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あやかし商店街(二) 七~終~

真司は何が何だかわからず首を傾げたのだった。

「色んなものを知った私は、少し・・・寂しい気持ちになっていたんです。」

白雪は昔の事を思い出すように、宙を見て語り出した。

「でも、故郷を出た私は・・・もう、戻る資格はありません。元々、私は変わり者で一人だったので、帰っても同じなんですけど」

と、自傷気味に笑った。

「そんな時、菖蒲様が雪芽の本体を私に下さったんです。そして、私にこう言ったんです。『これを大事にし、大切にし、見つめなさい』と・・・。私は、何が何だかわかなかったんですが、菖蒲様の言う通りにしました。何年も何年も・・・。すると、ある冬の晩に本体がうっすらと光り始めたんです。まるで…雪女が誕生した時みたいに、人の形をしたものが現れたんです。正確には"生まれた"なんですけどね、ふふ」

「それが・・・お雪ちゃんなんですか?」

白雪はコクリと頷いた。

「妖に何年もの間大切にされた物は、そこそこ力のある妖に生まれる。まぁ、それ以前に、お雪は強い想いから作られているから、いつかは付喪神以上の力を持って生まれると思っていたがな。」

「へぇ。なんだか、深い話しですね」

「まぁ、人間にしたらそうかもしれぬが、私らにとっちゃ、一年も二年も最近の事のように思えるから、深い話かはようわからんがの」

と菖蒲は苦笑した。

「白雪さんが名付け親だっていうのも納得しました」

「ふふ、恥ずかしいわ」

「あれ?でも、雪女ってどうやって生まれるんですか?」

「雪女は雪の妖だが、雪の精霊でもある。雪の国に咲く雪華(せつか)という花から生まれるのだ。」

雪華(せつか)は冬将軍の華なのよ。だから、私達は冬将軍の娘でもあるの」

「ふ、冬将軍ですか?!」


(本当にいたんだ・・・)


「ふふふ、驚いているのぉ」

と、菖蒲がクスクスと笑った。

「そりゃぁ、驚きますよ。だって冬将軍って、厳しい冬の様子を擬人化させたものですよ?」

「これもまた、人の手で生まれたということだ。」

「なんか・・・不思議ですね」

「なにが??」

白雪の隣でひたすら食べていたお雪は、もうお腹いっぱいなのか、白雪に甘えながら真司に聞いた。

「だって、それじゃぁ、大抵の妖は人の手で生まれたって事じゃ・・・」

「うむ。そうだぞ」

「え?」

「神も、妖も・・・大抵は人の手と想いで生まれている。そして、形となった妖は、そこから新しい者を生み出す。雪女みたいな妖をな…。」

「妖の世界って、奥が深いんですね」

「そうね。人間にはそう思うかもしれないわね」

と、白雪が優しく微笑んだ。

「それが、我らの(ことわり)ということじゃよ」

「・・・・」

真司は、すっかり暗くなった空を炬燵越しから見上げた。

外は風が吹いていて、扉がカタカタと微かに鳴っていた。


(妖にも色々あるだなぁ・・・)


真司は今まで関わろうとしなかった妖という存在を、ここに来て、妖の生まれを聞いて・・・ほんの少しだけ、興味が出てきたのだった。


―そして、冬の訪れと共に真司の心もまた変化し始めていた。


(終)


next story→二の伍~その後~

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