ほっかむり
第3話です。開いてくださって本当にありがとうございます!
それからというもの、女鬼は男の農業を手伝ったり、村で琴を弾いてお金を稼いだりしました。
女鬼はとても琴が上手で、それが大変な評判になってお殿様までわざわざ演奏を聞きにくるほどでした。
そのおかげで女鬼はどんどんお金を稼ぎ、それでたくさん食料を買って、獲物となる男を太らせるために美味しい料理をたくさん作りました。
「オラほんっとうに良いお嫁さん貰ったもんだ! 器量良しで金は稼げて料理も旨い! オラ、すっかり幸せ太りしちまったさ」
「貴方様はそれくらい丸々してらっしゃるのがお似合いですよ」
男は女鬼の作る料理を本当に美味しそうに食べます。そんな男を見ていると、女鬼は目的も忘れてただただ嬉しくなってしまいます。
けれどもこれは全て男を太らせて喰らうための作戦なのです。そう考えると女鬼は涙が出そうになりました。
せめてもの情けにと、女鬼は男が一等好きな赤味噌の高級なのを買ってやりました。
ある日、いつものように村で琴を弾いているとやんちゃな子どもが女鬼のほっかむりを取ろうとしました。
「やめなさい!」
いつも穏やかな女鬼が声を荒げたので子どもも、演奏を聞いていた大人たちもびっくりしてしまいました。
「そういや何でお嬢さんはいつもほっかむりしてるんだろうねえ」
「頭のてっぺんが禿げてんじゃないのかい?」
「悪い冗談はおよしよ! しかし、どうしてなんだろうねえ」
村人たちのそんな会話が聞こえてきました。もちろんこのほっかむりは角を隠すためのものですが、農作業をしているわけでもないのにずっとかぶっているのでそろそろ不審がられてきたのです。
そろそろ潮時だなと女鬼は思いました。いつまでも鬼の自分が人間の村で暮らせる訳は無いのです。
男のとっくに食べ頃になっていました。ただ、女鬼はもう少し、もう少し男のそばに居たと男を狩るのを先延ばしにしていたのです。
今夜、男を狩ろう。
女鬼は決心しました。
それでも最後にあの男の笑った顔が見たくて、美味しい美味しい豚汁をこしらえてやりました。
そう言えば、家の中でもずっとほっかむりをしているのに、男がそのことを尋ねてきたことは一度もありませんでした。
次で終わります。第3話読んでいただいてありがとうございました!




