バス乗り場
駅前のバス乗り場に金木犀が咲いている。
毎年この大きな金木犀が香るようになると秋が来たなぁって実感する。
「乗らないのですか?」
バスが停まっていた。
「あっ・・・すみません。」
私は、バス停から少し離れ金木犀の木の方へと移動した。
涼しい風が吹き抜けた。
<パーカー着ていて丁度いい感じね。>
少しして、買い物帰りの主婦と学生が数人乗ったバスは、私の目の前を走り出して行った。
「それにしても遅いなぁ・・・。」
金木犀の木の下で私は、小さく呟いた。
広場には、金木犀のオレンジの小さな花が散らばっていた。
<でもいい匂い・・・。>
私は、それから5台バスを見送った。
「あれ?何やってんの?」
<きた!>
学校帰りのあいつがカバンを肩に担ぎながらノロノロとやってきた。
「へぇー。今帰りなんだぁー。」
私は、何でもないようにバス停のところへ移動した。
「朝行く時、今日ちょっと遅いって言ったろ?」
「何それ?」
私は、平然とドキドキしながら言った。
「待ってたんじゃねーの?俺。」
「今来たところだし・・・。」
私は、ちょっと冷たく言い放つと扉のあいたバスに乗り込んだ。
そして後ろから、2つ目の二人掛けのイスに座った。
「待ってたなぁー。絶対。」
あいつは隣の席に、どっかり座ってそう言った。
「だから・・・。待ってないから!」
あくまで平然と言いのける。
「そうかなぁ・・・。」
あいつは、私の髪から金木犀の小さな花を摘まみとった。
「なに!?」
ちょっと赤面・・・。
「そうかぁー??」
あいつは、いきなり私のパーカーのフードの中に手を入れた。
「おまえ、この中さ。花いっぱいだけどー。」
あいつは笑って言った。
「うるさい!!」
私は、窓の外に顔を向けた。
「おまえ、いい匂いだぞ。」
「うるさい!うるさーい!」




