血薔薇2
ヴィクトワールはまず、領地の政治を取り仕切っている家令に会いに行くことにした。
彼女の考えた生存戦略は、前提として彼女が領地の実権をもつ必要がある。
そもそも、今回の反乱で、領地の経営に携わってないにも関わらず、市民はその責任がヴィクトワールにもあると考えているという事を彼女は知った。
であるならば、実際に関わっていた方がいくらかマシだと思えたというのもある。
早い話が、実権を奪おうという考えだ。
「お嬢様、本当にこのドレスを着るんですか?」
「ええそうよ、コレット。似合わないかしら?」
「いいえ、とてもよくお似合いではありますが……」
ヴィクトワールが選んだ赤字に黒いレースのドレスに、コレットは難色を示す。
作り物めいた美貌のヴィクトワールに、確かによく似合ってはいるが、色合いが毒々しすぎるのだ。
まるで流れ出た鮮血のような色合いの赤いドレス。
反乱が起きた日に頭から血を浴びたヴィクトワールの姿を思い出し、コレットは腥い想像に吐き気をもよおしそうになる。
「コレット、早くして。遅くなって家令の仕事の時間まで邪魔をしたくはないわ」
ヴィクトワールは、顔色の悪いコレットに構うことなく、冷たい声でそう促した。
悪と矜持と烙印とを練り直そうとして、悪役転生の二番煎じになりそうだと思って結局やめた。




