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人魔の国開拓記 〜召喚された勇者は、戦いたくないから平和な国をつくる事にした〜

 ▼ 豊藤(ほうどう)生和(せいな)は勇者として異世界に召喚されました。



 会社からのいつもの帰り道。

 その筈だったが、俺は酔ってもいないのに、おかしなところへ迷い込んだ。


「勇者殿、お願い致す。どうか、魔王を倒して下され!」


 何がなんだかさっぱりよく分からないのだが、気付くと俺は西洋風のお城で、座ってた椅子とか服装からして一番偉そうなおっさんにそう頼まれていた。


 これ、小説とかゲームとかでよくあるやつ?

 俺は異世界に来てしまったのか。

 でもあれって、もっと「おお、勇者よ!魔王を倒すために旅立つのだな!」みたいな感じじゃなかっただろうか。


「突然そんな事を言われても……えっと……勇者とか、魔王って……?」


 困惑しつつも状況を把握しようとそう尋ねると、傍らに立っていた立派なカイゼル髭のおっさんがおっほんと咳払いをして喋り始める。


「魔王は魔物の支配者の事でございます、勇者様。この世界全てを手中に収めるという、恐ろしい目的のために動いている邪悪な存在です。我々人間はその支配を逃れるため、三百年余りを魔物と戦い続けております」


 三百年……気の遠くなりそうな年月だ。俺に当てはめて考えるとすれば、江戸時代からどこかと戦争がずっと続いているような感じだろうか?


「しかし、魔物の力は甚大でして……人間は追い詰められているのです。今や他国は全て攻め滅ぼされ、残っているのは魔王が侵攻を始めた当初に幾つかの国がまとまってできたこの王国のみとなってしまいました」

「つまり人間側はもう魔物を抑えるだけでも精一杯という事ですか」


 その通りです、とおっさん二人は沈痛な面持ちで頷く。


「で、人間がそのまま滅ぶ前に、勇者……俺?に魔王を倒して欲しいと」


 おっさん達はもう一度頷いた。

 なるほど。そりゃ、そんな風に追い詰められてたら、もう外部に頼るしかないだろうな。

 しかし、頼るにしたってな。正直俺が選ばれたのってどう考えても間違いな気がするんだが。


「事情は分かりました。でも俺、戦ったりなんてできないんですが」

「なんですって?」

「俺の国ってけっこう平和で豊かな方なんです。身体を鍛えたり、武器の扱い方を学ぶ必要は無くて。特に俺は運動神経悪くて運動も筋トレもしてこなかったんで、非力だと思いますよ」


 本当に自慢にもならないが、俺は力んでもまともな力こぶさえ出来ないくらいのぺらっぺら体系だ。

 身長も低めだし、顔も母親似の丸顔なので、社会人だってのに未だに高校生くらいに間違われたりもする。


「で、では、城の兵士に訓練をさせましょうか?」


 うーん、訓練ねえ。俺が今から訓練して戦い方を学んだところで、人間がギリギリで凌いでるような魔物相手にまともに渡り合えるようになるまで一体何年かかるだろう。

 それに俺は運動も筋トレも嫌いだからこれまで避けてきたのだ。絶対に兵士の訓練なんてしたくない。


「いや、伝承によれば勇者殿は光属性の魔法が使える。それさえあれば、剣や槍など無くとも魔物相手に渡り合えるのではないか?」

「光魔法ですか」


 そりゃまたなんとも……。この世界の勇者は魔法タイプ寄りの存在なのだろうか。

 何となく、勇者と言えば魔法も使えるけど剣がメインだと思ってた。最近のゲームだと勇者の戦闘スタイルは自由に選べたりするし、そんなものなのかもしれない。


「さよう。魔王の操る強大な破壊の力である闇魔法、その力の弱点をつく唯一の力、それが光魔法。勇者のみが手にする事の出来るものである」

「おお!なるほど王の申されるとおり、その力さえあれば魔物は敵ではありませんな。何しろ魔物共は魔王の闇魔法によって強化されていますので、光魔法には滅法弱いことでしょう!これで勇者様も安泰ですな!」

「え、あの、えっ?」


 弱い事でしょう、って、確証は無いのかよ!?それに、魔法があるから身一つで魔王を倒しに行けと!?

 いやいやいやいやそれは無い。何かあるだろ!!路銀……はこの国から出たら使えないからいいとしても、装備とか、仲間とか。


「では勇者様には早速魔王討伐の旅に──」

「えっと!その、何か支援を受けたりする事は出来ないのでしょうか?」


 このままにしておくと着の身着のままで城から追い出されそうな気がして、俺は早口にそう言って髭のおっさんの言葉を遮る。

 っていうか、俺まだ魔王討伐引き受けるとか言ってないぞ!そっちの事情に理解を示しただけ!


「それが……余が動かせる者はもう全てこの国の防衛の為に動かしておるのだ。それに、勇者殿への装備も一応用意はさせてあったのだが……」


 ちら、と王と呼ばれたおっさんが傍らのフルプレートアーマーと剣や弓装備の一式に視線を流す。

 あっ、はい。俺がクソ貧相なせいでせっかく用意しておいた装備が無駄になったってわけだな。

 っていうかその装備、誰かに手伝ってもらわないと着脱が難しそうなんだけど。今カイゼル髭のおっさん、魔王討伐の『旅』って言ったよな?どういうこっちゃ。


「……い、今、城の者にもっと軽装のものを用意させますので」


 流石に俺の落胆っぷりに同情したのか、カイゼル髭のおっさんがそうフォローを入れてくれる。


「よろしくお願いします。」

導入が本題に入るまでがなげ〜んだよぉ〜!!というわけでボツになった建国モノ。プロット練り直そう。

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