第七話ー目の前の不都合な真実たちー
こんばんは。こんにちは。梅木仁です。
昨日に引き続き、不定期にはなりますが第七話になります!
本当は13日に投稿予定でしたが、訳あって本日の投稿となりました。
読者の皆様には、ご迷惑をおかけします。
それでは本編をどうぞ~ヾ(^v^)k
「え、そんな!?声真似主さんなの!!」
小生は思わず声が大きくなってしまった。まさかのまさかのまさかである。
小生は自分の耳が彼女の声を知覚し、聴神経を通じて脳が処理していることを何度も何度も再確認していた。これはなんたる奇跡か。目の前の女性は、小生がここ数年、誰でも、そして一度でいいから生で聞いてみたいと願っていた声真似主の本人なのである。
「え、これ、夢じゃないよね?」
そう言って小生は自分のほおをつねる。うん、痛い。夢じゃないんだ。
「えっとね、いろりろ聞いてもりょいかな?」
「え、噛み噛みじゃん、コバくん、大丈夫?落ち着いて。」
「お、お、落ち着けないよ!だって、だってだよ、小生の趣味は・・・」
「ん?なに?」
「声真似主さんの配信を視聴することなんだ!!!!!」
小生は緊張し、声が裏返ったのに加え、小生とみっちゃん以外話していないので教室に響き渡る。
やばい、恥ずかしい、だが伝えたぞ!
言い切った後も興奮はまだまだ冷めない。この興奮は言うまでもなく、先ほどの恐怖が尾を引いているのであるが、そのせいかアドレナリンもでて、調子がよくなっている小生がいる。
一瞬の沈黙。客観的時間にして一秒。体感時間にして一分。
小生の後ろからはクスッという声が聞こえる。その後、
「うわあああああああああああ」
明らかに目の前の女性の声ではない。
おっと、これは俊の声だ。九条さんの席の隣で眠っていた俊が目を覚ましたのだ。
「おう、おはよう、俊。」
「ん?ああ、おはよう、コバ。って、身体が軽い!何があった!?その子は誰だ!?コバ!?」
「いいから落ち着いて。ああ、ちゃんと話すよ。でさ、九条さんもいい加減起きましょうか。」
本題から大きく話がずれてしまったが、今回の当事者たちが全員目を覚ましていることは確認できた。
「まず紹介しておくよ、俊。こっちはおかしくなっている俺らを見つけて、助けてくれた張本人の佐々木さん。みっちゃんと呼べばいいらしい。」
「おう、わかった。助けてくれてありがとう、みっちゃんさん。俺は太森俊。俊でいいよ。」
「初めまして、佐々木由梨乃です。よろしくね。」
「で、後ろの九条さんはどういうことかな?みっちゃん。」
「うん、一人で運びだそうとしていたんだけど、さすがに一人では厳しくて・・・そしたら、彼女が『私も運ぶよ』って助けてくれたんだ。」
「そうですよ~、なんか大変そうだったからね~!」
そこで俊が突っ込む。
「というか、なんで九条さんが近くにいたんだ?さっきのコバが『顔色も少し疲れて帰ってくるはず』っていうのも、なんで知っていたんだ?」
「え、ああ、まあ、勘だよ~!勘ってやつ!」
九条さんが笑ってごまかしているように見えるのは小生だけだろうか。
謎の多そうな子である。
「それでね、九条さんと、私でおかしくなっている二人をなんとか三階まで運んできたの。やっぱり男子って重いんだね」
「「そりゃ、そうだよ??」」
俊と小生が声を合わせて言った。
小生が話を戻す。
「さっき、みっちゃんが『学校の霊』って言ってたけど、みっちゃん見えるの?」
「う~ん、見えはしないけれど、なんとなく感じることはできる、かな・・・」
「おお!!みっちゃんさんって、わかるのか!俺もわかったぞ!」
小生は感じなかったが、確かに俊は扉の前で何かを感じていたのは事実だ。
ただ、そのあとに俊はその何かに飲まれてしまい、それは小生の意識にも移った。
さらには、九条さんまでも飲み込んでいると考えられる。実際に扉の前に立っていない彼女が小生たちを救出した後にダウンしていたのは、小生の意識が戻ってから彼女が後ろの席で伏せていたのを小生は目撃している。
「でもよ、俊はその霊に飲まれて、みっちゃんは飲まれていないよね。」
「多分、私のお守りのおかげかな~」
「それ!私も気になるよ!だって私も、太森くんたちを運んだ後にすっごくけだるくなって、寒くなったんだもん!」
「私、小さい頃から身体が悪かったんだけど、おじいちゃんとおばあちゃんが神主さんでね~、それで毎日お守りを付けてなさいって言われてるの!」
「え、神社ってまだあるの!?私もお守りほしいよ~!!」
日本では十年前に神社解体令なるものによって全国の神社は取りつぶしとなった。それに抵抗した勢力も存在し、一時は日本政府を含め他国の連合軍と正面衝突した事件まで発生したほどだ。もっとも、抵抗勢力が敗北するのは火を見るよりも明らかで、その後各地で発生していた武装蜂起は徐々になくなっていった、と中学校の歴史で習ったのを記憶している。
「ごめんね・・・これ以外にお守りはもうないんだ・・・」
「やっぱり、解体令って歴史の事実だったんだよね。ざーんねん。」
「しっかし、こんなことになると元気に毎日登校ってのも危険だよな、コバ。」
「うーん、そうだよな・・・」
「まあ、とにかく、あのあたりに近づくのは危ないってことだね。」
いろいろと話がまとまってきた。
この調子ではとりあえず生徒会の呼び出しに向かうことができる状況ではない。
「ねえ、連絡先交換しない?四人でさ!」
「いいよ~」「いいぞ」「おっけ!」
九条さんの提案に三人全員が賛成した。連絡先とは、連絡先アプリ「ヤブミ」のアカウントコードだ。さっそく交換して、グループを作成した。今回のような霊のようなものが関係している以上、みっちゃんのような霊に強い(?)存在とのコネクションは必要となってくる。
九条さんとみっちゃんが帰った後、小生と俊は生徒会の呼び出しにどう対応しようかということを話し合った。とりあえず次に会ったときとかに礼節とかを正していけば大丈夫だろうという無難な案に行き着いた。しかし、生徒会室があの状態でどうやって生徒会に近づけばいいのかわからない。つまり接触方法も問題となる。これについては、相手が呼び出したんだから時間をおいてみようということになった。
しかし、疑問符が浮かぶ。
先ほどの生徒会室の扉の前での出来事から考えて、おそらく一般人ならば小生や俊のように体調をすぐに崩してしまうだろう。それにその崩し方も尋常ではなくて、雪崩のようにあっという間に体内のあらゆる機能が低下すると言ってもいい。
脳内でそんなことを考えながら俊と小生は校舎を出て朝来たアスファルトの道を歩く。
小生があのさ・・・と俊に声をかけようとしたときだった。
そのとき、教職棟から出てきたのは、朝小生たちに声をかけてきた生徒会役員だった。
けれども、小生も俊も感じていた。
それは抜け殻のような、生きているのか、漂っているのか、操られているのか、
朝に会ったときとはまったく違う、覇気のない朝に見た生徒会役員だった。
最後までお読みいただきありがとうございました。
今話では、由梨乃、逸太、俊、凛が連絡先を交換する流れでエンドでした。生徒会長さんも最後に出てきましたね!
生徒会長。小生は拝命したことはないのですが、結構先生たちの操り人形なんだろうなって思いながら執筆していました。だって認証式とかいう儀式もありましたし、結局先生たちが生徒からの不満をうまく緩和させるための機関のトップなのではないか、とか考えながら書いていました。こんなことを書いていますと、後から生徒会長を歴任した人にいろいろと批判されそうですが、小生はそんな青春とはかけ離れた生活をしておりましたゆえ、外からぼーっと見ていた感じです。
さて、今後のストーリー展開でも重要となってくる「リア充応援計画」の本丸。
次回は少しその核に迫る話になりそうです。
今後とも、一つよろしくお願いします。