1-13 侵食の魔兎【エクセイザーラビット】その5 悪足掻き
これでエクセイザーラビットも一応は死にました。その代わりざっと2つのフラグが立ちましたがね
昨日も言ってましたが、暫くは更新できません。2/15の夜(26時間制)まで次話を上げる予定ですが、それでも無理でしたら活動報告とツイッターで言います。
もしもそれすらなかったら私がヨーロッパで難民に殺されたとでも思って下さい。それかテロに逢ったりとか
それでは本編をどうぞ~
ナタリアがきっかり十秒たびにエクセイザーラビットにスキを作るよう立ち回っているのを確認したヘルゲが心の中でカウントする
魔法はすでに完成してある、あとは命中させるだけだ
戦いが始まってから328秒、エクセイザーラビットに変化があったのは始めの半分程度。
敵はまだ全然本気を出してはいないーーそれでいい。
無駄なリスクを冒す必要などない。敵が全力を出していない間に倒し切る、それが冒険者だ。今時騎士でも正々堂々ウンタラカンタラを宣うのは決闘の時ぐらいだし、それだって単に他のものが手出ししないとか人質を取らないとかの意味であって決闘中の戦術には制限がない
正々堂々の戦いをしていては人が化物に勝てるはずもない。せいぜいあの世でちゃんと力を出さなかったことを後悔するがいい
といった感じのことを思いながらもキッチリ時間を計るヘルゲ
「いけ!」
光の竜が突撃する。次の瞬間、ナタリアがエクセイザーラビットの体制を崩し、反動でわざと吹っ飛ぶ
これで御仕舞い、そう思いながらも魔法とウサギの両方に注意を払う二人には一欠片の油断もなく、それどころか警戒の色が戦い始めてから最も濃いのがこの瞬間である。トドメを刺す瞬間こそが最も危険な瞬間であると身を持って思い知った二人だ。
エクセイザーラビット、誕生の時から今に至るまでただの一度も戦闘と呼べるものを経験したことなく、況してや危機など感じるはずも無かった彼は今、生まれて初めて死の恐怖を感じた。
愚かな魔物、哀れな強者。気づいてしまった時には既に目の前まで迫ってきている光の竜を避ける術などなく、幻視するはただ身を焼かれて亡びる未来しかない
本来、魔物の最上位に位置する自分。本来、ウサギの魔物達の王となるはずの自分。本来、すべてを捩じ伏せ、支配下に置く筈の自分。下等生物共の街を平地にし、我が領土にしようとしたはずが、気が付いたらこの有様
感じるは憎悪か?否、憎悪ではない。例えどのようなやり方であろうと自分を倒す者共は紛れもなく強者。弱肉強食を否定するつもりなどエクセイザーラビットにはなく、故に感じるは憎悪にあらず
感じるは後悔か?否、後悔でもない。エクセイザーラビットとてわかっている、もしも自分が他の戦い方をとったとしてもきっと負けただろう
エクセイザーラビットを埋め尽くしたもの、それは悔しさであった。ただただ悔しく、そしてまだ生きたいという欲望でいっぱいいっぱいだった
故に足掻く、なりふり構わず足掻いてでも次を得ようと思ってしまうエクセイザーラビットが取った行動、それはただ全ての力を目の前の竜へぶつかるだけの力技だった
しかし単純故に効率的になるのは多くの場合、通用するルールでもある
エクセイザーラビットの属性、それは侵食。万物を我が物にする吸収ではなく、ただただその存在を変質させるだけの悪質の物。
精密の制御をもって魔闘気を無数の、互いに触れないような膜にして戦っているナタリアはそれでも通常より遥かに消耗が激しかったが、それでも体にただ一度もエクセイザーラビットの魔力を受けなかった
ヘルゲが放ってきた光の爆撃も光の鎖もただの一瞬でエネルギーを放出してしまったが故に、侵食の効果というよりも物理的に破られていた
しかし光の竜による攻撃、【ディルプツエスドラコ・ルークス】はそうも行かない。
精密の術式に無駄な部分などなく、3125もの魔法陣の全てが意味を持ち、そして全てがつながっている。それは言い換えるとただの一つからでも全てに侵食できることであり、それは制御しているヘルゲにすら届きかねない
とはいえ、上位の魔法使いは総じて直接術式を制御することを避けるものだ。過剰の魔力をチャージして逆流させるならともかく、ただの侵食では仲介用の術式に食い止められる。
それでも術式の異常を素早く気付くヘルゲが取った行動、それは防御と結界の展開、そして魔力波の合図だった。合図の内容、それは密集して防御を取る。
ヘルゲの合図を受け、ナタリアが虎の子の切り札、空間魔法が込められた使い捨て式魔道具(一つで数千人の一年分の給料が吹っ飛ぶ程高い)を使った
パリンという音と共に予め設定されている場所ーーヘルゲの隣に移動し、エクセイザーラビットとの戦いで始めて戦技を使った
エクセイザーラビットの侵食はたしかに恐ろしく脅威的のものである。しかし例え法則を書き換える魔力といえど限界は確実に存在する。既にある莫大なエネルギー、それを消すことなど不可能であった。
光の竜が赤黒い魔力に当たり、その形を崩す
侵食により制御が壊された術式、それでも高位の魔法故に保険装置が数個存在し、たった0.03秒持ってみせた。
その僅かな時間が二人を救った
【シルバーガーデン】、灰銀色の球体が二人を囲む。庇えるのが自分と他一人のみというピーキーな範囲、消耗するのは最低限でも魔闘気総量の一割。気軽に使えないこの戦技だが、ドラゴンのブレス程度なら余裕で一分以上耐えれるスペックを誇る当代最強の防御の一つに数えられるナタリアの代名詞でもある
それだけでなく、重なるようにもう一つの戦技、【灰銀の城壁】をも発動するナタリア。自分の通り名でもあり、一つ目に得たその戦技により展開されたもの、それは正しく城壁であったーー但し厚さ以外は。ミドルブルーと二人を背に展開した高度300メートル、長さ2.5キロ、厚さ0.1mmというアンバランスな形をした城壁、それはちょうどミドルブルーを射線から覆い隠す程の大きさである。
そしてその城壁の前に魔法が追加される。ヘルゲの魔法によりミラーのようになる城壁、それが来たる攻撃の性質を表わしている
光の竜が崩れきった次の瞬間、灼熱の熱線が全てを飲み込んだ
制御を失い、『法則を書き換える』性質を持つ魔力の効果がなくなった残されたエネルギーは純粋の光となり、光速をもって世界に伝わっていく。魔力の強化がないおかげでそのもたらす被害は本来の五分の一程度だが、その代り、その速度が光本来の物となってしまった。
回避不能の光の爆撃、その殆どを受け止めたのはエクセイザーラビットである。
魔法が崩される瞬間、ヘルゲがぎりぎり侵食されない場所で数十の凹面鏡のような結界を作り、、そのエネルギーを収束させたからだ。
その御蔭か、灰銀の城壁に当たるエネルギーはそれほどでもなく、表面の鏡面処理が崩れるだけだった
戦場級魔法【ディルプツエスドラコ・ルークス】の五分の一の破壊力、その更に半分ぐらい。それがエクセイザーラビットに届いた物。その程度なら本来、防御しなくとも死にはしない物だったが、何せ彼は全ての魔力を出し切ってしまったばかりだった。魔力による保護が抜けてしまったが故に防御力が激しく低下してしまったエクセイザーラビットはぎりぎり耐えきれず、煙を上げながら斃れる
しかし『全魔力』を放出した災厄級、その魔力が人間でしかないヘルゲより劣るはずもなく、【ディルプツエスドラコ・ルークス】を崩壊させてもその殆どが消耗されていないまま前へ進む
そう、エクセイザーラビットは戦闘経験が無かったせいで死んだだけだった。もしもちゃんと自分の力を理解していれば一割程の魔力で制御を破壊し、一割程の魔力で身を守るだけで被害を無傷とはいかなくともすぐに治る程度に抑えれたのであった。とはいえ、そうはならなかった以上、タラレバの話でしかない
がむしゃらに放出された侵食の魔力が三キロ先にあるナタリア達のところに届く時には既に半径五百メートルの円に広がっている。
斜めに構えられた灰銀の城壁、厚さ0.1mmでありながらその実百層で構成されており、侵食されながらもその魔力を上へ逸らしていく
そうしながらもあたっていない部分の力を集中させるナタリア、彼女はこの戦いで初めて顔を顰めた
数瞬後、遂に灰銀の城壁が崩れる。
そらされた魔力、それでも近距離にあるナタリア達は軌道にあるまま。とはいえ、密度が違うからか、魔力のビームが通った後、晴れて見える二人はちゃんとシルバーガーデンによって守られており、無傷のままだ。
しかしーー
パタンパタン
流石に災厄級の全力を逸らすのも、戦術級魔法にそれをどうにか収束させれる結界を連発するのも竜殺しといえど無茶だったようだ。ゆっくりと高度を下げ、地べたに座り込む二人は疲れ切った顔で暫し考え、戦闘続行を諦めて休むことを決めた。
ビームの上半部分は逸らされて雲を飲み込み、【光の柱】に飲み込まれていく。城壁の下を潜り抜けた下半部分はというと長さ10キロ、最高深度350メートルの亀裂を地面に残し、その殆どが地面に滲んでやがては新しいダンジョンとなる。
しかしシルバーガーデンに当たった極わずかな分はその軌跡を乱され、ほんの僅か、そう、本来に僅かの魔力がミドルブルーの結界にあたっただけで結界を数分、無効化してしまった
注意力が低下した二人は数十キロ離れたミドルブルーに起きた問題に気づけず、今はただゆっくりと帰り道を歩む
危機はまだ、続いていく
ピンボン~
2つのフラグが立ちました~
・ミドルブルー結界崩壊!?さらなる危機が迫ってきている!
・侵食の魔力で出来上がった新しいダンジョン!?できたてホヤホヤ、そのダンジョンの実態は如何に?
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