男との出会い
第2話です。開いてくださって本当にありがとうございます!
「おーい。目ェ覚めたかい?」
彼女が再び目を覚ますと、古ぼけた小さな家の中に居ました。
「ここは……?」
「ここはオラの家だ。お前さんが村で真っ白けな顔して倒れとったもんだから心配で心配で……」
「そうだったのですか……。それはご迷惑をおかけしました」
どうやら倒れていたところをこの男に助けられたようです。
鬼の端くれともあろうものが人間に助けられるなんて……。
彼女は流石に情けない気持ちになりました。
「いんやあ、こんくらい構わんさー。それよりお前さん、帰るところはあるのかいね?」
「えっ……」
男の突然の問いかけに女鬼は面をくらってしまいました。
「お前さん、迷子っちゅうか捨てられた犬っころみたいな目してるからなあ」
男は貧しい身なりをしていますが、とても鋭い人のようです。
「はい、実は旦那様に追い出されてしまって……」
「なんちゅうこっちゃ! お前さんみたいな別嬪さん追い出すなんてどんな男なんだ!?」
「別嬪さん……?」
女鬼は色白で華奢な身体つきで、儚げで線の細い美人でした。もっともそれは人間から見た話であって、鬼の世界ではその容姿は醜いとばかり言われてきました。
だから別嬪と言われたのが信じられなかったのです。
「んだ。オラこんな綺麗な人生まれてから一度も見たこと無かったさ」
「そんなこと、私だって生まれて一度も言われたことありませんでした……」
「旦那にもかい?」
「はい……」
「全く! そんな男んとこにおったら綺麗な顔も歪んでしまわい! お前さん、ここで暮らすといい」
「えっ!? そんな、申し訳ないです!」
「いいさいいさ! オラずっと一人ぼっちで寂しかったんだ。お前さんさえ良ければオラの嫁さんになってくれんかね? 金は無いが、そんな旦那よりずっとお前さんのことを大切にする。それだけは絶対さ!」
女鬼は大いに戸惑いました。
しかし、これは願ってもない好都合なのではないかと気がつきました。
この男の嫁になったふりをして太らせ、油断したところを狩る。
それなら気の弱い女鬼にも出来そうに思えました。
「分かりました。貴方様のお嫁になりましょう」
男は満面の笑みで応えました。
その笑顔は女鬼の心にチクリと刺さりました。
読んでくださってありがとうございました!




