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リア充応援計画  作者: 梅木 仁
こうして物語は幕を開ける。
3/28

第三話ー高校ってこんな感じだよね(ぼっちは語る)ー

こんばんは。こんにちは。

梅木仁バイキンマンです。

今話もよろしくお願いします。

校舎へ続く四〇メートルほどのアスファルトの道、その両サイドに無残にただ「存在する」土の花壇。

殺風景で、まるで小生たちが入学するのを歓迎しないかのようだ。

小生はそんな情景を笑ってみせた。周囲の入学生は当然に驚いているものとして、会長らしき人物以外の生徒会役員までも、その目は死んでいる。そんな中を俊と颯爽と歩いていく。

その道の中間ほどで、後ろから声をかけられた。

「ちょっと、ちょっと、君たち。」

小生と俊は振り返る。見ると先ほど校門の前に立っていた、唯一目が死んでいなかった生徒会役員である。他の入学生たちは、小生と俊が先輩たちに目を付けられたと思って、こちらを一瞥して早歩きをする。

「君たち、さっきの校門で、何してた?」

小生は無言で目線だけ彼にあわせ、俊も遠い目で空を見る。

「う~ん、もしや、笑ってた?笑」

その人の笑いは苦笑いというにふさわしく、少し困惑しながら笑っているように見える。

小生自身、なにぶんこんなところで突然上級生から声をかけられたでは、周囲からの目も痛い。

このまま黙ってやり過ごすのが適当だと考えた。

そうしたら役員らしき人が口を開いた。

「そうだな、うん。帰る前でいいから、生徒会室に来てほしい。」

突然で、かつ一方的な彼の申し出に、俊がひとこともの申す。


「ほお、どなたかは知りませんが、いろいろと失礼ではないでしょうか。」


俊は野球部で培った声量は、一級品だ。俊が声を張らせたのに加えて、少し声を荒げたような息づかいをすればだいたいの話し相手は、一瞬ひるむ。

「すみませんでした。」

その役員らしき人はそそくさと元の持ち場に戻っていった。

俊は彼が近くにいなくなったのを確認して、小生に話しかける。

「なんだぁ?あの人は。コバ、妙に冷静だったけど、知ってるのか?」

「おそらく、生徒会長さんだと思うよ。」

「げっ!まじかよ。やばくね?そんな人に目を付けられたのか!」

「まあ、公衆の面前で、周りがお通夜の雰囲気の中で、俺らは笑っていたからな~」

「やばいやつじゃん。え、俺ら退学とかならんよな?」

「大丈夫だって。来いって言っただけだし、別にひどいことは言われてないでしょ」

「でもよ・・・コバ、なにせ三群校だぜ?用心に越したことはない」

「俊、まあ、安心しなって」


そんな会話をしながら、気づけばもう昇降口まで歩いていた。

一年の下駄箱は二階、二年、三年の下駄箱は一階である。すでに多くの入学生がそこに集まって、掲示板に貼られたクラス分け表を見ながら一喜一憂している。

にぎやかな雰囲気だ。校門からアスファルトの道で黙り込んで歩いてきた分解放されたように盛り上がりを見せている。


小生たちも階段を上って、掲示板を確認する。

一年は全部で八クラスになる。一組四十人で、学年三百二十人。単純に考えて俊と同じ組になる可能性は低い。中学校は三クラスだったし、同じクラスでなくても、クラスが同じ階にあったから、他クラスとのコミュニケーションも簡単だったが、高校はそうも行かないようだ。なお、組とクラスは別段、使い分けに差異はない。

宝南高校は、一年の場合、一組から四組は三階なのに対し、五組から八組は四階である。ちなみに、一階は三年の全クラス、二階と三階に、二年のクラスが配置される。従って、もしも階が分かれると階段を上り下りする必要があるため不便になるのだ。

階によって、教室からの見晴らしが全く異なるのも忘れてはならないことだ。

三階までは隣にある教職棟があるために北側の視界は全滅だが、その教職棟は三階建てなので、一年の五組から八組の教室の景色は北側も開けている。宝南高校の周りは一面の田んぼか畑しかないため、天気のいい日には北部の市街地まで見えるときもある。なお、小生がなぜここまで詳しいのかと言えば、高校の入学式の前の登校日に、校舎の説明があったからだ。

決して小生が秘密結社の人間だからとか、先輩に知り合いがいるからというフラグがあるわけではない。

「お、あったあった!俺は五組だ!よっしゃ!見晴らしがいいぞ!」

俊はかねてから、四階を切望していたが無事にあたりを引き当てたようだ。

「お、俺は六組か~やはり同じクラスはかなわず、か・・・」

「いいじゃねえかよ~!隣じゃんか!コバが隣なら安心だわ。おうおう、やってくれるぜ、兄弟!」

「兄弟なんて、俊、面白いこと言ってくれるじゃねえか!笑ったわ。」

お互いに、相手が隣のクラスであることを確認して安堵して、思わずコバのノリに笑みがこぼれる。小生が純粋に安心していることに、改めて俊の存在の重みを再認識する。

「さて、下駄箱に行くぞ~」

「うぃ~っすう!」

そんなたわいもない会話をしながら、小生たちはそれぞれの下駄箱に向かい、靴を脱ぐ。そして、昇降口から廊下に出て、左に曲がって少し進んで、左に見えてくる階段の踊り場に出る。校舎はといえば、外観はそれほど汚いようには見受けられないが、内装は経年劣化している。ところどころペンキの塗装がはげ、廊下のコンクリートがむき出しになっている。

階段を一歩二歩と上ってゆく。階が上がれば上がるほど、窓から見える景色も高くなる。周りは小生と俊よりもハイテンポで駆け上がっていく同じ入学生の姿も見える。

「おお、コバ!いい景色だぞ!」

俊が一足さきに四階に着いたようだ。

さすが、中学時代に野球部だった俊は身体がしっかりとしている。小生よりも速いペースですすっと階段を駆け上がってゆく。遅れて小生が着くと、田んぼがあたり一面に広がっているのが小生の目にも映った。そして、俊が言う。

「あ、ラッキー!俺の教室、階段に一番近いじゃん!」

「そうなると、俺はその隣ってことか!じゃあな、俊。またあとで」

「おう!またあとでな~」

「あ、俊、生徒会の呼び出しの件。忘れんなよ?」

「わかってるって!お前一人で行かせることはねえよ~」

俊と分かれた小生は、一人、隣の教室のスライドドアを引く。

前の黒板には、座席の表が名簿順に書かれ、ざっと十人くらいの生徒がすでに着席していて、ほか十人くらいはそれぞれ一人の机に円を作って会話を弾ませている。

「お、ここか。」

全部で六列あるうちの窓側から二列目の、黒板を前にして前から四番目。

小生は、リュックを机の横のフックに掛けて、一息つく。

ここからこの教室がいわば、戦場の本陣になるんだろう。

そんなことを小生はふと思った。


隣の席を確認しよう。

どきどきしながら、隣を見る。

そこには、先ほど小生たちの前を歩いていた、艶やかな髪をなびかせていた少女が、食い入るように読書に没頭していた。

え、めっちゃ上品そうなあの子じゃないか!と心躍る小生がここにいる。

小生は、読書に集中する彼女に声をかけようとするのをこらえる。

そして、反対側、机一個半分の通路をはさんで隣を見る。

「へぇ~!数学が得意なんだ!」

「うん」

「私は数学はからっきしだよ~!」

うれしいことにこちらも、先ほど小生の後ろを歩いていた、女の子だ。良い声をしていることで、小生は彼女たちを勝手ながら評価していたが、相変わらず良い声だ。こんな声を隣で聴き続けることができるなんて、小生は感極まってしまいそうだ。


少し冷静になろう。うん。そう自分に言い聞かせる。

どうやら、小生は両隣が女子というラッキーなくじを引いたようだ。

こんにちは。こんばんは。梅木仁です。

最後までお読み下さりありがとうございました。

てなわけで、今話は女の子と生徒会の人が出てきました。いや~女の子を書くのって難しい!

とても考えまくって書いてみましたが、いかがだったでしょうか。

こんな感じで迷ったり、悩んだりしながら、徐々に書いて参ります。

次話ですが、少し別用が入っておりまして、遅れるかもしれません。

ご理解くださると幸いです。今後ともよろしくお願いします。

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