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ノラ吉

ノラ吉


アルバイト先で嫌な事が重なり、それが切欠となって学校や家での人間関係が悪くなっていってしまっている女の子があるアルバイト帰りの夜道で仲の良い野良猫・ノラ吉に誘われ、猫の集会に出席する。

その日からたびたび集会に猫と共にコンクリートに横になるなど猫化する女の子は、ある日猫の言葉がわかるようになる。

猫の言っている事がわかるようになった女の子は猫を相手に生活の愚痴をいうようになるが、猫に女の子の言葉は通じない。しかし、ただ一匹、ノラ吉だけは女の子の言葉を理解できた。ノラ吉が自分を飼い猫にしてくれと頼み込んできて、女の子がとりあえずノラ吉を連れて帰ると、ノラ吉のおかげでぎこちなかった家族との関係が改善する。学校でも新しく猫友達が出来る。ノラ吉との生活が楽しくなり、女の子はノラ吉に手紙のやりとりなどいろいろな事を教える。

しかし久しぶりのアルバイトに行った女の子は、その日も嫌な事があり、せっかく上手くいっていた人間関係に再び亀裂が入ってしまう。ノラ吉にその話をすると、ノラ吉はアルバイト先の南方さんという人と話をしてみろとだけ言う。

戸惑いつつもノラ吉のいうとおりに南方さんと話をすると、彼女もまた猫の集会に通っていた人だということがわかり、アルバイト先の雰囲気を変えてくれる。

それが切欠となって全てがいい方に流れ始めるが、女の子はノラ吉と話が出来なくなってしまう。

ノラ吉はにゃあとしか答えないが、女の子がノラ吉にお礼をいうと、ノラ吉から猫語のお手紙を貰う。



猪狩美香子はとぼとぼと自分のつま先を見ながら歩いていた。

アルバイト終わりでくたびれた体を引き摺るようにして、アスファルトの上をナメクジのようにのろのろと進む。

そうして、五歩程歩くごとに、ふうと溜息を吐いた。


最近の美香子はどうにも暗い気持ちが続いていた。春休みのうちに始めたバイト先の飲食店で、学校の新学期が始まると同時に少しずつ嫌な事が重なるようになったのだ。それは例えば、酔ったお客さんの対応中にお客さんが店内の備品を壊してしまって美香子が怒られたりだとか、同じくらいにバイトを始めた仲の良い子が店長と揉めた上でバイトを辞めていったりだとか、そのせいで美香子のシフトが急に増えて、学校帰りにどこにも行く時間がなくなったりだとか、そのくらいの事だ。

だが美香子のずるずると続く嫌な気持ちに引き摺られたように、美香子の周囲が居心地悪く感じられるようになったのも事実だ。


アルバイトのシフトが増えたために、学校帰りに友達と帰る時間が極端に減った。そのため彼女達の話についていけなくなり、少しずつ疎遠になってしまっている。一昨日の昼休みなど美香子はどうにも気まずくなってしまい、とうとう友達から抜けて一人で昼食を取った。

学校だけでなく、家でもそんな感じになった。美香子の家では全員が集まって夕食を取る習慣があるが、これにも美香子はバイトがあるので一人だけ帰宅後にご飯を食べている。そのため、最近家族と碌に話をした覚えが無い。母や弟は美香子が家族を避けていると思い違いをしているのか、僅かな会話中に腫れ物を扱うような接し方をするようになった。


そんな事が続いて、とうとう今日、美香子はバイト先から半月のシフトオフを言い渡されてしまった。辛気臭く疲れた様子を隠せもしない美香子には、接客を任せる事は出来ないのだというのが店長の言葉だ。きっと半月後にまた出勤したとき、美香子の様子が変わらないのであれば、美香子はクビになるのだろう。それが簡単に想像できて、また美香子は溜息を吐いた。


短編小説を書こうと思って文章に起こしたが、別のネタに気を取られて飽きてしまってお蔵入り。こういう日常のちょっとした不思議みたいな話も好きです。

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