第八話ー明かされゆく真実(前編)ー
こんにちは。こんばんは。梅木仁です。
お待たせいたしました。第八話になります。
更新が不定期になりましたこと、深くお詫びします!
それではどうぞ!!
帰り道。
小生と俊は、偶然目にした生徒会役員の姿に目を疑った。
朝までは少なくとも他の人をよそに、たとえ一人であっても、気丈に振る舞って新入生を歓迎していたのだ。そんな彼がなんであんな姿に・・・。小生はとにかく声をかける。
「どうしたんです、何かされたのですか?」
明らかに大丈夫ですか?と聞くのは道義的でない。そのくらい異常だった。
「あ・・・」
あ、の後の言葉がまったく出てこない。
「コバ、校内では何をされるかわからない。とりあえず、学校を出よう。」
おそらく俊の中では、小生たちに降りかかったさっきまでの霊の恐怖に似たものを感じ取っているのかもしれない。人間はそういったトラウマにはすぐに反応してしまう。
俊はすばやく生徒会長をおんぶする。と同時にあうんの呼吸で投げられた、俊のリュックサックを小生はキャッチする。そして、小生と俊はダッシュで校門まで駆け抜ける。外の歩道まで出ても、俊は走る足を止める気配はない。そのまま左に曲がって、小清水駅へのまっすぐの歩道をただただ何かから逃げるようにして走り続けている。
だが200メートル走ったあたりで、もともと運動部ではない小生はもう息が上がっている。
「おい、俊!ちょい待て!もう息が持たん!」
「え、あ、おう・・・そうだな・・・もう大丈夫かな・・・」
「どうしたんだよ、いきなりすぎてびっくりしたわ」
「すまん、なんか怖くなってさ・・・」
小清水駅から高校までのちょうど中間に、「宝コンビニ」という小さなコンビニがある。そこのコンビニには九台ほど駐車できるため、普段からトラックが駐まっている。広い駐車場のうちの一つに先輩を寝かせ、とりあえず小生と俊は先輩の意識が戻るまで休むことにした。制服のワイシャツは二人とも汗でびっしょりだ。もっとも、小生のシャツは走ったからであり、俊は恐怖から汗をかいたのであろうが。
その後五分くらいで彼は意識を取り戻した。
「ん・・・ここは・・・?ん?あ、君たちは、朝の校門の・・・」
「先輩、気分は大丈夫ですか?一応脈は安定していますけど。」
小生は左手首付近の脈を測っていたが、小生とほとんど変わらない。
「ああ、大丈夫だよ、ということはまた教職にやられたわけだね、僕は。」
そう言うと、生徒会長はふうっと一息ついて、おもむろに口を開けた。
「まず、自己紹介だね。初めまして。現宝南高校生徒会長、腎道進だ。二人を、ええっと・・・呼び出していたね?記憶が正しければ、学校終わりに生徒会室に、だよね。こちらのミスですれ違いになったかな・・・」
すれ違い、という言葉に少しばかり違和感を覚える。
「こちらこそ、式では遠くて見えてませんでした。俺が小畠逸太、それでこっちが太森俊。」
「なるほど、小畠くんに、太森くん。よろしく。」
「太森です。朝は本当に失礼しました。会長とも知らず・・・。」
「いやいや、いいんだ。あれくらい気骨のあるやつは好きだよ。で、早いところ呼び出したことの本題に入ろう。」
「ちょっと待ちましょうか、生徒会長。」
俊はすかさず、間を入れる。小生も言おうと思ったが俊が一足早かった。
「さっきのは何があったんです?そこから話さんことには、進まんですよ。」
「そうだね・・・うーん。場所を変えようか。」
こうして、生徒会長はコンビニの駐車場を出た。
そして小生たちは生徒会長のあとに続いて小清水駅までの道を歩き始めた。その間に三人の間に会話はない。小生も、俊も、生徒会長もそれぞれ黙って歩みを進める。
電車内も沈黙が続く。普通ならば、そこに初対面ゆえの気まずさを感じてもおかしくない。
しかし、小生に感じられたのは、そんなものではない。それよりもこの生徒会長がどのような言動をするかで、今後の展望が見えるか見えないかが決まる、と小生は考えているからだ。
脳内で繰り広げられるあらゆるリスク計算の結果に深刻な顔をしながら、目の前を流れる景色をただただ見逃してゆく小生。
隣には腕を組んで、目をつむって下唇をかむ俊。
そして、電車の照明が当たるだけでもわかるくらい、少し紫色の青白い顔色で静かに座る会長。
それぞれ三人がたった一日の出来事にいろいろと思いを馳せていた。
校門入って目の当たりにした校内の有様、
入学式での生徒の雰囲気、
生徒会長と校長の式辞の中身、
授業後の佐伯先生とのやりとり、
すでに小生と俊は目を付けられている可能性が高いという実証、
生徒会室の前で起きた霊的現象、
そして、生徒会長の身に起きているだろう不都合な真実。
すべてを想起して、今ある現状を推察する。
答え?問題点も定まらないのに、解決策なんて見つかるわけがない。
でも、そんなに迷って悩んでいる時間はないんだ。
気づけば終点の新宝南駅に着いていた。電車を降りて生徒会長が開口一番言った。
「さて、今日はウチに来てほしい。少し話そう。」
小生も俊も黙って首を縦に振った。
俊も朝の校門の時に感じた、先輩に目を付けられた、やばくね?みたいなものはなさそうだった。確かに、警戒している人間を、人間は背中に背負ったりするはずがない。
「先輩、いいえ、腎道生徒会長、ひとこといいでしょうか。」
俊が唐突に言った。
「どうしたんだ?太森くん。」
「さっきから、つけられてませんか、俺たち。」
俊は悟られないように、背に向けて、お腹の前で指を指して見せた。
「え、俺ら付けられてるんですか!!」
「おい!コバ!声がでかい!」
「ご、ごめん・・・」
「ああ、太森くん、鋭いね。さすが野球部出身。うん、つけられているようだ。」
「どうしますか?俺は顔までは認識できてないですけど・・・」
「制服とつけられ始めたところからして、宝南で間違いない。でも、あの顔は初めて見る顔だ。在校生ではない。新入生だろう。」
「え、顔って!腎道会長、在校生全員の顔を覚えているんですか!?」
「当然だろう。あらかた、在校生の顔は把握しているよ。これでも一応生徒会長だからね。」
俊も小生も生徒会長というものは、てっきり内申点稼ぎだとしか思っていなかった。だっていくら自分たちが有力な候補に投票してそいつが当選しても、教職の操り人形になるだけだと思っているからだ。
「少し様子を見よう。僕の家まで付けられることがあれば、そのときは動こう」
とはいえ、このままでは先輩の家まで特定されかねないのでは?と小生は内心考えた。単純な話、家なんてその周辺をうろつくだけでも、足は捕まれてしまう。先輩がせっかく場所を変えて話そうと言っている以上、上手くまいてしまうか、ストーカーの鼻を明かした方がいいはずだ。
「会長、一応、親に連絡入れてもいいですかね。心配されるんで・・・」
「お、コバ!ちょ、おま!!」
「え、あれ?小畠くんってご両親・・・あ、そういうことか。うんいいよ。僕らは新幹線の改札で待つよ。」
「すいません、お手数かけます・・・」
新宝南駅は日本鉄道(通称:NR)の宝南駅と隣接している。
そこで、小生は親への連絡という名目で新宝南駅の改札前で留まり、俊と生徒会長は一足先に先輩の家が比較的近い宝南駅の新幹線の改札へ向かってもらった。
補足だが、宝南駅全体は東口を西口に分かれている。西口は新幹線の改札が近い。逆に新宝南駅は東口側なので便が良い。その中間にNRの在来線がある。
新宝南駅の改札を出て、俊たちはそのままエスカレーターで宝南駅に入って行く。
小生はその背中を改札前で確認していた。そして、その背中が消えた。
「ええっと、じゃあ出てきてもらえますかね。」
周りに人がいることもあり、大きな声では言えない。
だが相手の反応はない。さっきまではつけられていたことを知らなかったが、今となっては制服までわかっている。制服さえわかれば、混み合う改札でも気配は感じ取れるはずだ。
「う~ん。フェアに行きましょうよ、フェアに。」
まだ反応はないか、っと思った次の瞬間だった。
人混みがふっとなくなった隙間を、かいくぐるように何かが動いた。
「はあ、なんとなく誰かはわかりましたよ。でもね、いい加減にしましょうか。こんな独り言をぶつぶつ言っている人間の周囲からの視線とかも考えてみてください。」
そう言って小生はため息をついた。
「だったら、こちらのことも考えろ」
小生は一瞬のすきに不覚を取った。小生のため息の間に、背後を完全に取られた。
腰のあたりになにかとがった鋭いものを突きつけられているのを感じる。
「うっ・・・」
そしてそのまま低い声で続けた。
「いいか、そう不用意に第三者と折衝するな。こちらも手を回せなくなる。」
小生は脈が速くなって、心臓の音が脳まで聞こえるほど緊張した。やばい。
相手が誰かわかっているとはいえ、圧倒的に不利だ。だが、なにもしないわけにはいかない。
とりあえず、相手を落ち着かせるために、つとめて冷静に言う。
「じゃ、じゃあちゃんと訳を話してよ・・・九条さん。」
「それはまだ言えない。けれどいずれわかる。その意味が。」
その言葉の後に、腰の違和感は消えた。そして目の前に九条さんが現れた。小生が聞く。
「え、どういうこと?」
「おおよその顛末は私も知ってる。だから今日はいいけど、次からは一緒に行かせてもらうから、生徒会長の家。」
九条さんはそれだけ告げて、小生の前から姿を消したのだった。
最後までお読みいただきありがとうございました!
さて、今話では生徒会長の話がメインですが、最後に九条さんが出てきました。
九条さん、なかなか怖い・・・!刃物を突きつけていたのでしょうか。というか普通に改札でこんなことされたらびびるわ!!書いてて思いました。
話は変わって、先日東京に行って参りました。
正午前に到着できたので、一日目は靖国神社を参拝して、うまるちゃんのイベントを楽しんでとハードスケジュールでした笑
二日目はめっちゃ歩きまして、自民党本部、首相官邸、外務省、東京高裁などの前を通って、デモ見て、最後に最高裁判所に行って参りました。社会見学ってニュアンスが強いです笑
そんなわけで執筆が遅れまして申し訳なく思います。次回からは新学期ですがしっかり書いて参りますので、応援のほうよろしくお願いします。