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リア充応援計画  作者: 梅木 仁
こうして物語は幕を開ける。
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第五話ー教職と生徒たちー

こんにちは、こんばんは。梅木仁です。

花粉に、暴風に、吹雪にと、各地で春と冬が交差している日々ですが、読者の皆様、いかがお過ごしでしょうか。最近ストレスで過食になっておりまして、困っているところです。

特に面白い話もないので、本編へどうぞ。

式の途中、小生はふと周りを見渡した。

隣の列、つまりの五組の俊は顔を上げて、前を見ている。

意外にも、九条さんも顔を上げている。その目は充血しているのだろうか、赤く、うっすら涙目になっているのがわかる。ただ、彼女がどのような思いなのかは、一瞥しただけではわからない。

確かに、周囲から見たら、“ただ前を見ている”と表現できるだろう。だが小生は少し違う。それそれがどう感じようと、現実を見ること、いや言い方がよくない、現実を見るだけでなく、ちゃんと受け入れるために前を見ていること、と小生は考えるのだ。この修飾なくしてただ「見る」と表現することは少し、違うと思う。


式は終わり、教室への帰るときも小生は少しも緊張してこわばった顔を崩せずにいた。もっとも、嬉しいことに女性の教師が小生のクラスの担任である。けれども、それ以上に現実をはっきりと思い知らされ、それによる胸の痛みのほうが、その嬉しさをかき消してしまうくらいに絶望的につらい。

確かに、オルウェイズ、現実は人に何かしらの刃を向ける。その刃の裁き方如何で、世の中の現実はその人の理想に近い形に変化したり、あるいは、その人が押しつぶされたりする。もちろん前向きに捉える説があるのは理解できるし、成り行きに任せよという意見もあるのはわかるが、式での生徒の有様などを総合考慮しても、今のところ前向きな検討すらできない。誰もが放棄してしまっている状態に近い。


憂鬱なメンタルのまま教室に入り、とりあえず席に着く。机にしまった教科書を手に取って、読もうとしたとき、

「ねぇ、なんでそんな顔してるの。」

続けざまに彼女は小生に言った。

「仕方のないことじゃない。だって、それがあるべき姿なんでしょ?」

と女子の声がした。小生はおもわず顔を上げると、そこには隣の席の読書少女がいた。

「ん?なんの話かな・・・?」

「とぼけなくたってわかるわよ。式のことでしょ。」

小生はあわてた。当然、式の最中に誰もが下を見ているのだから、小生を見ている人なんていないと思っていたからだ。答えに困った小生に彼女は続ける。

「あれが現実で、当然の結果で、歴史の中でのあるべき姿なのよ、きっと。」

「え、あ、う・・・」

小生はうんという手前で踏みとどまった。それは違うんだと心の声が小生の脳内をこだまする。こだまするのではなく、自分の中の理想がこだまさせたのかもしれない。けれど彼女に言い返すまでは無理だった。それどころではない。


彼女の最後の発言の後、すぐに教師が教室に入ってきた。教室の黒板前にある教卓に書類をおいて、教師が第一声を放つ。

「ええっと、皆さん、六組担任の佐伯明美さえき あけみと言います。この宝南高校が、初任校となります。一年間よろしくお願いしますね。」

初々しいという表現が似合い、優しそうな若い教師だ。黒髪のポニーテールに色白の肌。思春期の高校生男児の多くが顔の筋肉を弛緩させる、といえばよいだろうか。そんな美人教師だ。だが、小生の感想は別に、なんでもないとしておく。

佐伯先生はてきぱきと連絡事項を口頭で伝えた。もちろん、入学おめでとうなどという祝福に満ちた言葉も、これからの三年間を楽しみましょうとかいう希望を感じさせる言葉もない。本当に事務事項しか伝えない。中学までの“教育体制”なら考えられないことだ。

最後に先生は、

「ええっと、じゃあ、小畠逸太くん、どこですか?挙手して!」

と突然小生を指名した。満面の笑顔を浮かべて。

「はい。なんでしょうか。」

「この後なんですが、少し先生のところに来てください。」

小生の頭には疑問符しか浮かばない。とりわけ、他の生徒の前で呼び出しというのは中学時代にも覚えがない。至極普通の学生としてここまで歩みを進めてきた小生は、生徒指導などという拷問を受けたことはない。ただ、脳裏をかすめたのは朝の校門の件だった。が、それも生徒会しか感知していないはずだ。とりあえず事の次第を知らなければ、小生はなんとも対策できない。


クラスが解散後、小生は教壇で後片付けをしている先生の元に向かった。

「じゃあ、ちょっと場所を変えよっか。」

意図はまったく読み取れない。わからない。不安だ。それに小生には生徒会の呼び出しという俊との約束がある。仕方ない。小生はとりあえず、俊に連絡するために昇降口から上ってきた階段(東階段)を使おうと決める。

「先生、まだこの校舎の昇降口を覚え切れていないので、東階段を使って確認してもいいですか?」

「いいですよ、それくらい。」

「ありがとうございます。」

小生は教室を出て、五組の前を通って階段へ行く。五組の教室の前を通るとき、小生は瞬時に俊の姿を視認し、彼に手のひらを見せる。待っててのポーズだ。佐伯先生の後ろを歩いていたことと、五組の教室の廊下側の窓が開いていたこともあって、目立つ看板と妨害壁がないことに恵まれたので、俊とアイコンタクトを取ることができた。俊も一回頷いた。

そのとき、小生は確かに、俊に合図を送ることで手一杯だったのは言うまでもない。

小生は見逃していたのだ。前を歩く先生の妖しい笑みに。


さて、先生に連れられて教職棟にやってきた小生は、まず机一つとイス二つが置かれた六畳ほどの部屋に通された。先に小生が入り、続いて先生が入ると、先生は部屋のカギを音の出ないように閉めた。そして、小生が部屋の真ん中に置かれたイスに座ったのを確認すると、先生が前に向かい合うようにして机を挟んでイスに座った。

「さて、小畠くん、これから一年間、やめてね、先生の出世の邪魔は。」

「ん?なんの話でしょうか・・・?」

心を見透かされたような、気色の悪い感覚を覚えた。

「今さらとぼけなくてもいいんだよ。ぜ~んぶ知っているから。」

「いえ、さっぱりなのですが。」

小生はできる限りとぼける。焦りの色が出てしまっているかもしれないが。

「ふ~ん、いいんだよ?でもね、生徒の分際でそういうことすると、どうなるか、わかる?」

突然、目の前の先生が机を勢いよく蹴った。机の脚を蹴ったのだろうか、ガーンという金属音が静寂の部屋に響き渡る。

不気味なのは、先生が目の前で普通に笑みを浮かべながら、優しい声のままで、威圧をグッと押し殺したような声で、落ち着いてそれをしたということだ。

小生は慌てることなく、次の発言をじっくり検討する。

「はて、なんのことやら。小生、まだ新入生のできたてほやほやですよ?笑」

小生の足は震えているかもしれない。それでも精一杯見せた。

「そ。どうなっても知らないよ?友達も家族も何もかも。」

「ええ、そうですね・・・友人は困りますけれど・・・それ以外なら・・・。小生はすべておいてきていますので。あの世に。」


小生の最後の言葉以降、先生が口を開くことはなかった。

その後すぐに解放され、小生に直接的な攻撃もなかった。そして、校門の件も感知されているような様子はなかった。おそらく入学してまもない段階で、釘を刺しておこうという算段だろう。

まったく恐怖がなかったと言えば嘘になる。終わって考えてみれば、小生が東階段を使うことを提案したときに「いいよ、『それくらい』」と先生は発言した。「それくらい」の意味を振り返ってみると、小生だけでなく俊もすでに彼女たち教職の把握している網にかかっていることになるのではないか。

加えて教職側との初めての折衝がこのような高圧的な形だったのは誤算だった。もう少し穏便に折衝を始めたかった。今日のことからわかるのは、はなから教職はこちらを「従えるもの」として見ているのであって、交渉すべき相手と考えていない。


俊なら、こんな小生に考えすぎだよと声をかけてくれるのだろうか、そんなことを考えながら五組の教室前までもどり、待っていてくれた俊と会う。

「お、お疲れ!コバ!やっぱりか、佐伯にやられたんやろ?」

「え、なんで知ってんだよ。」

「九条さん情報。九条さんが教えてくれたんだ、『小畠くん、多分顔色悪くして帰ってくるから』って。」

「ま、ま、まじか・・・。すげえな、正解だよ」

「『顔色も少し疲れて帰ってくるはず』とも言ってた。九条さんって何者だよ。」

「まあ、あんまり彼女のいないところで名前を出すのも悪い。とりあえず生徒会に行こう。」

「おう、そうだな。行こう、コバ。」

九条凛。小生の中でも少し引っかかる存在。小生のネットワークに今まで彼女の名前はなかった。少し帰ったら調べてみよう。

そんなことを考えながら、小生と俊は生徒会室に向かう。


誰もいなくなった六組の教室で、小生たちの会話に聞き耳を立てていた、藤原希海に気がつかずに。

最後までお読みいただきありがとうございました。

今話では、ついに教職側の佐伯先生が登場しました。けっこう小生の性癖が入っています。ごめんなさい。でも、凛ちゃんも、のぞみんも、精一杯愛を込めて、書かせていただいております。突然話しかけてきた読書少女も、です!

さて、ツイートを拝見されている方、荒らしてしまい失礼いたしました。およそ小生のフォロワーの90%がミュートだと思いますが、昨今いろいろありましたので荒れました。個人的に、小生は非力で無力です。でも、それだから自由なんだ。決断か愚断か。覚悟は諦めなのか、などまだまだ思春期でありたいこの頃の小生です。

何を書いているのかぐちゃぐちゃですが、事務連絡だけはしっかりと。

三月五日より、小生のスケジュールが埋まっている週間が始まります。もちろん、執筆は欠かす予定はないのですが、都合がどうしてもつかないと思われます。ですので、五日からは少し期間を空けての投稿となります。ご容赦のほど、読者の皆様にはよろしくお願いします。

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