地球産6
更に三十分ほどしてやっとナインは部屋から出て来た。
扉の前で待っていた莉芳とルツを見て、驚いた表情を一瞬浮かべ、苦笑する。
「何してるんだ、二人ともこんな所で」
「師匠……」
「ほら、もう昼食の時間だろう。用意してくれる使用人がお前たちの分を下げられずに困ってるんじゃないのか?」
何事も無かったかのようにナインはリオとルツを食堂へと促す。
リオが起こした騒ぎのせいで朝食を満足に食べておらず、お腹が空いているルツはちらりとリオを気遣わしげに見た。
しかしナインが来たのであればむしろ自分は邪魔だろうと考え、食堂へと素直に降りて行った。
「リオは行かないのか。ちゃんと食べないと、背が伸びなくなるぞ」
その場に残ったまま、途方に暮れたような表情で立つ莉芳に、ナインは再び穏やかに声を掛ける。
莉芳は何も言えなかった。
ナインはあくまでリオの星読みの師であり、莉芳の師ではない。
昨日会ったばかりの、殆ど何も知らない仲である相手に、何年も面倒を見て貰ってきた弟子として何かを言う事など出来ない。
けれどナインは莉芳が起こした失敗のせいで領主に呼び出されたのだ。
「あの、迷惑を掛けてすみませんでした。……師匠こそ、昼食は」
結局、そんな言葉しか出て来なかった。
だがナインはほっとしたように目元を緩める。
「別に叱責されたりはしていない、気にするな。食事なら、私は領主様と既にとった。私を待っててくれたなら、待たせて悪かったな」
「いえ……師匠は中庭の件で呼ばれたんでしょう? それなのに、師匠を放って食事なんて無理ですよ」
「話は殆ど星の動きとか世間話だったぞ。そんなに気を揉まなくてもよかったんだ。それじゃ、私は部屋に戻る。お前も早く食堂に降りろ。これ以上ルツを待たせたら可哀相だ」
なんかダラダラした話になりそうな予感がして止まってしまったもの。いつかもうちょっとプロット練り直して書き直したい設定ではある。




