:100% SP: 97%
技能:【猫仙術】【農業技術】【猫又の眼】【ニャン殺術】【指揮能力】【深淵術】
力のS+は明らかに転生特典っぽい。ヨワヨワだった頃には、その力に本当にお世話になりました。
その力で、野良仕事でできた農作物を軽々持ち上げる猫……うむ、化け猫一直線だ。後は、人の喋る内容と文字も問題無く理解できた。ついでに、【猫仙術】を巧く使うと字も書ける。
まだ生まれたばかりの頃は階位が1で、しかも体力と器用がEだったり技能も少なかったりして、ある程度階位が上がるまで苦労しました。
能力だけど、これは階位×アルファベットに対応した係数で、能力値とするステータスみたいでね?階位が10とか違うと、同じEでもかなり能力に違いが出てくるの。
各技能の説明は必要ですか?
【猫仙術】は色々な魔法みたいな物の詰め合わせ。赤猫とか水猫とか舐猫とか、○猫って名前ばかり詰まってる。
【農業技術】は農業に使える魔法やスキルや知識、その全ての詰め合わせ。笑ったのは、地球の日本で一般的だとか言う農業知識も入ってた。知識にはいつもお世話になってます。
【猫又の眼】は鑑定を含む、他は猫又なら持ってそうな眼に関する能力の詰め合わせ。ここまでが初期に持ってた。
【ニャン殺術】は他の猫との縄張り争いや森で狩りをしていたら生えた。凄いよ~、無音で縦横無尽に動き回って、音も無く相手の弱点をガリっと1発。色々便利な詰め合わせ。
【指揮能力】は部下にした他の猫達を使っていたら生えた。
【深淵術】は階位かな?いつの間にか生えてて、使ってみたらビックリの召喚術。今はショゴスっぽいのを2体喚べる。1体は首輪みたいにして首に巻いて、魔法の鞄みたいに使ってる。「てけり・り胃袋」略して【てけ袋】ショゴスっぽいのはなんでも出来るからね。魔法の鞄の真似をお願いしたら、喜んでやってくれてる。
……ん?ショゴスっぽいのの反乱?大丈夫大丈夫。お堂の周りで育ててる農作物の一部とか、狩ってきた魔物の不要な部分とかをあげるだけで色々やってくれるって言ってくれてるから。
SAN値?はははっ。猫には関係無いから大丈夫だよ!
さて、と。今は夜だし、このまま寝たい所なんだけど、まだお客さんがいるんだよね。
さっきの若さで一生後悔するタイプの若者じゃなく、己の欲望の為に無法を働く無頼漢。
なんかここは、侵入すると危険なスポット扱いされていて、その噂を隠れ蓑にしてやろうって感じでよく来るようになったの。
こいつらはね、中々に厄介なの。今は対処できるからそうでもないけど、対処できずにこのお堂を拠点にされると、私の田畑が荒らされるし、折角作った保存食も全部とられるし。
建物内もメチャクチャにされて、泣いたよ。ニャンニャンと思いっきり。頑張って住みやすいよう整えたのが、一晩で御破算。
今晩はイヤな事を思い出して気分が悪いし、八つ当たりさせてもらおうかなって考えてます。
有名な人が言っていたでしょ?悪人に人権はないって。
元はギャグのネタだったみたいだけど、この世界では無頼漢にロクな人権は本当にありません。人の害にしかならないのなら、魔物も同然って認識。
だからヤツ等がどうなったって、誰も悲しまない。
いっちょヤってやりますかね。
~~~~~~~~
君達2人は今後の活動のために、拠点を探していた。
拠点の目星はついている。最近噂の危険地帯だ。
そこに踏み入れると消息不明になるか、おかしくなるか。その二択しか取れない恐怖の地と言われている。
だがそこを拠点に出来れば、どんな悪事を働こうともその拠点に逃げ込めれば絶対に逃げ切れる、そんな安全な拠点になると睨んでいた。
君達は目的の場所に近付いた。今は月の無い深夜で、わずかでも手元の灯りが無いと身動きが取れそうもない。
しかもこの近辺は異様に静かで、近くの森の動物や魔物の遠吠えすら聞こえてこない。なんだか不気味に過ぎると身を震わせた。
軽い焦りを覚えて今夜中に拠点を見付けたい君達は、あまり褒められた策とは言えないが、後で合流する場所を決めて手分けをして探す事にした。
結局君は目的の拠点を見つけられず、気落ちしながら合流地点へたどり着いた。
そして待つ事しばし。だがいくら待っても相棒が戻ってこない。
これは拠点を見つけ、その場所で既にくつろいでやがるな?そう検討を付け、相棒が探していた方向へ体を向けた。
「にゃ~」
背後から急に猫の鳴き声がした。今まで君自身がたてる以外何の音もしなかったこの世界に、音が生まれたのだ。
これに慌てて、後ろを振り向く。振り向く。振り……向けなかった。
己の足が言う事を聞かず、なぜか動けないまま前方へ真っ正面から倒れ込んだ。
君はいったい何者だと、慌てて腕の力で仰向けになってみれば、そこには暗く玉虫色に輝く不定形の何かが、静かに浮いていた。
そしてダイスロールをする暇も無く、君は不定形の何かの奇襲によって、命の終わりを迎えた。
~~~~~~~~
よし、ショゴスっぽいの。いつもありがとう、送還するね~。
はい。こんなモンでして、いつも苦労している訳です。
……あ~、無頼漢はなぜ足が動かなかったのかって?
力:S+ですよS+。コイツで膝より上を【猫仙術】で風の刃をまとわせた、猫の爪でスパーンと。楽勝ですよ、あんなの相手なら。
ちなみに丸呑みした無頼漢ですが、身に付けている物は消化しないで【てけ袋】の方に入れてもらうことにしています。何かに使うかもしれないし。
もっと階位が上がったら【猫仙術】に人化とか増えるかも知れないのも期待して。
あと、中身は食べてもらってる。持っててもどうにもならないしもんね。畑の肥料にしたくもないから。
うん。余計な者の処理が終わったし、猫らしく居眠りを……。
するのは、野良仕事を済ませて、近くの街に潜り込んでからにしようかな。
ふーーっ、野良仕事終了。お日様も出て来て、今から行けば町の朝ごはんのあまりとかに、ありつけるかな~?
猫又で、普通の猫なら毒になる食べ物も平気で食べられるし、尻尾を1本【猫仙術】で見えないようにすればただの猫に見える。
さてさて、誰か美味しい物を分けてくれないかな♪
今日も猫生活を楽しみますか~。
一応元々は、必殺仕○人みたいな稼業をする猫ってのを、書くつもりでいたんです。
お堂の周りで育てた野菜を、無人(猫主人公が寝そべって監視)にて販売する露店を近くの町でやっていて、町で不幸と悪事が渦巻いたら、証拠を集めてさあ仕事。
……でも、そんな筆力と電波受信性能がありませんで、ここまでと相成りました。