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不穏が過る

 短いですが。碧花の部屋内での一幕を濃くしたいので理解してくだちい。





 七不思議の調査は明日の夜だ。それまでは特に予定もないので、従来通り、俺は碧花の家に見舞いへ行く事にした。彼女の家に足を運ぶのはこれが初めての事ではないが、前々から俺には気になっている事があった。

 彼女の両親の事である。

 居ない訳ではないらしいが、彼女の両親の内、片方にも会った事がない。家に泊った際もそこに親などは居らず、俺と碧花の完全な二人きりだった。『親が居ない時を見計らっているだけ』とは言っているが、だとすれば両親は碧花の無警戒ぶりに気付いていない。仮にも、俺は男だ。女性と二人きりになって何もしない訳が無い。いや、何もしなかったのだが、娘を持つ親にしてはあまりにも雑過ぎやしないかという話である。

 しかし、何の問題にもなっていない事から、本当に両親自体は居るのだろう。でなければ家庭訪問などの際にどうやって対応しているというのだ。だとしても家を空ける事が多すぎる気もするが、それは妹と実質二人暮らし状態のこちらにも言える事だ。そんな俺が何かを言う権利はない。それに……女性と二人きりの状況を喜ばない俺ではない。それが碧花ならば猶更だ。

 屋上と彼女の家とでは状況がまるっきり違う。屋上で二人きりになっても何も感じないが、家で二人きりになった際は、何だか彼女が自分に心を赦してくれている様な気分を味わえるのだ。だからと言って押し倒そうものならスタンガンなりで対処されそうだが、ともかく家で二人きりという状況が嬉しくない筈がない。彼女の家について不自然とは思っているが、お見舞いにかこつけて二人きりになれる機会もそうない。そもそも、彼女が風邪を引く事自体珍しい。そう考えると、俺の足取りは不思議と軽くなっていった。

 俺は心の中で、熱で頬の上気した碧花を思い浮かべる。早く元気になって欲しいと思う反面、弱弱しくベッドに横たわる彼女の姿が見たい気持ちも無くは無かった。これを人は悪性感情とも呼ぶが、いつも澄ました顔を浮かべている彼女が弱弱しい瞳と共にこちらを見つめてくる状況……一度くらい、見てみたい。

 そうこうしている内に碧花の家に着いたので、俺はインターホンを押して応答を待つ。が、何時まで経っても応答がないので、何となく俺は扉を開けてみる。

 開いていた。

 これが探偵ものの漫画であれば事件が発生している所だが、俺は直ぐに気付いた。多分、両親が居ないのだ。だからこんなに玄関の警備が緩い。仮に俺でなく、空き巣のつもりで入ってきた野郎であればどうするつもりなのかと思ったが、その答えは扉に入った瞬間、俺に突き付けられた銃口で理解する。

「…………降参だ」

 俺は両手を挙げて跪く。暫くは側頭部に銃口が突きつけられていたが、俺の迅速なる対応が功を制したらしい。銃口が離れて、間もなくソイツは話し出した。

「失礼。どうやら君だったようだ」

「いや、分かれよ!」

 ていうか病人が何してんだよ!

 俺に銃口を突き付けてきた奴は、言うまでもない……と言ってしまうとおかしいが、碧花だった。何故か得意げに口の端を釣り上げている。

「いやはや。初めて風邪を引いてしまったんだが、不思議と気分が高揚してしまってね。私としても動かずには居られないのさ。それに、玄関の警備は必要だろう。不審者が入ってきたら……私だってか弱い女性だ。対処法は限られている」

 彼女がか弱い女性かは議論の余地があるとして、その手には催涙スプレー、ガス銃が握られている。更に花瓶の陰に隠れているがスタンガンまで用意されており、明らかな不審者への殺意が感じられた。銃口を突き付けたのも、俺が来たと分かったから冗談っぽくしただけであり、これが不審者ならば遠距離から問答無用で撃っていたのかもしれない。

「なあお前。本当に病人か?」

「病人だよ? 玄関の鍵が開いていたのも、君が来るのを察知したから鍵を開けておいたまでの話。普段はちゃんと鍵を掛けているし、何なら私の家は全て強化ガラスだ」

「防犯意識が徹底されてるようで…………え!?」

 まるでこの世界の秘密を知ってしまった様な顔を浮かべる俺に、碧花は怪訝そうに首を傾げた。それもその筈、俺が驚いてしまった原因は彼女にある。彼女の言う通り、彼女は確かに風邪を引いていた。体温も上がって、頬が僅かに上気しているから、それは良い。それによって気分が高揚したというのも、この際見逃がそう。


 何が驚いたって…………その表情が、エロ過ぎる。


 言い直そう。エロは流石に低俗だ。そう………エロティック。いや違う。官能的過ぎる。普段の澄まし顔からは考えられない程の……いや、普段が澄まし顔で、今もそうだからこそ、僅かに上気した頬が色気を生み出し、俺に対してとんでもない破壊力をもたらしていた。

「……どうかした?」

「い、い、いや。咳とか無いのか?」

 俺は視線を逸らしながら碧花に尋ねる。その双眸も、よく見れば蕩けていて焦点が若干定まっていない。ここまで来るといっそ重症にしか見えないが、何故か彼女は元気である。

「咳は……あるけど、あまり酷くはないよ。一日休んだらもう治ってしまった。明日からは学校に行けるだろうね」

「そ、そうか。良かった」

「……やはり、何かあるね。言いたい事でもあるのかい?」

「な、無いよ! そ、それよりえーと……お見舞いだから…………えっと。何して欲しい?」

「……取り敢えず、私の部屋に行こうか。散らかっているのは勘弁してほしいな」

 碧花の案内を受けて、俺は彼女の部屋に行く。一応病人というだけはあって、服装はそれっぽく(ぽいではなく、正にそのものだが)、彼女は全体的にゆとりのある薄い水色の寝間着から着替えていなかった。私服としては見慣れている短パンの方が、もしかすると刺激は軽かったかもしれない。露出は無いが、かえって無防備な印象を受けて、色々と悪い。

―――待てよ。

 ふわふわのスリッパで階段を上る彼女を見つめながら、俺はある事に気付いた。普段の彼女を押し倒しても俺が反撃を喰らうだけだが、もしかすると病気で弱っている今なら……


 いいや。いいや。


 俺は碧花の友達だ。幾ら何でも合意が無ければ出来ない。そうして理性は内に秘めたる狂気を抑え込むが、しかしいつ勢いで押し倒してしまうやら不安で仕方ない。

「あ、碧花。お前、寝間着変えたんだな。前はもっと明るい色だった覚えがあるんだが」

「急にどうしたんだい?」

「似合っているなと思って。うん。それだけ……だよ」

 どうも俺は言葉を交えないと本能を抑えきれない様だ。我ながら情けなく思う。


「……みが、……きだと……ったから」


「え?」

「いいや。何でもないよ。有難う」

 今何かを言ったような気がしたが……気のせいではないだろうが。追求して欲しくなさそうな雰囲気を背中から感じた俺は、納得しておく事でこの場を収めた。

  

 三日以内です。でも何だか翌日の気がします。



 水鏡 水鏡 元凶水鏡


 無知な狩也は黒幕知らぬ 己が隣の黒幕知らぬ いつも裏側 すぐそこに


 碧花は常に お前を監視 お前の隣で 選別開始


 おかしき友人 直ぐ排除 碧花のスタイル 即排除


 家族に執着 人との癒着 狩也に頓着 死体は硬直

 

 己の力を 弁え執着 関係膠着 友達終着


 きっとまだ見ぬ心の中身 見る事あり得ぬ心の中身 


 何も進まぬ彼との関係つながり 



 ラップ的な何か。

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― 新着の感想 ―
[一言] うちはラップ思い出します。
[良い点] 照れる碧花かわいい [気になる点] そういえば狩也くん達の両親について何か情報ありましたっけ? [一言] 今までの作品見返し中
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