プロローグその2 管理局員の驚愕
悪い事は連続で起きてしまうものです。それをどうにかするには流れを断つしかない。
さて、一体何が続くのでしょうか?我が主人公は果たして出るのでしょうか?
本編をどうぞ~
コアタワー165階・ミドルブルー中央管理局所属・第0管理センター
例え貴族であっても知れる者が数少ないこの『存在しない』はずの場所は今混乱を極めている
「観測班の損害報告はどうした!?」
「報告!観測班人員ほぼ全滅!機材の魔道具はリスタートしております!」
「代われる者があるか?後で褒美を出すからさっさと誰かやれ!」
「報告!魔力炉オーバーヒート!稼働率30パーセントを下回りました!」
「修復は?」
「もう人を出しました!でも完全回復には後半時間以上かかります!」
「ッチ、通信復帰は?」
「は!塔内通信の回復まで3分、外部通信は既に修復されました!」
プシュゥ
そんな修羅場に一人の騎士とそれに支えられた男ーー領主ルドヴィークが入ってくる。
「あ!領主様!ご無事で何よりです」
「冒険者ギルドより報告!混沌の大迷宮にてスタンピード発生!」
「規模は?」
騎士の支えで管理室に入って聞いた初めての報告がこんなにも聞きたくないものだとは思わず、更には見る見るうち悪くなっていく連絡員の顔色からあって欲しくない最悪の事態の予感がしてルドヴィークは思わず聞き返した。
(小規模、小規模だと言ってくれ!)
「ランク7.8から8.2とのこと、です」
「「「「!!!」」」」
ランク8とは冒険者ギルドの定義した10ランクある危険度、その3番目危険のシチュエーションだ。この危険度ランクだが、桁として捉えてもいいものだったりする。ランク10とは10桁の人のリソースを動かしてようやく対応できるレベル、ランク8とは8桁の人のリソースが必要、7.8から8.2、それはつまり600万人から1600万人のリソースが必要という事になる。
もしもこれが平時だったら高ランクの冒険者と騎士でほぼ被害無しで対応できるだろうーーだが今、その高ランクの冒険者と騎士の一部が帝都に居る上、覚醒の儀でミドルブルーの魔力リソースが足りていない。質の低い奴を出したところで人的被害が増えるである以上、中高レベル奴を出すしかない。
そうなると今都市に居る高ランクの人材をそれなりに失うかもしれないーー戦争がもうすぐという時期で、だ。それだけでなく、結界が弱まっている今、都市内の者すらも被害を受けてしまう。
それを避けるためには魔力炉を使うほか無い、だというのにその魔力炉は他の件の対応でクールダウン待ち
であればリソースを人から取るしか選択肢がないーーそれは病気をしている者の抵抗力を下げ、治療士の治療行為に影響を与えてしまう最終手段とわかっていながらも決断する他ない。
「クソったれめ!緊急事態ランク5を宣言する!魔法陣でミドルブルー全市民から最大限の魔力を吸い取って結界を強化しろ!」
「は、はい!『ミドルブルー中央管理局より通報です、これより……』
「それと塔内の元凶はどうした?」
「その、観測班が先程の魔力で「報告!コアタワー観測機能復帰完了!」「150階を映せ!」」
「は!空間観測投影魔法【ラプラスの魔眼】、発動!」
被せ気味の報告と命令のやり取りのあと、管理室の壁に魔道具で投影されたのは一見死屍累々とすら言える景色だった。美しい150階空中庭園、そこでは多くの人が倒れて呻いている。
とは言えよく見ると怪我を負っている者は…負傷者7名に死者4名だけだ。
そして画面の中で立っているのはたった四人ーー一人の少女と三人の男だった。
否、正しく言うと少女は立っているのではなく跳んでいる、それも男たちへ、だ。
映し出されたのはまさに少女が男たちを襲おうとしたその瞬間だった
少女の長く明るい白銀の髪は虹色の魔力光を纏っている。色とりどりで万華鏡のような変わり続ける魔力光、でもその中でも一番目立つのはやっぱり白色と灰色だろう。彼女が聖属性と時空属性に最も強い適正を持ち、尚且すべての属性において天才以上の適正を持つだけでなく、量はともかく質において宮廷魔法使い並という証拠だ
同じく変化し続ける虹色のその瞳からはしかし、ちょっぴりだけだが怒りの色が見える。
艶のある黒い生地のシャツにメタルチックの銀色のモノクロシャツ、袖はほぼなく、そのかわりにあるのは機能的なフォームの短い肩掛け。脇の下には二本の革のベルトが斜めにかけられており、それが下のミニスカの両側を留め金で引き止めている。交差したベルトが背中の固定具を固定して、その固定具には今もメイスが挿しているまま。ベルトの両側腰近くの部分にはグレイネーd…じゃなくポーションとかを入れれるであろうポケットとライトセイb…じゃなく短剣を固定できるであろう固定具がある。そして太股には革の固定具が両足に一つずつ、それらには小さなナイフを入れるのにピッタリの収納具がそれぞれ4つ、だが今は空っぽのようだ。首にはメタルチックのアクセサリー(首輪ではありません)、恐らくは急所であるそこを守るためのもの。実はこれらは彼女が数十分前知り合った変な凄腕職人、ベルダからもらったものだ。
だが見る目がある者なら断じて彼女の服を得たばかりの物と同じだなんて言わないだろうーーなぜなら服も、アクセサリーも、髪飾りも、メイスも、彼女の身についている装備の全てから虹色の魔力光(但しルナとは逆に白色と灰色が薄い)が出ている。この世界でも間違いなく五本指に入るであろう名匠、ベルダの傑作は魔力を吸収して変質してしまったようだ。
そしてその足からは金色のオーラーー闘気が吹き出て足場となっており、彼女は子供の身でありなが秒速五十メートルのスピードを出している。
対して男三人は疲れ果てた姿をしている。血を吐き出す両側の二人に口から血が滲み出している中央の一人、三人の髪は白ーー但し、老人のような艶のない乾いた白。背は普通に青年のように真っ直ぐ、でも肌は皺だらけの上、病的な青さ。血管が透って見える彼らはどちらかというと病人ーーそれも危篤レベルのーーだろう。
更に三人の足元には死体が4つ、それもミイラのようになったやつが二人、内側から爆散でもしたかのような悍ましい死体が2つというヤバイ状況だ。
だがここミドルブルーにおいて彼らの最も目立つ所はそれらのどれでもない。彼らの最も大きな特徴、それはその長く尖った耳だ。特に真ん中に立っている男の耳は倍以上長い。
エルフ、それは帝国西南にあるマルク魔導王国の住民だ。総数八百万ぐらいでありながら二億以上の奴隸を支配し、他のすべての種族を見下すかの種族、その上位種、貴族に当たる種族ハイエルフの特徴こそが一般的のエルフの倍以上長い耳である。
そんなエルフの貴族はしかし、ほぼ丸裸のスタイルだった。地面には腐食でもされたかのような金属(?)の欠片がある事や恐らくは服だったものがある事から術式の反動でこうなっただろう。醜い男の裸マントプラス腕輪オンリーの姿など目に悪いわ!(尚、ハイエルフ皆美形です、彼が醜い姿となったのも反動のせい)
「な!あれは、ルナリーナ・マキナか!相手は、ハイエルフだと!?
クソ、弱っているとはいえハイエルフ相手は流石に無謀だぞ!」
弱っているとはいえ、その少ない数で数十倍の人を支配できるエルフのしかも上位種。例え魔力が尽きて体もボロボロであろうとも自然回復する分の魔力だけで音速を超えれるのだ。対して子供でありながら並の戦士をこえるルナだが、全力をだしても秒速五十メートル。戦闘にある程度心得があるものなら結果など簡単に想像できるーーましてやルナは怒りで正気を失ったせいか武器すら抜いていない(様に見える)のなら尚の事だ。
現に相手のエルフ達も余裕の表情で接近してくるルナを見ている。
一瞬後の光景を幻視してしまった管理室の者達が目をつむったり、叫んだり、涙を流したりする中、せめて勇敢なる少女の最後を見届けようとルドヴィークと数人の局員が画面を睨む
嘲笑いを浮かべ、ハイエルフは手をルナへ伸ばした。
刹那
シュパンッズリュ
「「「『『え?』』」」」
画面に写っているのはハイエルフの心臓があった場所にいつの間にか抜かれているルナのメイスが生えた様子だった。
次の瞬間、遅れるようにハイエルフが吹っ飛ぶ。
この何とも酷い絵面はルナが音速の数十倍の速度でメイスを抜き、構え、闘気と魔力を纏い、そして音速を超える速度で突き出した結果だ。
今はまだルナだけが知る彼女のオリジナル戦技、その名前は【瞬突き・零】。いかなる状況でも瞬時で突きという結果を導き出すその戦技は突きをだす瞬間までなら彼女の限界の百倍の速度を引き出せる文字通り一瞬で繰り出す突きだ。
そしてそれに加えてベルダが彼女の装備に付けた特別効果【ファンタムアーム】は幻影を作り出して彼女の手が元の位置にいるという幻覚を作る。あまりにも激しいスピード差と幻覚によって彼女の突きは見えていても錯覚して反応できない物だ。
威力は戦技にしては最弱クラスだが、それでも見た目の三倍、突き出しの速度も本来同じように出すのと比べて一点五倍あるので、硬直や引き戻し不要である事を含めて考えると理論上、殆ど消耗が変わらないのにDPSにして10倍の連撃を繰り出せる計算だ。ゲームだったらチート扱い待った無しのぶっ壊れ技、そのチュートリアルの試し打ち相手はまさに覚醒した後のチュートリアルボス的ポジションのハイエルフなのは果して偶然だろうか?
ハイエルフが七歳の少女に貫かれて吹っ飛ぶ光景を見て自分が夢を見ているのではと疑うルドヴィークと管理局員達、彼らの受難はまだ始まったばかり。(書くとは言っていない)
そして無情にもその必殺技を利用して硬直なしの追撃を残りの二人に繰り出すルナ、彼女こそが我らが物語の主人公である。
かわいい、強い、かわいい、かわいい、かわいい
それってもう最強でしょう?
容赦がない?褒め言葉です。
危機が迫るなか、果たしてルナ達の未来はどうなる?
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今日21時ぐらいでもう一話上げます。
それと今日は第一話の前に設定の置き場を作るのでそれでページがズレるかもしれません、その時はメニューから見てくださいね~