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完璧と完全は破られる為にある 前編

 後編は明日の朝か昼くらいに出します。短くて済みません。詳細は後書きにて。

 自分で言うのも何だが、よくもまあここまで円滑に二人組が組まれたと思う。俺が先導者という事で、強引に一人掻っ攫ってしまったから、乱闘の一つでも起きそうだと思っていた。よく考えてみたら乱闘を起こしそうな武闘派は部長しか居ないので、起きない事は簡単に予想出来たと思う。

 とにもかくにも、これでゲームが始められるが、取り敢えずチームの考察を始めようと思う。勝利確定だからと焦るべからず。慢心すれば死ぬ。それは何処の漫画でもそうだ。慢心したまま最後まで勝利している人物は、少なくとも俺の知る限り居ない。

「部長! 優勝目指して頑張りましょうッ」

「まあ、程々に頑張ってみるかな」

 これは想定通り。部長と萌ペアだ。部長の仮面はまるで今日のスティックゲームを予言していたかのように口元が空いているので、残念ながら彼の素顔を拝む事は叶わない。しかし、最近は諦めが付き始めたので、今更彼の姿にどうこう言うつもりはない。

「碧花さん! 頑張りましょう!」

「………………」

 このコンビは意外だった。まさか碧花が香撫と組むとは。しかしコンビ仲が良好とは言えない。滅茶苦茶に喜んで腕を組もうとする香撫を、碧花は無言の圧だけで退けていた。かつてのマジ切れと比べるとまだ優しい方かもしれないが、それでも常人に『近づくな』という指示を下すだけであれば造作も無いだろう。俺でもちょっと近づくのを躊躇う。

「天奈、頑張ろう」

「幸慈君、本当にどうしたの? ……まあ、いいけど」

 結局押し切られたらしい、天奈と那須川のコンビ。彼は天奈の事が好きなのだろうか。如何せん、頼りなさ過ぎて彼女を預けるのは少し不安が残る。兄として、妹に幸せな人生を送らせたいと思うのは当然の事だ。どうにも彼はその人物としては不適当な気がする。

 俺に人を見る目があるかは定かじゃないが、同じ陰キャラという事なら話は別だ。俺が言えた義理ではないが、彼は人に好かれる事が少なそうである。


 本当に、俺が言えた義理ではないが。


 とにかく、これでペアは揃った。


 碧花・香撫。 萌・クオン部長。 俺・由利。 天奈・幸慈。


 一番優勝しそうなのは俺達を除くと部長と萌か。見るからに純真無垢な萌はともかく、部長は経験がありそうなので、負けるとすればそのくらい。何やら俺の思惑に気付いている節のある碧花は……気付いているとは言ったが、ハッタリの可能性もある上に、気づいているだけで、何をするのか、そもそも何がしたいのかが分からないのでダークホースという事にさせていただく。俺の邪魔をしてくれない事を祈るばかりだが、こればかりは俺の思惑を彼女がどう受け取るかによるので、俺には操作のしようがない。彼女の善性を祈るばかりだ。

「それじゃあ早速始めたいと思うんだが、何か質問とかあるか?」

「質問が……あります」

 手を上げたのは急にキャラの変わった陰キャこと幸慈だった。彼の方から俺に話しかけて来てくれるとは珍しい話だが、今の俺はルール解説者なので、当然である。ルールを理解してもいないのにゲームを始める奴が居たら馬鹿だ。

 人を本気で罵る事など滅多にない俺だが、下手すると盛り下げる場合すらあるので、本気で言わせてもらう。ルールも知らないのにゲームを始める奴は、法律を知らないのに社会人として生きている様なものである。

 論理の飛躍? いやいや、法律もルールも同じ『秩序』だ。何も飛躍していない。

「何だ?」

「これ……仮にキスとかしたら、その……後始末というのは、どうするんですか」

「仮にキス…………え、何? 君は天奈とキスしたいのか?」

「ち、違う! 何言ってんだぶっ殺すぞ!」

 彼は自分のキャラをどう見せたいのか、俺にはさっぱり分からなかった。露骨に動揺してくれたのは面白いが、それが年上の人間に見せる態度だろうか。ぶっ殺すと言われても全然緊張感が生まれないのは、彼が本当に人を殺した事がない証拠だろう。同じ言葉を碧花が言ったら、多分俺はビビる。




「違うよ。君は一体何を言っているんだ。あんまりふざけた事を言っていると殺すよ」




 うわ、超怖い。

 だからと言って彼女が人殺しという訳ではないが、やはりキャラというものは重要である。天奈は乱暴な人が嫌いなので、今の発言により真意はどうあれ好感度は下がったことだろう。

「まあいいや。キスの後始末? そんなの本人達の勝手にしてくれ。謝るだけでも、付き合うのでも、何でもいいからさ」

 お礼も言わず、幸慈が妹に向き直る。案の定、二人の間には若干の距離が空いていた。妹は俺に心配そうな瞳を向けている。

―――首狩り族として避けられてきた日々に比べれば、こんなものは何でもないので、要らぬ心配と言えるだろう。

「それじゃあ始めるぞ! 準備はいいか?」


 待てと言われても待つ気は毛頭ない。返事が無かったので、俺はスティックを口に加える寸前に、開始の号令を出した。







「スタート!」


スティックゲームのガチ心理戦をします。

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