五幕「化け者ご対面」
―「...お。貴方達は...」
「こんばんは、元凶様。この少女二人が私が選んだ人間でございます」
「あ、えっと、来咲那月です...」
「ごほんっ。来咲依月です」
「へぇ...」
そう言うと化け者はニヒりと笑い、私の手の中に何かを託した。
「…?」
「それは心の肉の飴。何個かあげるから、元の世界に戻ったら、家族や友達と食べなよ。お土産ね」
「あ、ありがとうございます…」
「…さて、折角選ばれた人間が来てくれたんだし…そこの楽器で狂った音色を奏でてあげる」
「演奏してくれるってこと!? いぇーい」
「私の得意曲を演奏するから、聴いててね」
♪♪~♪♪♪♪♪♪~♪♪~♪♪♪♪♪~♪♪♪♪~♪♪♪~♪~…
化け者はそう言うと、ピアノを弾きはじめた。
異常な音を奏でるピアノに、私は驚きを隠せなかった。
まるでピアノが嘲笑って死んでゆくように。
曲も、不協和音ばかりだ。
「…どうだった?」
「す…すごかっ…たです」
「フフフ、異常な音だから驚いた?
…これは狂気ピアノ。狂い者の嘲笑いを元に音色を造ってるんだよ」
「へ…へ…ぇ…」
「…元凶様。そろそろ御時間では?」
「あ、そうだそうだ。また天罰奴隷のとこに行かなきゃだった。
…じゃあね。」
「は、はい…」
「…それじゃ、行きましょう、依月さん、那月さん」
「…お、おう」