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愛がなくてもハーレムですか  作者: あらぶるオタチ
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第1話 

「これにて三天堂とjoy社の業務提携記者会見を終了いたします」

司会の女性の声がマイクを通して会場に響き渡る。三天堂の吉田社長と俺、白石たくまが握手をした瞬間、一斉に眩しいほどのフラッシュがたかれ、俺は吉田社長の手を力強く握り、向こうも熱が伝わるほど握り返してくる。よくここまで来た。何者でもなかった冴えない大学生が、スマホ専門のゲーム会社joyを立ち上げ、初めは企画、プログラム等等すべて一人でこなした。スマホの普及とともに会社の業績も右肩上がりに成長させ、ついに家庭用ゲーム機界の老舗、三天堂から業務提携の話が舞い込んできたのだ。順風満帆、成功者、カリスマ、人は俺を尊敬の対象とし崇め奉ることだろう。しかし世間の印象とは簡単にひっくり返る。尊敬どころかむしろその逆だ。あの忌まわしきスクープによって。


 ー新進気鋭のIT社長、豪邸に3人の美女とハーレム状態のパラダイス生活!

1ヶ月前、ある出来事を週刊誌によってすっぱ抜かれ、俺の好感度は地へと落ちた。内容はまあ・・・ご覧の通りだ。ここに書いていることはまぎれもない事実。どうもこの国の住人はどれだけ仕事で成果を上げても、女性関係が奇特だと褒められるどころか、むしろ怒られてしまうらしい。もうちょっと褒めてよ。ゲームを作り続けたことはまぎれもない事実なんだから。みんな面白いゲームを作ったとすらなかったとこにして、ハーレム築いた人になってない?逆だよ逆!ゲームありきだから!・・・と、まあそんな心の声も虚しく、世間の考えは今も昔も変わらない。

 本当に大変だった。炎上という名の見えない炎の消火活動が。あれマジで辛いから君らも一度体験してみるといい。俺じゃなかったら死んでるって割と本気で。だってすごかったもん、会社のBBSも俺のSNSも批判、批判の嵐。特に多かったのが「これまでファンでしたが、もうやめます」という類のもの。おいおい、もしも俺が世界でただ一人、ティッシュのシェアを独占してる会社を経営していたらどうしてたんだい?花粉症にならないことを祈ってるよ♪・・・なんて返信もできるはずなく、ただひたすら双方に頭を下げた。ちなみに2番目に多かったのは「この一件から、あなたのゲームがつまらなく感じるようになった」おいおい、クリエーターと作品をごっちゃにして、じゃあ君は、不倫してたミュージシャンのラブソングに・・・・・あっこれはわかる気がする。やっぱり君たちが正しいや。ごめんよ。

 

回想終わり。話を現代に戻そう。記者会見が終わり、控え室でひと息つく三天堂の吉田社長に俺は頭を下げた。「この度は、いろいろとご迷惑をおかけして、すみませんでした」

「いいよ、いいよ 済んでしまったことはしょうがないし」

口ではこういうが、俺と手を組んだことは三天堂にとって痛手だろう。向こうは老舗であり、ファミリー向けの据え置き機を得意としている。業務提携発表よりも先に例の報道が出ていれば、関係を切られていたかもしれない。この会見でお世話になった人に頭を下げ、数人の同僚に別れを告げそそくさと会場を出る、どこかによってから帰ろうか、いやそんな気にもならない、だとすると残る選択肢はー

「・・・家、帰りたくねえな」

つい本音が漏れる。重い足取りで俺はタクシーに乗り「パラダイス」へ向かった

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