表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
61/68

アキレギア3

 取り敢えず、直近でやる事はすぐに定まった。

 何事も無かったかのように十歳のアキレギアを装って過ごす事と、そうしながら宮廷内部の情報収集をする事だ。

 アキレギアによると、ケールレウス帝国の宮廷内ではこの頃から勃発した帝位の継承争いで加速的に伏魔殿と化していったらしい。


「ケールレウスの帝位継承ってどうなってんの?私の国じゃずっと男系のみ継承で、数十年前の改正で男にしか継承出来ないようになったが」


 能面のような顔をした、やる気なさげな女性が持ってきた朝食にありつきながら、まずはアキレギアが持つ情報を共有する所から始める。

 朝食はちょっと固めのパンに、オレンジに似た果物、紅茶……?、それとナゾのスライス肉を焼いたものに、茹でたキャベツと人参のような野菜のサラダだ。


 このイルシオンという世界には呪文を唱えればポンと火の出るようなゲームナイズされた便利な魔法は無いらしい。

 悪魔の実在は周知されているものではないから一先ず置いておくとして、地球と殆ど同じような物理法則が存在している。朝食に出された食事が殆ど元の世界と変わらないのも、生物が似たような環境下で似たような進化を遂げてきたためなのかもしれない。


 人間の歴史や発展も似たようなもので、今のケールレウスの文明レベルは大体ヨーロッパの近世中期といったところだ。即ち、宗教権力よりも各国家の権力の方が強くなった絶対王政・主権国家体制に移行しつつも、市民革命・産業革命の起こっていない時代という事である。

 ケールレウス帝国は、帝国主義というよりは中央集権へと移行した流れで覇権主義となった国だ。武力による急速な拡大の結果、特権を持つ貴族階級以外にも身分制度が敷かれ、職業の他に国籍や市民権の有無にも身分が関わるようになっているらしい。


 という事は権利の概念は確立されているようだな、と、最初の質問は自分達に最も関わりの深い権力図から把握を試みる。


(我が国の帝位継承は少々複雑ですわね。帝国として、皇帝や皇族は属国の王族を娶るようになっておりますから……まず、皇帝の配偶者には後宮で与えられる室に即した地位が与えられます。……貴女の記憶では、基本的に二人目以降の妻や夫は有り得ないようでしたけれど)

「うん、まあ現代ではね。でも百年前くらいまで似たような制度はあったから、後宮の制度に関しては分からんこともない」


 後宮というややアジアの王政的な制度があるのがこの西洋っぽい雰囲気の城では奇妙に感じられるが、まあ異世界だし、そんなもんか。


(では些事は省きますと……母后父君の出自、つまり生まれた出た室の格の高さ、男性、長子、という順に優先されるようになっておりますわ)

「なるほど、分かりやすい。血統、男性、長子だね」

(ええ。……最も、近年では外国の無礼者共が女帝は認めぬと煩く騒ぎ立てる例もあるようですが)

「なにそのシュレジェン割譲させられそうなイチャモン。サリカ法かな?」

(?)


 反射的に呟いてしまった事に、頭の中でアキレギアが首を傾げた気配がした。分からんようなネタ言っちゃってごめん。


(現在帝位継承権を持つ者は私を含めて六人居りますわ)

「六人か……結構多いね」

(はい。上から順に、今の時点では私、叔父上、私の弟、そして叔父上の子の三人ですわね)


 未来で殺されてしまった弟くんの母親は貴族ですらない平民の娼婦だった筈だが、皇帝の弟の息子達より継承権が高いのは皇帝の直系だからだろうか。

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ